枯れた技術


決定版・ゲームの神様 横井軍平のことば (P-Vine Books)
【枯れる】
「涸れる」と同源
(1)草木が水分を失って、生気がなくなる。
(2)本来の勢いがなくなる。朽ちる。
(3)人柄や技芸が深みのある渋さをもつようになる。円熟する。
(4)人・虫・魚などが死んでひからびる。
(5)傷口がかわく。かせる。


【枯れた】


 枯れたハードウェア、枯れたソフトウェア、枯れた技術、なんて言い方をする。この場合の「枯れた」は、基本的には「古い」と同じ意味だと思っていい。

 しかし単に古いだけでなく「すでにトラブルが出尽くしていて、そのトラブルも解決され尽くしている」といった意味が強い。そして必ずしも悪い意味ではなく、むしろ良い意味で使われることが多い。

 パソコンをはじめとするコンピュータ、あるいはインターネットや LAN などのコンピュータ・ネットワークの世界は、ものすごい勢いで進化してきた。ところが、十分に検証されないまま実用化された技術が多いので、予期せぬトラブルが非常に多かった。

 そして、そうしたトラブルは「走りながら直していこう」というのが、この業界の流儀。つまり、とにかく使ってみて問題があったら使いながら修正していこうという考え方だ。

 しかし、どの世界でも、こうした考え方が通じるわけではない。たとえば、同じような半導体技術を使っていても、産業機械や設備、自動車や飛行機、家電などの分野ではトラブルがあってはいけない。というか、トラブルが容認されるのはコンピュータ関連の世界だけ、という方が正しいかもしれない。

 そのため、コンピュータ以外の分野では、問題が出尽くして動作が安定した半導体部品やソフトウェアを使うことが多い。そして、こうした部品やソフトに対して「枯れた」という表現を使う。

 ただし、だったら古い技術がいいのかというと、必ずしもそうではない。コンピュータの世界では、古くなってきた技術をレガシーとも呼んでいる。この場合は、悪いイメージが強い。

枯れたとは、ソフトウェアやハードウェアなどの製品が市場に登場してから時間が経過し、プログラムの不具合であるバグやハードの不具合などが解消され、製品として成熟した状態を表す言葉である。

枯れた状態の製品は、最新バージョンの製品と比較すれば機能面で劣るが、安定性・信頼性が高いという利点を持っている。また、トラブルシューティングのための情報も蓄積されており、万一のトラブル発生時も、何らかの対応ができる状態になっている。

トラブルを極力回避したい企業の基幹系システムや、金融系などのミッションクリティカルなシステムなどでは、最新技術が用いられた新製品よりも、むしろ枯れた製品が選ばれる例は珍しくない。また、新しいOSや、OSのバージョンアップが発表されても、企業においてはしばらく導入を見合わせるケースが多いが、これも製品が枯れるのを待っているためと言える。