目指すべきは、高高度衛星軌道!




  あくまで、『 V - 2 』 …… というより、
  『 A4 』 のスペックですが …… 。



V2の射程距離は、約 1,000 kg の弾頭でおよそ 300 km 。

  • 構成:1段式液体ロケット
  • 全長:約 14 m
  • 直径:約 1.7 m
  • 離陸時質量:12,800 kg
  • 離陸時推力:27,000 kgf


推進剤は、アルコール(エタノール)と水の混合燃料、及び、液体酸素(酸化剤)である。混合燃料は重量軽減のためアルミニウムの燃料タンクに貯蔵されたが、アルミニウムは稀少かつ高価であったため、ドイツの戦時経済にとっては大きな負担となった。


推進剤は、過酸化水素によって駆動されるターボポンプによって主燃焼室に運ばれる。このときアルコールと液体酸素の混合比が常に適切になるようにいくつかのノズルを通る。また、燃料は主燃焼機の壁を通るようになっており、これは混合燃料を予熱すると同時に、再生冷却によって燃焼室を冷却して過熱による強度低下や溶融を防ぐ働きをしている。再生冷却だけでは冷却が不十分なので炎が燃焼室の壁面と接触しないようにフィルム冷却のために燃料のエチルアルコールを噴射した。


ロケットの進行方向を変えるための燃焼ガスの向きを制御する方式として、黒鉛製の推力偏向板(ジェットベーン、Jet vane)が使われた。これは、現在の大気圏外を飛行するロケットで主流の方式であるジンバル機構(ノズル全体の向きを変える方式)に比べると、燃焼ガスの運動量損失が大きいという欠点はあるが、機構がごく簡単なため、当時の工作技術の下では合理的な選択であった。推力偏向板は離陸後、低速時には安定翼の効果が不十分なので十分な速度に達するまで効果があった。大気圏外に到達する時にはエンジンは停止して慣性で放物線状に飛行した。


ロケットの軌道制御装置として真空管を用いた簡単なアナログコンピュータによる慣性誘導が用いられた。試験段階では、ロケットの激しい振動によって真空管のフィラメントが切れたため、制御不能となったロケットが試験場周辺に墜落するという事故が絶えなかったが、原因が分かって防振対策が施されてから安定飛行するようになった。飛行距離は燃料残量で計算され、燃焼が完了するとロケットは加速を停止し、程なく放物線飛行カーブの頂点(約80km)に達した。しかし、命中精度が低く、兵器としての価値はさほどのものではなかった。このことから、後期になると地上から送信する電波信号で目標への誘導する方式のものも作られた。