「 この件 で、『 許す 』 ということはない! 」

 
その勢いや、
 イゼルローン要塞を攻略した後の
  自由惑星同盟軍 の 侵攻作戦 も かくや。


……
  ……
  ……


…… そして、風向きが変わり、
 御自分たちに都合が悪い状況になったら ……


「 もう、許してくれませんか 」


  ……


 ですか?

同盟軍 の 帝国領侵攻


同盟軍 の 帝国領侵攻


宇宙暦 796年 / 帝国暦 487年 8月~。


アンドリュー・フォーク准将 の 案 が 採用されて実行された作戦。
ヤンの第13艦隊を含む 8個艦隊 が帝国領に侵攻した。


この作戦が実行に移された背景として、ヤン・ウェンリーによる第7次イゼルローン要塞攻略の成功がある。味方の血を一滴も流すことなく要塞奪取に成功したが故に、同盟市民の間にはさらなる戦果を求める声が高まった。


そこへ、ヤンを超える功績を打ち立てる機会を欲していたフォーク准将が、正規の手続きによらず個人的に、最高評議会議長ロイヤル・サンフォードに帝国領への侵攻作戦案を持ち込んだ。サンフォード議長とコーネリア・ウィンザー情報交通委員長ら多くの閣僚は、この作戦を以て帝国に勝利することで低下しつつあった政権の支持率を挽回できると目論んで充分な検討をせぬままに議決に踏み切り、最高評議会構成員11名のうちジョアン・レベロ 財政委員長 、ホワン・ルイ 人的資源委員長 、ヨブ・トリューニヒト 国防委員長 の3名が反対した他は 全員が賛成して ( 原作 では 棄権した 委員 が 2名 )、作戦実施 が 決議された。


しかしその作戦計画の実態は稚拙極まりないもので、立案者であるフォーク准将の説明に曰く 「 大軍 を もって 帝国本土 へ 侵攻する 」「 高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処する 」 といった抽象的かつ曖昧な語句に終始し、これをビュコックは 「 要するに行き当たりばったり 」 と酷評した。また、帝国軍の迎撃についても「容易に撃退できる」、帝国民衆の人心掌握についても「同盟軍が来れば進んで協力するに違いない」などの希望的観測に満ち溢れたものであった。


これに対して迎撃を一任されたラインハルトはオーベルシュタインが提案した焦土作戦を以て応じ、当初は帝国軍が領地から物資を引き上げつつ戦わずして引いたため、同盟軍は抵抗も無く進撃して、200の恒星系を占領し、そこで暮らす5000万の帝国国民を「解放」した。だが、まもなく同盟艦隊が補給線の限界点に達し、かつ「解放した市民」が欲する物資を提供するために同盟から大規模な補給部隊が送られたが、キルヒアイスの攻撃をうけて壊滅的打撃を受ける。補給を受けられなくなった同盟軍は現地において物資を徴発せざるを得ず「市民」の反感を買った。さらに各星域において、帝国軍が大規模な攻勢に転じたため、同盟各艦隊はことごとく惨敗。同盟軍はアムリッツァ星域付近に集結し再反撃を画策したが、ここでも帝国軍の猛攻に曝されて、さらに損害をだしてイゼルローンへ撤退を余儀なくされた。


この一連の作戦により喪失した将兵は動員した約3,000万人のうち、実に70%近くに相当する2,000万人に達した。これはアスターテ会戦の10倍の損害であり、当時の同盟軍全兵員の約4割をこの作戦により失ったことになる。この敗戦により同盟軍は慢性的な兵員不足に陥り、戦力が大幅に弱体化した。


さらに損耗した戦力を回復させるために人員を軍にまわした結果、社会のあらゆる面において人的資源が枯渇し、侵攻作戦以前から社会運営に支障をきたしていたものが、この敗戦の後は運用効率が大幅に悪化したため、各種の事故も多発するようになった(原作やコミックスでは、それら社会機構の弱体化により生じた事故について触れられている)。この作戦は同盟を決定的に弱体化させ、ひいては滅亡の一大要因となった。


この戦いによって同盟は参加した将兵3000万の内2000万を失うという歴史的大敗を喫し、全将兵の四割が戦死するという致命傷を負う。更に艦隊も第13艦隊を除いて全てが壊滅状態に陥ってしまい、後のクーデターで第11艦隊も失って実質的な艦隊戦力が首都直営の第1艦隊を除けば、ヤンの第13艦隊以外の全ての艦隊戦力を失ってしまう。加えて、軍備維持のために民間から更に人材を移動させた上にアスターテ会戦での遺族補償とイゼルローンの捕虜の食糧事情、更にこの戦闘での2000万人分の遺族補償までが嵩んでしまい、軍事、経済、社会の全てに於いて同盟に回復不可能の打撃を与えてしまう。この一連の事態は同盟内では「アムリッツァの愚行」と呼ばれ、同盟が滅亡する決定打の一つとなる。