蜜柑 之 森  君の燃える黒い目が


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トスカのキス


『トスカ』出演のために帰国したオペラ歌手、草凪環が手に取った週刊誌には、友人の作曲家、鍋島倫子の死が報じられていた。死因は「餓死」という名の自殺―。この出来事はマスメディアでもセンセーショナルに取り上げられ、やがて演出家である神尾新市との軋轢が露呈する。神尾は倫子の窮状を訴えるメールを黙殺していたのだ。
そんな彼と仕事を組まなければならない環は、怒りと憎しみを増幅させつつも、倫子の当て擦りのような死に様に疑問を持たずにはいられなかった。

迎えた公演初日には、事件の話題性も相成って多くの報道陣が詰め掛けていた。公演を中継するCS局のカメラも、開演前の張り詰めた様子を映し出す予定だった。
しかしカメラがお茶の間に送り出したのは、銃を手にした男達と、真新しい客席を染める血飛沫だった。

「演出家をやっている神尾新市という者だ。―オペラタワーは占拠させてもらった。先刻、視聴者にお届けした映像は作りものではなく、現実だ。」

神尾は『トスカ』で繰り広げられるの悲劇を、出演者達に実演するよう命じた。登場人物達の感情や勘違いが交錯し、血が流れ続ける『トスカ』―。



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