夏 2016

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単なるゴジラを○○に見立てたパロディ? …… 、
究極の自己模倣!


単体の作品として評価した場合、評価に値せず。


もっとも、この監督にそんなことを望むこと自体がNGで、

screenshot   .


※ シン・ゴジラ



 若干のネタばれを含むので、行を空けます。読みたくない人は、ここから下はスルーして下さい。





・冒頭、導入部で驚かされるのは、脚本の運びが速い。場面展開が速い! そのスピードに観客はあっという間に引き込まれる。と同時に、解説のない官僚用語に観客は振り回され、呆気にとられることになる。ここはエヴァの手法ですね。いつも説明過剰な日本映画にあって、周囲から(ちゃんと説明しろ!)とやいのやいの言われただろう監督の苦労が忍ばれる。


・ケチを付けると、会議が若干不自然。いくら政府要人が静かな環境下で会議すると言っても、あの緊急状況だから、ひっきりなしにメモは差し出されるし、人の出入りもあれば、携帯だってじゃんじゃん鳴っている。その喧噪の状況は、もう少しリアルに描いて欲しかった。あれだけの人間を出演させるのであれば、その辺りのディテールを描くのは決して不可能では無かったはず。


 それに、会議室がどれも使い回し。どの会議室もルクスは同じだし。ここはもっと窮屈にして、中央指揮所はもう少し暗くして……、なメリハリは付けられなかったものか。


・あと、みんな髭を綺麗に剃りすぎw。場面を前後して撮影することになるから、その辺りに整合性を付けて髭が伸びる状態での撮影って凄くハードルが高いんだろうけれど、にしても、あの緊急時で、みんな寝てないというのに、髭だけは異様に綺麗に剃っている。最後まで違和感が拭えなかった。
・れいの紙、あれはジョディ・フォスターの「コンタクト」に出て来る、アレのパクリとは言わないまでもインスパイアです罠。
・根拠法は害獣駆除で十分。神奈川県知事の要請でok。


石原さとみのキャラは、全く容認できない! あのキャラが出て来た瞬間、どっちらけ。席を立ちたくなった。論外、ナンセンス。あのキャラの何処に合理性があるのか全く理解出来ない。ただひたすら不愉快で陳腐なだけ。あのキャラの存在が、この映画の価値、完成度を一人でぶち壊している。庵野がなんであんなキャラをokしたのか理解に苦しむ。押井作品には、あんなキャラは絶対に出ないぞ! エヴァにも似たようなキャラは出て来るけれど、あれはアニメだから違和感がないんだよね。アニメと実写では、許される虚構の深さが違う。実写では、あの虚構はナンセンス。


・最初の攻撃シーン。武装ヘリによる機銃掃射はないと思うぞ。コラテラル・ダメージが甚大過ぎるでしょう。最初は、地上から50キャリバーでそっと太股辺りを狙うでしょう。それが駄目となったら、戦車で滑腔砲弾。つか個人的には、ぜひオーサンからA−10を呼んでアベンジャーを撃ちまくるシーンを見たかった!
 細かい所を言うと、あの武装ヘリの攻撃シーンは、撮影を含めて、編隊の組み方とか、もう少し演出できなかったかな、という不満は若干あります。
・いよいよ本格攻撃という段になって、F−2が空荷で離陸したり、コブラがTOWもハイドラも空荷で離陸したりと、あれはないでしょう! 青色のダミー弾で良いから、ちゃんと実弾を装備して発進するシーンを撮らなきゃ。なんであそこで妥協したのか理解できない。ハリウッド映画ではあり得ない。てか押井さんなら絶対、あそこで妥協しない!


・後半、脚本が崩れる。明らかに、前半で体力を使い果たした感じが出ていた。まず核の使用を巡って、いくら広島長崎&3.11を経験した日本だからって、あんな情緒的な議論はしないでしょう。あの辺りで私はちょっとイライラし始めました。物書きとして考えると、私なら、あのやりとりの中に一人、「この非常時に、なに甘ちゃんなことを言ってんだよ、バカ共が!」というキャラを一人出します。あれじゃ、日本人ってみんな決断能力が無いアホ集団に見える。だいたい核つったって、最初はミニ・ニュークスから使ってメガトン・クラスまで行くわけでしょう。その辺りの話が無いのも不自然。


・最後はやっばり人力で爆弾を運んで欲しかったよね。即応集団から志願者を募って、バックパックに薬を積めて特攻。これ、怪獣映画に不可欠な美学w。
・笑いが無い。劇中何度も、これが市川崑作品なら、ここでささやかな笑いを取れるキャラやシーンがほんの一瞬差し込まれるのに……、と何度か思った。立ち位置的には、石原さとみがその役なんだろうけど。何しろ嘘っぽいから全く感情移入できない。
・CGの出来は良い。というより驚いた。予算もないのに、よくこのレベルのCGを作ったなと感心しました。ただ新幹線や電車のあのシーンは、ちとミニチュアっぽかったよねw。
エヴァの音楽は感心しない。
・途中は日本沈没、最後は、巨大土建ドラマw。


 終わって見れば、実写版エヴァですよ。何処から観てもあれはゴジラの格好をしたエヴァ使徒で、ヤシマ作戦をやっている。
 絶賛する気は無いけれど、この夏、観て損はない映画です。ID4「中国のケツを舐めました」よりは遥かに面白い。いろいろノイズはあっただろうに、会議室ドラマとして筋を通し、かと言って、怪獣による破壊シーンに手を抜いているわけでもない。しっかりそのパートも撮られている。何より、余計なお涙頂戴や、学芸会女優の恋愛話とか差し込まれずに済んだことは讃えたい。普段、くだらん絶叫特撮映画を撮っている人は黒子に徹したみたいだし(正直、日本の特撮映画を一人で駄目にして来た彼がそれなりに仕事していて、よくこんなものが出来たなと感心している)。


 もし、自分が監督だったら、二つのことをやります。


1.しきりに頭部を狙っていたけれど、見せ場としてはあれで良いんだろうけれど、最初は行動力を奪う目的で、片舷への魚雷集中攻撃をやります。つまり、片足のみに滑腔砲弾をひたすら叩き込む(つまり武蔵小杉を舞台に、10式がビルの谷間を走り回り、ビルを盾にしてひたすら主砲攻撃を繰り広げる)。


2.もう30分、尺を貰って、振り回される陸自の一個小隊の日常を追いかける。それは施設部隊でも良いし、戦車小隊でも良いけれど、隊員の日常が破壊され、出動命令を受け、ひたすら待機し、突然頭上から橋が降って来て(なぜタワマンを破壊しない!)犠牲者を出し、復讐に燃える小集団の姿を描く。