幼女戦記
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ああ
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番外編6 『とある戦場伝説』
Name: カルロ・ゼン◆f40da04c ID:f789329c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/09/25 01:57
統一歴2016年某新聞社にて。
ジャン・ルスマンは呟く。
「なあ、魔導師というのは人間だったのか?」
数日前、機密指定が解除された文章を拾いに国立図書館へ向かった同僚。
帰社するなり、何も言わずに会議室の一室に資料を運び込み、わき目も振らずに何事かを調べ始めた男。
それが、突然自分のデスクの前に現れて呟くのだ。
髭もそらず、げっそりとやつれた表情で眼だけ爛々と輝かせて。
…呟かれる方としても、ちょっと戸惑わなかったと言えば嘘になるだろう。
「…唐突に何を言うかと思えば、どうしたんだ。」
だから、ロナルド記者は取りあえず誰もが思い浮かぶであろう言葉を口にしていた。
少しばかり、仮眠してから身だしなみを整えても悪くないんじゃないだろうか。
そんなことすら考えているロナルド記者の心中も知らず、ジャンはどこか、熱に浮かれたようにピントのずれた答えを返してくれた。
「昔、かの有名なアンドリュー記者が追っていた件の部分開示がつい先日あったんだよ。」
「ああ、あの十三文字の女神とやらね、戦場伝説の。」
で、それがどうかしたのか?
そう尋ねてくる同僚記者に、彼は国立図書館からもらってきたばかりの資料を指さして一言呟く。
「読め、全部はそれからだ。」
「おいおい、読めって、これ全部をか!?一日じゃとても足りないぞ。」
仕事に余裕がないわけではないが、一日どころか下手をすれば一週間はつぶれるような量の資料だ。
それを全部読めと言われて、〆切持ちの記者がほいほいと読めるわけがない。
訳がないのだ。
「そんなことは分かってる。だが、良いから、読め。」
「冗談じゃないぞ。ジョン、いいか、記事を出し損ねたら編集長に殺される。」
間違いなく、ルイス編集長は爆発するだろう。
そうでなくとも、ただでは済まないに決まっている。
あの雷おやじでなくとも、業務外の用事で一週間さぼってましたと報告すれば首にされかねないだろう。
雷おやじならば、ブチ切れること間違いなし。
「大丈夫だ。編集長の許可は取った。」
「は?」
が、にわかには信じかねることに普段ならば檄を飛ばし、怠慢な記者に喝を入れて回るはずのルイス編集長は確かにどこにも姿がなかった。
「編集長なら、隣の部屋で同じものを読んでる。そして、業務命令が出ている、さあ、貴様宛のメールを読め。」
そして、驚いたことに本当に雷おやじを説き伏せたらしく見てみれば確かに、その旨記載してあるではないか。
まあ、そうまでも言われるのであればロナルドとしても読むにはやぶさかではない。
そういう訳で、珈琲を入れ直し、とりあえず概要だけでも把握するか、と書類に手を出したロナルド。
気が付けば、すっかりと冷め切った珈琲のことすら忘れて愕然と立ち尽くしていた。
一言でいえば、『なんだ、こいつは?』である。
帝国軍魔導師というのは、かの大戦で猛威を振るった。それは良い。
少し歴史を齧ったものならば、機械と魔導の過渡期の産物として大々的に運用されて戦果を挙げたことは知っている。
今日の兵科としては特殊部隊で細々と運用される程度だが過去には一般的だったのだ。
だが、…これは、何かの間違いではないのだろうか?
ターニャ・フォン・デグレチャフ。
黄金剣付き白金十字、柏付銀翼突撃章保持者。
最終階級は、戦技研所属、技術廠首席試験官を経て帝国軍参謀本部付魔導准将。
別途にあの傑作と今日ですら絶賛されるエレニウム工廠製97式『突撃機動』演算宝珠開発への貢献にて技術鉄十字受勲済み。
従事した主要な戦闘を挙げるならば
『ノルデン北方戦』『ライン邀撃戦/第一次ライン戦』『ダキア蹂躙戦』『ノルデン海域封鎖任務』『ライン会戦』『南方戦線』『黄・赤両作
戦』『東部緒戦』『モスコー襲撃作戦』『東部第二期』『南方遊撃戦』『イルドア制圧戦』『第二次ライン戦/低地戦』『東部遅滞戦』『最終
反攻』『バルバロッサ』とほぼ主要な戦闘・戦役に従事。
最終撃墜数(魔導師)は東部戦線の従軍記録及び戦争末期の記録が完全に抹消されているために『不明』。
しかし最低でも200以上は確実で、推定でも300越えがほぼ間違いない帝国軍トップクラス。
航空機撃墜数は、記録されているだけで18。ただし、未確認多数とのこと。
撃沈した艦艇に至っては、護衛駆逐艦多数に、巡洋艦と空母、はたまた巡洋戦艦とまできている。
変なものでは、共同撃破で潜水艦も沈めているようだ。
所謂首狩りで、『敵司令部』を制圧した回数は記録されているだけで3度。
あのモスコーの赤の広場上空を堂々と飛行し、挙句に現地調達した国旗で国旗掲揚式までやらかしている。
…未発掘だが、モスコーを襲撃したものを記録したフィルムがあるらしい。
これらを全て個人が成し遂げたという。
それでいて士官学校次席卒業で、軍大学恩師組。
典型的なエリート、英雄像だろうが、正直に言って実在が疑わしいことこの上ない。
メアリー・スー伝説もここに極まれり、というやつだ。
度々、退役軍人や関係者の回顧録で存在が示唆されていたにも関わらず実在が疑われて久しかったのも無理はないだろう。
高級将官の中では比較的有名な存在らしいが、軍内部でもあまり語られることがないというのは、興味深いものがある。
なによりでっち上げるにしては、その年齢の桁が何か間違っているようにしか思えない程だ。
どうして、士官学校の年齢の桁が※一つで埋められ、軍大学が※二つなのだろうか。
何かの間違いでなければ、そんな子供が五年で少尉から、准将まで猛烈な勢いで昇進したことになる。
従事した戦闘は、開戦以来、ほぼすべての主要なもの。ライン戦に至っては、第一次、第二次の双方に従軍。
有名な仮想戦記では良く、その後森で勇猛無比に散華とあるが、戦死を偽装し『国防機密』とやらを引き起こす?
『国防機密』の案件については、あれから一世紀が経てなお『国防に直結する重大な案件として国家安全保障会議による機密指定』ときた。
というか、戦後から一世紀過ぎようとしているのに開示された機密は『当たり障りのないもの』に限ると言われる時点で何かがおかしい。
戦争後半に至っては、開示されている資料の方が少ないくらいだ。
それも、資料がないとかではなく、単純に分厚い機密のベールで開示されていないだけという。
そんな中で、その後の足取りは書類がない?
ありえないだろう、というのが常識的な感覚だ。
というか、健全な人間ならば誰しもそう考えるほどだろう。
正直に言えば、デグレチャフ准将の戦後に関連するファイルが機密指定されている方がまだ自然。
そこまで政府の関心を、当局の注意を惹く存在が、ぱっと忘れられる方がどうかしているのだ。
戦後も、ある程度の期間は監視されている方が当然であり、その記録が残っていない方が不思議なのである。
それを、その不思議な事態を説明できる合理的な可能性はたった一つ。
そんなふざけた話がと呆れるしかないのだが、合州国が意図的にその存在を匿った場合だ。
馬鹿げた空想の産物に近い戦果を挙げた、半ば戦場伝説と化している存在が実在し、挙句戦後には匿われた。
・・・合州国の国立公文書館から出された資料で大真面目にそれが示唆されるように書かれているとはどういうことか?
その点については、ジョンも同じような結論に達したのだろう。
スクープを嗅ぎ付けた記者特有の獰猛な狩猟犬じみた笑みを浮かべながらエナジー飲料をゴミ箱に放り投げると、ジョンは明快に断言する。
「証人保護プログラムだろうな。それも、最重要の。」
「…やはり、合州国が、匿ったと?」
ありえるのは、祖国がそれを欲したという一事だ。
ロナルドとしても、それを考えないでもないことはなかった。
しかし、それは、普通は考えにくいことでもある。
ごく少数の帝国軍の軍人が、戦後合州国にその経験を買われて顧問として雇われたという事実はあるだろう。
有名どころでは、将軍連中や技術者が戦後やってきてロケット開発に携わったと聞いている。
だが、それらは別に証人保護の手続きは取られていない筈だ。
カバーの身分を用意するという事は、よほどの事例に限られるはずなのだ。本来は。
冷戦構造下の、ごく特殊な亡命者やダブルスパイなどに与えられる国家安全保障上の必要措置。
それが、持ち出されているということの意味は冷戦崩壊後の今日でさえ小さくはない。
今尚明かされぬ歴史の陰。
その深奥が、そこに横たわっているのは論を待たないだろう。
「というよりは、取引したんだろう。興味深い資料があるぞ。」
ジョンから渡された資料の束に目を走らせれば、確かに終戦直後に一隻投降しているようだ。
だが、戦争が終わって武装解除を命令された帝国軍の潜水艦が投降するなど…ありていに言えば当然ではないだろうか。
戦争が終わったのだ。
よほど、狂信的な軍艦が暴れまわるならばともかく、疲れた彼らが降伏しても可笑しくはない。
当たり前な話だが、それがどうかしたのか?
そういわんばかりのロナルド。
そんなロナルドの疑問はジョンにも簡単に推測できる。
だから、ジョンはもう一束の書類を差し出しつつ、自分の推測を口に出していた。
「資料を漁らせているが、帝国軍の通商破壊作戦は既に破綻していたころだ。常識的に考えれば、何かの目的をもっていなければこんなところ
で帝国軍潜水艦がうろついているわけがない。」
「例えば?」
「そうだな、軍人の極秘裏の亡命、というのはどうだ。」
「推理小説の読みすぎでは?」
が、ジャンの仮説はどうもロナルドの賛同を得るには至らない。
この常識者めが、と心中で零しつつもジャンはもう一つ、彼の根拠を披露してやろうと決意する。
「いや、興味深いことに…この潜水艦の投降は『国防機密』指定に入っていた。たかが、一隻の潜水艦に随分と厳重なことじゃないか。」
「わかったわかった。じゃあ、なんでこんなエースが、いや、事実であればだが、末期に祖国を離れるんだ?」
しかし、そのジャンの提示した資料には興味を示しつつもロナルドはさらに真っ当な疑問を提示して見せた。
「それこそ、帝国が一人でも多くの兵力を必要としているときに、こんな精鋭を手放すとは思えないがね。」
「終戦工作なり、極秘作戦なり、いろいろと理由は推測できるだろう。」
が、それはジャンとて悩まなかったわけではない。
ないのだが、単純にそれよりも優先する何かがあった、と彼の勘が囁いているのだ。
例えば、なにがしかの極秘作戦があったとすれば戦争末期だからこそ切り札が投じられても可笑しくはないではないか、と。
「それにジャン、君の言うとおりとしよう。我らがフェデラルが本気で仕事をしたならばそこからどうやって追うつもりか?」
何より、ロナルドが示唆するように。
本来、スパイや証人などに適用されるはずの証人保護プログラムは基本的に常に最高の機密扱いである。
いやそもそも、時代を考えれば証人保護プログラムが制度化される前だろう。
規定がなければ、そもそも経歴が新しく用意される場合痕跡を辿るのはさらに困難に違いない。
なにより、それは完全に法的な手続きを超法規的措置で無視しているに等しいものだ。
記録が仮に残っていたとしても、まず開示される希望はないだろう。
だが優秀な取材者としての直感が、ジャンに囁いていたのだ。
これは、金脈を掘り当てたに等しいスクープだ、と。
だからこそ、全精力を傾けて働かせる頭が、たった一つの合理的な説明可能たる仮説を彼の頭によぎらせた。
ジャンにとって、それは神の恩寵そのものだ。
「年齢だ。年齢に注目した。」
ちょうど、戦争中に二桁になった女性。
いや、童女というべき幼いデグレチャフ。
そう、仮説が正しければ、彼女はそんな幼い年齢で従軍している。
「一桁とかいう眉唾物の推察か。それがどうした。」
「…仮に、仮にだ。一桁の年齢がかみ合えば、終戦時はそうだな、ティーンエージャーの後半に届くか届かないかだろう。」
「そんな子供が、こんな戦果を?悪いが、コミックスの読みすぎだぞ。」
「いいか、聞け。これが事実ならば、年齢的に…空軍士官学校の創設期に間に合う。」
その善悪の価値観はともかくとして、年齢だけ考えれば、ぴったりと空軍士官学校の創設期に間に合うのだ。
例えば、帝国軍の軍歴を投げ捨てれば全く新しい身分で、まったく新しい経歴を、完璧に手に入れられる。
一人、もの凄く、興味を引く人間と、繋がるのだ。
「はあ、…それが何か?」
「ターシャ・ティクレティウスという名前を知っているか?」
「聞いたことがないな。有名な人間か?」
「空軍士官学校第一期の首席だ。」
創設期の、それも主席となれば空軍の未来を担うエリート。
それが女性とくれば、多少は騒がれてもおかしくないはずだが。
「おや、しかし…聞いたことのない名前の将軍だな。」
「ちがう、退役している、少佐で。」
にもかかわらず、異常なほど沈黙に包まれる中で彼女は任官し、あっという間に昇進して、気が付けば退役している。
「首席卒業様だ。少佐で退役とは何か、問題でも起こしたのか?」
「昔、空軍の創設期を扱った本で調べた人間が同じことを思って、一期生にインタビューしたらしい。それによると、『愛国心』からだそうだ。」
「は?」
問題行動はナシ。
記録に残る限り、軍人としての評価は高かった。
なにより、彼女を知る同期の軍人の評判は絶賛に近い。
第一期生に限らず、空軍士官学校の回顧録には良き上官や同輩としてひっそりと描かれている。
興味がなければ、彼女は単なる一登場人物だろう。
だが、調べていけば調べていくほど興味深い事実が見つかっているのだ。
「ZASという民間航空会社を立ち上げて貨物と旅客輸送に携わったという記録がある。もう、ずいぶんと前に事業は清算しているようだが。」
「わかったわかった、それで、どうかしたのか。」
「ZASも、何故か、国家安全保障委員会に管理される機密事項扱いに入っていた。」
全てが、機密の壁。
まるで、何かを語りたくないと頑なに拒むかのような姿勢。
だからこそ、ジョン記者は獲物を見つけた猟犬もかくやあらんという勢いで食らいつく。
機密の裏にあるものは、記者にとってはお宝の山だ。
そして、その宝が何か大凡は知っているー少なくとも、猟犬本人としてはそのつもりである、場合の執着心は尋常でないのも無理はないだろう。
ジャーナリストとしての、栄光。不滅の記事。それも、また、夢ではないのだ。
「なんだと?」
「ティクレティウス少佐の経歴を読んだが、奇妙だ。戦技研究、戦略空軍構想、国防高等技術研究所など、ほとんど主要なプロジェクトに関与し
ている。その割に、空軍をあっさりと抜けているのは、何故だ?」
経歴からすれば、間違いなく手放すはずのない貴重な幹部候補生だ。
それが、あっさりと少佐という地位で退官しているのは奇妙と言わざるを得ない。
「うーん、まあ、それは面白い仮説だが、金銭面の問題は考えられないかな。」
「なに?」
「これだ、証券取引員会の監視報告書。ティクレティウス女史の個人的な株取引にインサイダー取引の疑いあり、と書いているが。」
だから、最初にロナルドが単純な反証を求めて疑問を提示してきたとき、彼は面食らわざるを得なかった。
SECの報告で、インサイダー疑惑が取りざたされる各企業との技術繋がりで縁の深い士官が自発的に退職することで軍が揉み消したというシナリオ。
まあ、ありがちといえばありがちだ。
スクープではあるが…しかし、それは、ジョンの欲する次元とは違うのだ。
「どれだ?…確かに、国防関連企業の投資に重大な疑義があるな。いや、しかし、これはどうだ?」
「ヌカ・ヌークカンパニーの投資にインサイダー疑惑?あそこは、サイダーを売ってる企業だぞ。確かに、変だな。」
「そう、それがゼロカロリーヌカを出すとかという前にどがんと投資している。」
だからこそ、資料山を狂ったように穿り回しながら彼らは興味深い過去の記録を舐め回すのだ。
「うーん、ソレだけ聞くと確かにインサイダーだが。軍人とジュースというのはさすがに微妙だな。」
「だろう?」
ゼロカロリー飲料は、確かに革命的な商業価値を持つだろう。
間違いなく、株価は上がる。
それは、当然、インサイダーだろう。
仮に、それを、知る立場にあれば。
ゼロカロリーヌカの営業価値を考えれば、社外秘は徹底されるに違いない。
それを、投資家に漏らすことは考えにくく、まして接点のないであろう軍人がしるのは奇妙だ。
「さらにこいつはどうだ。秋津島の僕ヨユウ自動車だ。創業期にアホみたいな金額を投じているが。」
「いや、それは可笑しいでしょう。」
秋津島の外資規制を踏まえ、規制限度枠まで投資し、以後、一度も経営に口を出していない。
経営者を送り込んだこともなく、せいぜい北米市場に参入する際に投資家として政府に参入障壁の緩和要望を出した程度だ。
どう考えても、長期保有の投資だろう。
その、ピンポイントの投資が、世界最大の自動車企業に成長さえしなければ。
「まあな、インサイダーというか、なんだろうな、これは。」
「「案外、ラングレーのカバー企業では?」」
だからこそ、思わずロナルドと二人で顔を見合わせて呟いてしまう。
仮に、だが。
ジョンの予想が正しければ、このデグレチャフ准将は本物の化け物だ。
童女の頃に戦争に飛び込み、その後、合州国に価値を認めさせて、以来ひたすら力を蓄え続けていることになる怪物に近い。
どうしたのかは知らないが、おそらく相当深いつながりをラングレーどころか軍や政財界と繋いでいることだろう。
冷戦構造下の特異な時代において、大暗躍したかつての帝国軍人。
正しく、囁かれて久しいライヒの地下組織伝説を体現したかのような軍人ではないか。
「ああ、これもだ。」
「だな。中南米の左派民族主義者。連中の勝利を見越して、散々果物企業を空売りしている。」
「これは酷い。あんまりだ、どう考えても状況的に真っ黒でしょう。SECは何をしていたんだ?」
そうつぶやいたロナルド自身、ある程度推測は付いていたのだろう。
政財官の麗しきトライアングルは、別に今に始まったことではない。
…我らが政府の中にも、目的のためには手段を正当化する動きがないわけではないのだから。
反共だの、冷戦下の安全保障だののために、インサイダーを見過ごしていても可笑しくはない。
「ああ、あったこれだ。なになに、六件にわたり、インサイダー疑惑にて非公開審議するも、何れも証拠不十分で常に不起訴?」
「…まあ、これは、さすがに嘘だろう。」
どう考えても、灰色。
それも限りなく黒に等しいグレーだ。
「だろうなぁ。…やはり、癒着なり庇護なりがあったんだろうなぁ。」
「とまれ、大スクープだ。世紀の発見だぞ、これは!」
追記オマケ。
「…委員長、また、例の、その、」
「ああ、ザラマンダー信託投資組合か、今度はなんだね?」
「…どの程度、だね?」
「合計すれば合州国の十二か月分の消費量です。」
「なあ、普通は、金利だけで破産しかねない借入だろう、それだけ買えば。」
「はあ、間違いなく。ですが、この状況下では間違いなく大黒字ですが。」
「それで、その、…また、監査しますか?」
「どういう理由でだね?」
「は?」
「ラングレーも、国務省も、まったく掴んでいなかった情報を、連中が掴んでいると、証明できるのかね?」
「いや、ラングレーは知っていたのでは?」
「ラングレーは知らんが、奴は未来でも見えるんじゃないか。…去年の十二月には秋津島イェンを、アホみたいに買い込んでいたんだ。あれは、ラングレーどころか議会にも知らされていない大統領の秘策のはずだぞ。」
「・・・挙句、大統領を調べて大やけどした教訓を思えば、確かに…その、証拠もなく監査は。」
「調べただろう、ないのか、何も。」
「ありません、その、何一つとして疑わしいものが、ありません。」
「これだけ、これだけの状況証拠があってもか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。」
彼らは知らない。
その数十年後に、議会に呼び出され公開聴聞会の席に座らされることを。
そして、彼らはまだ知らない。
自分たちの証言が、不運にも絶対に信用されない、ということを。
あとがき。
突発オマケです。
コメント欄を見ていた時に、そうか、やらねばならんな、と決意。
でも、やっつけだから。
ごめんよ、本命は、本命は『ラインの×××』という番外編を予定していたんだ。
そっちは、もうちょっとだけ待ってほしい。
あと、幼女戦記の本の話はなんか、
『[1582]紅◆029c0ac8 ID: 27d1ab61
ちょっと水をさすようで申し訳ありませんが、HPトップの投稿規約に
>すべての掲示板において、イベント、商品、企業の宣伝行為は禁止です。
>(サイトをたてました……等は除く。また、Arcadiaからプロ作家に転向された方の外伝投稿、Arcadiaへの投稿がまずくなるための、自サイトへの移管のお知らせ等も除く。)
とあります。以前も似た様なことで削除された作品もありましたので、修正をしたほうがよろしいかと。』
と、ご親切にも忠告頂いたのでちょっと取りあえずこちらでの告知・お知らせは一度保留しようかと。
不幸中の幸い、なろうの方で『存在X』名義で活動報告を出せますので、詳細はそちらをご覧いただければと思う次第です。
いや、ほんと、なんか、すんません。(・_・;)
ZAPもしました。
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