神楽坂倶楽部 2008.12.27

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2008年12月27日(土)


 いよいよ押し詰まって参りました。もうあと5日で2009年になってしまうんです
ねえ。そう思うとちょっとびっくり。


 なんとかきょうまで生きてこられましたが、1年前の今日は集中治療室からも出、いよいよ長い回復への道を踏み出した2日目だったのだ、と思い出すと不思議な感じがします。この1年をふりかえると、なんだかあっという間でしたし、当人はもうひたすらその場その場の状況に夢中で適応しようとしていただけでしたけれど、そのあいだに、ずいぶんいろいろなことがあったんですねえ。強引にライブはじめてしまったり、4月に「バッドニュースです」って肝臓への転移を告げられたり。「頑張るっきゃないんだから頑張らなきゃしかたがない」ってお医者さんが云っていたなあ、っていまさらのように思い出します。そうして抗ガン剤攻勢のはじまり。抗ガン剤への適応のために、さらに2回、3週間づつの入院が無造作につぎたされてがっくりしたこと。それはある意味では、管と袋をぶらさげて退院した1月後半よりも、ずっと辛い時期だったかもしれません。あのときには築地から自宅に戻るのに、車がほんのちょっと揺れても「痛い痛い」って呻いているような状態でしたが、「このあとは治ってゆくだけだ」という期待がありましたものね。でも「転移した」「抗ガン剤療法に入る」と告げられてからは、おわらぶならぬ「終わりのない抗ガン剤治療」に入ってしまって、結局それでなんとか1年からだはもちましたけど、そのかわり、どんどん抗ガン剤の毒性がたまってきたんでしょうね。1クールごとに治療がしんどくなり、今回の6クールめなどは後半ほとんどひどいゲリだったし。


 やっぱりこの下痢は抗ガン剤の副作用としか考えようもなく、25日の夜から休薬期間に入ったのですが、それでまあ2回だけゲリドメを飲んだんですが、けさから、どんどんよくなり、きのうの夜はもう普通の御飯が食べられ、きょうの昼はラーメンが食べられ、というあんばいで、下痢もとまっていますし、きのうの夜はとうとう入眠剤は誘惑にまけて飲んでしまったけど、よく寝ました。さっきもお昼御飯で疲れたらしく、そのあと1時間半くらいよく寝てしまいました。その寝方もなんとなく違ってきた気がします。


 このままじわりと回復に向かってくれればいいのですけれどもね。癌の辛いところは結局、これで抗ガン剤やめてしまうわけにはゆかない、っていうところなんでしょう。やめてしまえば癌がはびこってしまうかもしれない。抗ガン剤を続けていれば、癌より先に抗ガン剤でからだが参ってしまうかもしれない。そのはざまにあって、気力を保っている、というのはなかなか難しい話です。


 でもいまの私はずいぶん癌患者としては恵まれているんだろうと――きのうまでは、ずっとひどい痛みが続いていて夜も寝られなかったわけですから、とうていそうは思えなかったのですが、今日はそう思えるようにまたなってきました。副作用が吐き気でなく、下痢にきたというのは、たぶん私にとってはずいぶんラクなことだったでしょう、私は吐き気と嘔吐というのが、ものすごく苦手だし、そちらだったら、下痢よりさらに栄養とれないでしょうし。なんとか、間に合って、生きるほうの路線に飛び乗れたのかなあ、というような気が妙にしている今日です。もちろん、これから先のことはわかりませんけれども。


 きょうは軽いお散歩も出来たし――そういうことが出来るというだけのことが、こんなに嬉しいものだったのか、というのは、やっぱりほんとになってみないとわからないと思います。普通の人には当り前なことが、出来てこれほど嬉しいというのは、やはり、幸せなことかもしれない。息子にずっとお預けだった大好物の生クリームのスパゲティを作ってやれたり、近所の喫茶店で旦那とお茶が飲めたり。


 寒い日が続いていますが、あたたかくなるころにはもうちょっとリカヴァー出来ているでしょうか。焦らずに気を長くもって、少しづつ生きるために回復してゆけたらと思っています。占い師をやっている霊感のあるという親戚が、またしても(しょっちゅうそういうことをいわれてげんなりしている)「来年は年回りが悪い」と言い出して、それをまた、うちの母親が私にそういって、私をむっとさせたりしましたが、「いい年になるか、悪い年になるかは、私自身が決めることだ」と思います。気学や占いが何を云おうと、所詮生きてゆく当人にしか、本当の「よい年悪い年」はわからない、たとえ悪いことが山のようにふりかかってきていても、当人にとっては素晴しい1年であったりすることもあるかもしれないんですから――健康で金ももうかってウハウハで楽しいことばかりで、それでもってひととも適当に楽しくやれていやー競馬もあてたしイイ年じゃないか、などというのだけが「いい年回り」なわけじゃないと思う。どんどん不況にむかってゆく、酷い世の中になってゆきそうですから、そのなかで「何が本当に自分にとっていいことなのか」を見失ったら大変だと思います。とにかく私にとっては「グインを書くこと」、そして「俊ちゃんサーガを書くこと」。ライブをやること――ピアノを弾けること。それが出来なければ、どれほど素晴しいことが続いてもきっと私は「いい年まわり」だとは思えないに違いない。おいしいものを食べるのも旅行するのもお金をもうけるのも、どんどん興味がなくなってきてしまった、というよりも閉ざされてしまったきょうこのごろ、それはもしかして神様が私からほかのものをすべて取り上げて「お前はここにいればいいのだ」といっているのだろうか、という気もするようになってきました。来年も、生ある限りグインを書いてゆこうと思います。


 とりあえず年内はこれで最後の更新になるかもしれません。元気があったら、31日にでもまた更新出来るかもしれませんが――このあとは冬コミ、そして新年ですね。私はやっぱりクリスマスより、新年のほうがイベントとしては好きなのかもしれないなあ。クリスマスを抜けてから「何かを抜けた」気がしています。皆様もよいお年をお迎え下さいね。



2008年12月27日(土)



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