「 あなた一つ間違いを犯してますよ。
あの時、私にはわかってました。
どっちが本物か。
知っててあえて本物で殴ったんです。
要は、何が大事で何が大事でないかということです。
なるほど、慶長の壷には確かに歴史があります。
しかし裏を返せば、ただの古い壷です。
それにひきかえて今一つは、現代最高の陶芸家が焼いた壷です。
それも私一人を陥れるために。
私一人のために、川北百漢はあの壷を焼いたんです。
それを考えれば、どちらを犠牲にするかは …… 。
ものの価値というのは、そういうもんなんですよ …… 。」