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安野モヨコ「オタ嫁座談会」



『監督不行届』の発売を記念して、2005年2月某日に安野モヨコ先生をはじめ3人のオタ嫁が集結して座談会を開きました。「ウチもそう〜!」の叫びが連発した座談会。安野先生の結婚生活が明らかに!?

単行本巻末の用語解説の正誤表はコチラ★


安野モヨコ
『監督不行届』著者である大人気漫画家。『働きマン』『シュガシュガルーン』(ともに講談社)の連載も絶好調。夫の庵野秀明氏とは結婚して3年たった今でもラブラブ。最近のマイブームは酵素風呂

『監督不行届』




定価840円 
大増刷中!!



神村典子
新世紀エヴァンゲリオン』などで有名なアニメ製作会社ガイナックスに勤めるオタ嫁。『監督不行届』巻末の2万字用語解説を書いたのは同じくガイナックス勤務のご主人。夫婦ともに庵野監督とは旧知の仲。高3と小6の娘アリ。


フィールヤング編集部・K林
フィールヤング』を編集して9年目、編集部唯一のオタ嫁。夫はアニメライターの藤津亮太。3歳の息子アリ。

安野先生の夫
庵野秀明監督。アマチュア時代から特撮やアニメを制作。'95年に監督したTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』が大ヒット、大ブームとなる。『ふしぎの海のナディア』('90)、『キューティーハニー』('04)など監督作はいつも話題に! '02年に安野先生と結婚。カントクくんのモデルとして『監督不行届』に登場!
↓カントクくん


神村さんの夫
アニメ製作会社ガイナックスの神村靖宏氏。カントク同様アニメや特撮をこよなく愛し、『監督不行届』の解説も引き受けた。ガイナックスの前身であるアマチュア映像制作集団の時代からカントクの友人。一度はカタギの会社員(NTT)になったが、ガイナックスに転職してきた変わり種。
フィールヤング編集部・K林の夫
アニメを愛するアニメライター・藤津亮太。著作に『アニメ評論家宣言』(扶桑社)がある。


K林:今日は編集部のオタ嫁として若輩者ですがお話を伺わせていただきます! まずはダンナさんについてですが、お二人ともダンナさんのオタク属性は、言うまでもなく特撮とアニメですよね。

安野:そう、あとは鉄道とかも。


神村:うちはプラモデルも好きですね。



安野先生はカントクとは最初はお友達で。

そう、友達の期間が長かった。それがいつの間にやらこういうことに。



神村さんはダンナさんとはどうやって知り合われたんですか?

うちはカントクとかも一緒の、同じ趣味の人がいっぱいいるグループ内で結婚しました。



世間的にはオタクっていうと社会性がなくて生身の人間とはうまく話せない、っていうイメージのある人も多いかと思うのですが、そんなことないですよね。


オタクも好きなものについて語りあうことが楽しいという人と、完全に外部はシャットアウトみたいな人がいますよね。ガイナックスの人はみんな好きなことを語りあいたい人たち。神村さんご夫婦もコミュニケーションむしろすごく上手。


好きなことをそのまま仕事につなげているような、社会性のあるオタクは大勢いますよね。


そして社会性のあるタイプのオタクの人は意外と結婚早かったりする。神村さんも早かったんですよね。


ええ、23歳のときですね。


趣味がハッキリしてるから、合う人みつけるとサッと。


「これを逃すとこんな趣味の人もういない、もうこの人だー」みたいな(笑)。神村さんのダンナさんの『監督不行届』の用語解説ですが、読み応えがあってすっごく面白かった! オタクならではの好きパワー全開。ダンナさんって多分ガイナックスで一番忙しい人なのに「何をやっとんスか!」って(笑)。 ※『監督不行届』の解説
神村さんのダンナさんによる単行本巻末の2万字用語解説。超詳しくて楽しくてためになる!


あの解説、すごいですよね。


毎回連載読む度に「これはあれじゃないかこれじゃないか」って突っ込み入れてたので、それが字になって喜んでましたよ。


カントクとか神村さんってそんなに細分化されてない時代のオタクですよね。


アニメっていうと『宇宙戦艦ヤマト』、みたいな時代でしたからね。共通体験のある世代。今はオタクの世界も格段に広がっているから。 ※『宇宙戦艦ヤマト
滅亡寸前になった地球を救うため、宇宙戦艦として蘇ったヤマトがイスカンダルを目指すという'74年放映のTVアニメ。沖田艦長を理想の大人に掲げる人は多い。


うちの新しいアシスタントの子は、友達同士で、ふたりともメイクばっちりで合コンとかも行ってるけど、知り合ったきっかけは同人誌だったりするの。オタクもいろんなタイプに分かれてる。


神村さんご自身もアニメとか特撮はお好きで?

でも好きっていう程度で、ダンナのように詳しくはないですね。


あの、私は本当にアニメに関心がなかったので、付き合い始めた頃、夫にオタク教育をされました。『どたから』とか観せられて。



まず「『どたから』と略せ!」と言われるのよね。 ※『どたから』
'71年劇場公開のアニメ映画『どうぶつ宝島』の略。これぞ"漫画映画"という、お気楽で極楽な娯楽映画。同様に『長猫』は『長靴をはいた猫』、『パンコパ』は『パンダコパンダ』の略。いずれの作品も宮崎駿らが関わった。

そう、『どたから』って言いますよね! 『どたから』『長猫』『パンコパ』。



やはり暮らしの中でアニメの台詞って頻繁に登場しますか?

こないだね、ダンナが子供と一緒にケーキを切ってたんですよ。最初は「ザクッ、ザクッ」って言いながら切っていたのに、そのうち「ザクッ、ザクッ、...ドムッ、ドムッ」って。
※ザクとドム
'79年放映のTVアニメ『機動戦士ガンダム』に登場するモビルスーツの名前。


あははははは(爆笑)!!


まず普通切りながら「ザクッ、ザクッ」って言わないよ(笑)!


あと雨が降ると夫が「雨やだな」って、その隣で娘が「サーカスお休みになっちゃう」って、二人して『パンコパ』の台詞を...。


うちも息子が「だぁ〜れかいませんかぁ〜?」って山田康雄さんのサーカスの団員さんの真似しますよ(笑)。 ※山田康雄さん(故人)
ルパンの声でおなじみの声優さん。『パンコパ』ではおまわりさん、続編『雨降りサーカスの巻』ではサーカス団の団員さんの声をあてている。


アニメの台詞は日常生活に入り込みやすいですね。


トミノ台詞も多いですね。 ※トミノ台詞
機動戦士ガンダム』などの監督・富野由悠季氏のアニメに頻出する、独特な言い回しの台詞。


「なぜだー」って言うと「坊やだからさ」。


「認めたくないものだな」。


そうだよねー。でも私多分、カントクが言ってるのに気づかなくて普通にスルーしてるのいっぱいあると思う。


普通にスルー(笑)!


カントクって普段おしゃべりじゃないから、マジメに言ってるのか、何かの引用なのかわからないとこありますよね。


「すごいいいこというなぁ」と思ったら、ほとんど全部引用だったりするんだよ(笑)! その引用も、みんなが元ネタにしたようなすごくディープなところから持ってくる。



『沖縄決戦』の丹波哲郎の真似(笑)。 ※『沖縄決戦』
'71年公開の映画『激動の昭和史 沖縄決戦』のこと。故・岡本喜八が監督した。カントクの作品内でもしばしばオマージュが捧げられている。

丹波哲郎が若いのに戦争に行って銃弾をうけて死ぬ話らしいんですけど、わかんないよそんなの(笑)。「小芝居をやめろ」って怒るんですけどね。


でも安野先生もムスカの真似とかしてますよね。



ま...、それはね(笑)。『王家の紋章』とか漫画の引用は多いな。「パーマ失敗してミヌーエ将軍みたい」とか普通に話してる。

ミヌーエ将軍の名前が日常会話に...。



このあいだも税務署行ったときにね、すごい厳しい税理士の人にあたっちゃったんだけど、その人がカプター大神官そっくりで私もう「そっちのことのほうがどうしよう!」って思ったよ(笑)。
ムスカ
アニメ映画『天空の城ラピュタ』の悪役。兵隊を虐殺しながら「人がゴミのようだ」などとキレた発言を繰り出し、宮崎アニメ史上もっとも冷酷非道なキャラとされる。
※『王家の紋章
アメリカ人のキャロルが、古代エジプトにタイムスリップし、メンフィス王と恋に落ち...、という壮大な恋愛漫画。細川智栄子あんど芙〜みん作。現在も『プリンセス』(秋田書店)で連載中。50周年記念号の付録には安野先生もイラストで参加!
※ミヌーエ将軍
メンフィス王の忠実な部下。王紋にはユニークな髪型のキャラ多し!
※カプター大神官
王紋に出てくる黄金好きのエロ親父。いつもキャロルのことを狙っている。キメ台詞は「黄金の髪の娘、欲しい...!」。
※『スタートレック
調査航海に出発した宇宙船エンタープライズ号が、毎回さまざまな驚異と出会う宇宙活劇。'66年よりアメリカで放映され、以降シリーズ化された。
※スポック
スタートレック』に登場する、カーク船長を補佐する副長。バルカン星人の血を引いているため、とがった眉と耳が特徴。手のひらを相手に向けて中指と薬指を開く「バルカン人の挨拶」はあまりにも有名。
データ少佐
スタートレック ネクストジェネレーション』に登場するキャラクター。アンドロイドなのだが、当然役者が演じているので、シリーズが続くにつれて微妙に老けていく姿が涙を誘う。
※シャア
機動戦士ガンダム』のライバルキャラ。いつも自分のモビルスーツを赤く塗る人。奇矯なマスク姿と芝居がかったモノローグでファン多し。
※『ザンボット3』
'77年放映のTVアニメ『無敵超人ザンボット3』のこと。ロボットアニメに人間ドラマを取り入れた富野監督の代表作の一つで、クライマックスでは登場人物の大半が死んでしまう。「皆殺しの富野」という作風の原点。

スタートレック』のスポック似とかもありますよね。



そうそう。あと朝のワイドショーに出てる人が『スタートレック』のメカの少佐、誰だっけ...。


ああ、データ少佐(即答)。


そうそう! データ少佐そっくりなの! カントクにいつも「似てるよね」って!


引用の元が、漫画だったりアニメだったり...。


そうなんだよね、昔の人の「子いわく」の「子」の部分が、「シャアいわく」みたいなことになってるのかも(笑)。


夫も人の相談のるときに、「そんなことに悩んでるならこのアニメを観ろ!」とか言ってますよ。


で具体的に何を勧めてるんですか?


『ザンボット3』とか。


  『ザンボット3』(笑)!


犠牲的精神を学べ、って。


私も漫画でそういう答えするときあるなあ。「『ブッダ』を読め!」とか。 ※『ブッダ
手塚治虫が独自の解釈で描いたブッダ伝。'72〜'80年に渡り『希望の友』『少年ワールド』『コミック・トム』(すべて潮出版社)と雑誌を替えながらも長期連載された。


あとお聞きしたいのが、ダンナさんの服のセンス。


あ〜〜〜。  

オタクのファッションっていうと、一般的には「チェックのネルシャツにジーンズ」のイメージですが。
※チェックのネルシャツにジーンズ
まさしくこのファッションをずーっと貫いているのがジョージ・ルーカス。億万長者なのにね...。


チェックのネルシャツなんてまだいいよ、普通普通! だってカントクが着てたこのポロクラブのトレーナーなんて、色がエメラルド・グリーンなんだよ!?
※ポロクラブ
決してラルフ・ローレンではないところがポイント。



あははははは(爆笑)!



安野先生ちょっと教えてくださいよ! あのカントクを一体どうやって格好良く変身させたんですか?

カントクはね、全っ然こだわりがないんですよ。あるものを着ちゃう。だってカントクって昔、 冠婚葬祭のとき会社でずっと神村さんにネクタイ結んでもらってたんでしょ?

そうそう、監督そういうの全然ダメだから。


うちは付き合い始めの頃、夫のタンスに紫の布がパッチワークされたすっごいヘンなコートが入ってて、「これどうしたの!?」って聞いたら「福袋に入ってた」って。福袋で服買う人って一体...。


暖がとれればそれでいいんですよね。


でも服に関心がないわりには、ひとつ着るとそればかり。


そうそうそう!  


捨てようとすると「あっ!それまだ着られる!」って。


そうそう!「このヘロヘロ感がいいのに〜!」って。


なんかさ、カントクのTシャツも首がビロビロに伸びてるのがすごいいっぱいあって。


クレープみたいに伸びている(笑)。


そう、クレープ(笑)! で私が捨てようとしたら「やっといい感じなったのにぃ〜、ここまで頑張ったのにぃ〜」って。


ビンテージのジーンズじゃないんだから(笑)!


「自分の臭いがついてるのにぃ〜!」って動物のようなことを言うんですよ!


放っておくとずっと同じの着ちゃうから、それは隠して新しいの置いておかないといけない。



新しいのと交互には着られないんですよね。同じ方ばかり選んじゃう。だから1枚が痛むのが早い。

あと自分で服は絶対買わない。


うちも服は全部私が買っています。結婚したとき、夫が持っていた服は全部私が捨てました。大きいビニール袋にザーって。



わかるわかる。

で、無印とGAPとユニクロを与えて「これを着ておけ! これならどう組み合わせてもそこそこには見えるから!」って。



うちも一緒〜! ホントに一緒! でもたまに自分で頑張ってヘンなスーツとか買ってない? 思い切り肩パット入ってたり襟がこーんな角度になってたりして「それは絶対普通の人は着ませんよ〜...」っていう服! しかも色がワインレッドだったりして、ホント昔の安全地帯が着てたみたいなのわざわざセレクトしてて、もうどうしようって...。 ※安全地帯
'80年代に『ワインレッドの心』などのヒットを飛ばしたバンド。ボーカルの玉置浩二の服とメイクは今見るとかなり危険。


  安全地帯〜(爆笑)!


頭の中で「これは何とかの制服に似てる」とか思ってるに違いないですね。


そうそう!あれは絶対ジオン軍の制服とかが頭にある! ※ジオン軍の制服
機動戦士ガンダム』の敵側の制服。もとから装飾性が高いうえ、偉い人ほど制服にトゲを付けたりヘルメットを改造してたりで、ヤンキーみたいなことに。


放っておくと積極的にヘンな方向にいっちゃう。


そう、野放しにしてると危険。


うちの夫も何かの映画で観たらしいんですけど、白い麻のスーツに憧れてて。「そんなの似合う日本人いないよ...!」って。


白い麻のスーツ(笑)! そうなんだよ、なんか元ネタあるんだよね、何かアニメとかのね。


懐中時計にも憧れてるらしいんですけど、そんなの持ってる男なんて絶対イヤ〜!


懐中時計。それはきっと『ホームズ』だ。 ※ホームズ
'84年より放映されたアニメ『名探偵ホームズ』のこと。当初の6作品は宮崎駿、他の20作品は御厨恭輔が監督。「すべてのキャラクターが犬」という設定なのに、ホームズはえらく格好良くてセクシーです!
※マッキー監督
現在のガイナックス最新作『トップをねらえ2!』の監督、鶴巻和哉氏。代表作にPillowsのかっこいー曲を全編に散りばめたアニメ『フリクリ』がある。アニメオタクでない若いファン層を広げた。


でもガイナックスでも、マッキー監督のように元からおしゃれでかっこいい人もいるんですよ。


あ、鶴巻監督のことですね!? 噂でかっこいいと聞いたことがあります。おしゃれで噂になるなんて、うらやましい限り...。


カントクって以前は仕事場以外には外でませんでしたよね。一番遠くて50メートルくらい先のコンビニしか行かなかった。

そうそう、私がローソン行こうとすると「サンクスのほうが近い!」って文句言ってた。


行動パターンが同じだから。



カントクが住んでた部屋も私ずいぶん変えたもの。

昔はどんなだったんですか?



なんかね、もうとにかく産業廃棄物が不法投棄されてる状態よ!

不法投棄...(笑)!



カントク、ほとんど会社に住んでたから。そっちの借りてた部屋は資料部屋で。


私、自分でもあそこよく片づけたなって思うよ。もうね、すべてが床に積まれてて、その部屋に住んでからの歴史が堆積されてるの。


地層になってる(笑)!


掘っていくと歴史がわかる(笑)。私ゴミの上に寝たくないから必死で片づけたよ! ほとんどいらない書類と脱いだ服でね。幸い食べ物はなかったからよかったんだけど。


でも他人に片づけさせてくれたっていうのは、愛のなせる技ですね。


ハムスターですら小屋掃除すると怒りますもんね(笑)。


やりかけの資料の置き具合とかは、普通の女の人よりはわかったかも。動かさないように掃除して、また戻してって。カントクは負け惜しみなのか何なのか「自分は豚と一緒でほんとはキレイ好きなんだけど」とか言ってたけど(笑)。


オタクの人は自分のまわりに好きなものがいっぱいある状態が好きですよね。でも一人暮らしならいいけど、家族がいると本当に困る。収納する場所だって広くないのに。


一室与えて「ここはもう好きにしていいから、あとは散らかさないでね」ってするしかないですよね。隔離政策。そこはもう掃除もしないし見ない。


そうそう、うちも!


なんであんなにもの買ってくるんですかね。私には理解できない。漫画とDVDにはお金を惜しまないからビックリするくらい買ってくる。


場所とりますよね。うちの夫の仕事部屋って真ん中に本がドーンってあって、夫は隅でちょこんと仕事してるんですよ。それ見てずっと「何かみたいだなぁ...」って思ってたんですけど、私わかったんですよ。「食玩のお菓子! アナタ2粒のラムネだよ!」って。本体よりも付属物の方がメインになってる。 ※食玩
チョコエッグなど、豪華なオマケ付きのお菓子。カントクくんはしっかりお菓子も食べている模様。



わかるー(笑)!

インテリアっていえば、今鎌倉に家を作っているのね。でも突然出てくるカントクのアニメ癖にビックリするんだよ...。打ち合わせの時、木と紙と土とかで「昔の日本家屋風の雰囲気で」って話まとまって、みんなそういう気分で盛り上がってたのに、最後に設計士の人が「ご主人、最後に何かご希望ありますか?」って軽く尋ねたら、カントクが突然「全部鋼鉄で...」とか言い出して。



鋼鉄...!?  


突然「スチールで近未来風のもいいですね」とか言い出して超ビックリよ! 根底からくつがえすような真似を...。みんなすごい困っちゃって。

日本家屋なのに〜(笑)!



しかもそれ、質問の意味わかってないしね(笑)。設計士の人は「もう1個窓ほしい」とか、そういう答えを期待した上での質問だったのに。ルークがダースベーダーと戦ってるような空間をイメージしてたね、あれは。そういうのを家に持ち込まれるのは私は絶対にイヤ...! ※ルークとダースベーダー
SF映画スター・ウォーズ』の主役とライバル。実はダースベーダーの正体はルークの父アナキン・スカイウォーカー。「I'm Your Father.」「Noooooo!」。

カントク、それも好きって言いたかっただけじゃないかしら(笑)。



たぶんね。でも言う場所を間違えてるから(笑)!


家といえば、これね、うちの庭の写真なんだけど...。


可愛いー!  


庭に恐竜の親子がいる!


ダンナ、プラモデルちくちく作ってるなって思ったら、庭に置いてたんですよ。あとこれはクッションの写真。



あ、ハロだ!


ビーズクッションにキュキュってマジックでハロの顔描いて、自分で喜んでました。


うまい! 器用だよ、普通こんなには線が描けない。 ※ハロ
機動戦士ガンダム』に登場するペットロボット。主人公のアムロが製作した。


ダンナさん、日曜大工はします?


全然しない。片づけるのも嫌い。プラモは作っても日常に役立つものは作らない。今ダンナ、緑色の大きなバランスボールを欲しがってるんですけど...。



それも絶対ハロにされる(笑)!

うちはインテリアは仮面ライダーだけで何とか抑えた。DVDの棚にコマコマしたもの並べようとしてるから私、激怒して。


でもハイジとか名作シリーズとかは可愛いから自分も困る。



それ自体は可愛いと捨てられなくなっちゃうんですよね。でも置いちゃうとインテリア破壊するからなあ...。事務所で今魔女っ子シリーズのフィギュアの置き場に困ってるの。収納部屋が作れれば一番いいんだけど。

ケロロ軍曹』の地下空間! ジオラマ部屋。
※『ケロロ軍曹
『月刊少年エース』(角川書店)で吉崎観音が連載しているギャグストーリー。ケロン星からやってきた、カエル形宇宙人が地球人征服のため日夜ドタバタするお話。原作、アニメともにオタクネタ(主にガンプラ)のギャグが多いのがウリの一つ。
角川書店オリジナル公式HP】
http://www.keroro.com/


ほんと欲しいよー!


「オタクは洋楽を聴かない」という説があるらしいのですが。

あー。カントクと一緒にカラオケ行って、私がハノイロックスやガンズとかの洋楽歌っても、カントク無言なの。まったく知らない。。。
ハノイ・ロックスやガンズ
ハノイ・ロックスは'81年デビューのフィンランドのバンド。ド派手なルックスとキャッチーなメロディ・ラインで大人気だった。ガンズは'87年にデビューのGUNS N' ROSES(ガンズ・アンド・ローゼズ)のこと。素行不良でも有名だった。ボーカルのアクセル・ローズ(AXL ROSE)」が「ORAL SEX」のアナグラムであることは有名。
安野先生は他にもカラオケではカルチャー・クラブデュラン・デュランも歌うそう。ロックが元気だった80年代、10代は少ないお小遣い費やして、背伸びして洋楽聴いてました...。

興味ないものは聞こえてこないのね。うちもオタク・ソングばっかり。このあいだ夫が喜んで歴代の戦隊ものの曲が入ってるCDを買ってきたんですけど、聴いてみたら新しいものから順に入ってて、そしたらそれが気に入らなかったらしくて、自分で全部古いものから全部入れ直してて。



そこまでやるか(笑)!

忙しくてもそういう手間は惜しまないんですよ。



うちは車乗ってて「なーんかこの曲聴いたことあるなぁ...」って思ったら、惑星メーテルが崩壊するときの曲がかかってましたよ...。 ※惑星メーテルが崩壊するときの曲
劇場版『銀河鉄道999』(監督りんたろう)のクライマックスでかかる曲。タイトルは「惑星メーテルの崩壊」(そのまんまです)。作曲は青木望。天才的アニメーター、金田伊功の作画との相乗効果で爆散シーンを大いに盛り上げた。

そんなものまで(笑)。このあいだオタク性って「徹底すること」なんだって思う出来事があって。私クレイジー・ケンバンドがすごい好きで、カントクに言って車でかけてもらってたのね。
※クレイジー・ケンバンド
横山剣をボーカルとする素敵なビッグバンド。ちなみにここで安野先生とK林が歌っているのは超ソウルフルな傑作ナンバー『タイガー&ドラゴン』。
【公式HP】
http://www.crazykenband.com/


クレイジー・ケンバンド! うちの夫も好きです! 


クレイジー・ケンバンドって40代でしょ。だからカントクも歌詞に出てくる言葉とかが琴線に触れたらしくてね。一番新しいアルバムしか渡してなかったんだけど、後日「他にもある?」って突然事務所に現れて、全部自分でiPodに入れて。


気に入ると追求しちゃうんですね。


そうそう、これだって思うとね。アニメだけでなく、違うものに向かってもオタクっぽくなるんだなって。
うちは夫のアニメうんちく話が始まると、私が「♪オレの話を聞け!」って歌いますよ。


♪5分だけでもいい(笑)!


あとオタク知識にプライドがあって、勝ち負けにこだわりますよね。「知っているはずなのに思い出せない! 負けだー!」みたいな。


そうそうそう!

「な、何が負けなの...?」って。



『監督不行届』で私が存在しないオタクっぽいキャラを適当に描いたら、神村さんのダンナさんが「これ誰ですか!?」って(笑)。わからないのが悔しくてしょうがないって感じだった。でもダンナさんが知らないことを私が知っているわけはありませんから(笑)!

うちの夫も「チンパン探偵ムッシュバラバラ...。観たことないなあ」って言ってましたね。
※『チンパン探偵ムッシュバラバラ』
『監督不行届』の用語解説によると、日本では'71年に放映された米国製の動物探偵ドラマだそう。それにしても気になるタイトル...。


知らないものがあると悔しがるのよね。

でもさー、『チンパン探偵ムッシュバラバラ』なんて1ミリたりとも知らなくても生きていけるから!



私もそう思います(笑)!


でも私が「それ知らない」っていうとダンナは「何で知らないの!?」って言うんですよね。


言う言う! で、「それ常識だよ」って言いませんか?


言う言う! 容赦ないんですよね。でも絶対常識じゃないと思う(笑)! 


カントクは何か私が知らないことがあると優越感抱きますね。「そりゃあおまえはこれを知らないだろう」って。『ファイヤーマン』とか年代も違うからしょうがないのに、私がちょっと主題歌歌ったりすると「門前の小僧!」とか言われるの(笑)。 ※『ファイヤーマン』
'73年放映の特撮ドラマ。地球の危機を救うため、地上に派遣された若者・岬大介が、ファイヤーマンとなって戦う。『ウルトラマン』への原点回帰を意識して作られた、円谷プロ創立10周年記念番組。


私も歌は知ってるけど内容は知らないもの、いっぱいありますよ。



知識に関しては、うちの夫は「いっぱい知ってることがモテにつながる」と勘違いしているような気がします。

むしろ知りすぎてたら普通の女子は引くのに!


うちはモテるかどうかっていうより、「知ってることがカッコイイ」とは思ってる。



でもそれは自己満足の世界なんだよね。男同士で「オレのほうが」「いやオレのほうが」って。

服とか興味のないものには勝ち負けもこだわりもないんですよね。



うんうん、最初から勝負してない。

そこのバランスが謎...。


カントクがね、仕事で海上自衛隊護衛艦のDVDを撮ってるんですよ。 ※海上自衛隊護衛艦のDVD
海上自衛隊の生活と訓練に密着したドキュメント『JMSDF FLEET POWER』シリーズのこと。カントクが映像を監修した。バンダイビジュアルより、これまでに4本リリースされている。

そんなマニアックなDVDが...。


ひたすらいろんな角度から護衛艦を撮ってる。それってものすごく寒い時期に青森での撮影だったのに、超うれしそうに基地まで行ってた。



『監督不行届』ではリニア・モーターカーの試乗会にも行かれてますよね。ふたりのテンションが全然違ってましたが...。

いや、だって...、リニアって楽しいかぁ(笑)!? 早いってだけだし、しかも実験場だから普通の人は住んでない山の中を走ってて、半分以上トンネル。「面白いけど、だから何だ...」っていう...。それに4年も応募して...。去年はカミオカンデも見に行ったんですよ。
カミオカンデ
謎の粒子ニュートリノの研究などに使われている施設。現在使われているのはより性能がアップした「スーパーカミオカンデ」。正式名称「大型水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置」(舌噛みそうです)。
【公式HP】
http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/doc/sk/index_j.html


見学できるんですか?

これも抽選でね。カミオカンデって宇宙光線が入らないように、まったく光がない地下に実験場があってね。水槽になってて壁面が全部反射板みたいになってて、ライトがいっぱいついてる。すごいんだけど、でも「うわー!すげー!...おわり。」みたいな(笑)。でもカントクはすごく興奮してた。そして地下坑道でも監督はラピュタごっこを...(涙)。



巨大建築物にはロマンを感じるみたいですね。ダムとかも好きですよね。


石原裕次郎の『黒部の太陽』って映画知ってる? DVDも出てないんだけど。オタクみんな好きなんだよね。 ※『黒部の太陽
黒部川上流に第四発電所(通称「黒四ダム」)を建設するための苦闘を描いた大作映画。監督は熊井啓


DVD出てないっていうのも貴重でそそられるのかも。みんなで上映会とかやってますよね。


もう私にはわかんない世界...。


あと不思議なネットワークがありますよね。カミオカンデも「見学行くぞ」って言ったらみんな集まって。


それまで普通に仕事してたのに、みんな突然「おー!」って(笑)。


カミオカンデは『エヴァ』の入ってるドックのイメージの一部なんですよね。


そうそう。地下の巨大空間。


ああ、なるほど! 水があって。


東京の地下空間の公開も監督も好きで行ってましたよね。


そうそう。洪水のときの放水用の巨大空間でね。素敵そうなんだけど、実際はものすごい埃っぽくて5分で口の中がベタベタになっちゃう。しかもすごく寒い。私本当に凍え死ぬかと思った。なのにカントクは嬉々として...。


カントクは電柱も好きですよね。電柱描かせるとすごく上手。



ああ、『エヴァ』にもいっぱい電柱出てましたね!

田舎に行ったとき、ふたりで資料用にあちこち写真撮ったのね。で線路を撮ったときに、私は曲がった構図で撮ったんだけど、カントクは時間かけて左右対称でまーっすぐ真ん中に線路が来るようにカメラもってきて、ゆーっくり「カチャ...」って撮ってた。


お互いの作風の違いが線路の写真に(笑)。



だから二人で同じ1台のデジカメ使ってても、どっちが撮った写真かすぐわかる(笑)。

廃屋とかも好きですよね。ちょっと子供っぽいっていうか。



子供だよー! だってジャックが噛むと、カントクってば「ジャック・ハリケーン!」とか言ってジャックを持ち上げて投げちゃうんだよ!? ジャック超イヤがってるのに「ジャックは男の子だから嬉しいにきまってる!」って!


可愛いがりかたも子供らしいんですね。小さい子がイヤがられても相手に手を出しちゃうみたいに(笑)。



ジャック、今日も3回転してソファーに着地してたよ...。


ジャックどんなネコに育つんだろう。



やはりオタ猫...。


キャー! 私のほうが一緒にいる時間長いからそれは大丈夫!


でもマイティ・ジャックって名前にされた時点でね...(笑)。 ※マイティジャック
『監督不行届』の用語解説によると、'68年放映の、日本初の大人を視聴対象にした特撮SFドラマ(円谷プロ制作)だそう。子猫がやってきた時、安野先生が「ジャック」の名を思い浮かべ、それにカントクが「マイティ」の名を足して(猫の額にアルファベットのMの模様があったから)この名に。


うちは妊娠中、お腹の子供が男の子ってわかったときに、出てきた名前の候補が「トト郎」とか「ゼー太」とかで。  ※「トト郎」とか「ゼー太」とかで 
トト郎の元ネタは解説するまでも...。ゼー太は『機動戦士ガンダム』の続編『Zガンダム(読み方は「ゼータガンダム」)』より。数字の「2」を「Z」に見立てたのだとか。

トト郎。ってそれ人間じゃないし(笑)!


カントクが子供に名前付けると怖いかも。



超怖いですよ!

『監督不行届』の最終回読むと、アンノ家の未来の子供のイメージは男の子なのかなって。



あーどうなんだろう。子供かあ...。カントクは「女の子だったらハーマイオニーみたいな子がいい」とか言ってるんだけど、ハーマイオニーは日本人同士の私たちからは生まれませんから(笑)! ※ハーマイオニー
ハリー・ポッター』のヒロイン。映画版を演じたエマ・ワトソンに悩殺された大きなお友達多し!

カントク、普段はあまり女性キャラのことは言わないのに珍しい。



頭が良くて性格の悪い女の子がいいって。ハーマイオニーはツボだったらしい(笑)。


神村さんのお嬢さんのお名前は?


すごく普通なんですよ。


そのほうがいいですよ。


カントクだったら、元ネタも誰もわからないところからもってきそう。


そうかもしれない...。


最終回では未来の子供にオタクの英才教育をする話が出てきましたが、今夫が息子に『パンコパ』だの『霧の中のハリネズミ』だの観せてますね。 ※『霧の中のハリネズミ
'75年公開、ロシアのアニメ作家・ユーリ・ノルシュテインの作品。道に迷ったハリネズミが森の中で様々な不思議に出会うという、詩的で幻想的な作品。アニメーションのオールタイムベストに選ばれることも多い傑作。


うちもこの間、懐かしくて『パンコパ』観かえしたんですけど、高校生の娘はほとんど全部台詞言えましたね。


すごいなー、子供は好きなんだね。トトロの原型みたいなとこあるものね。


今はジブリブームですけど、うちはLDの時代から何度も観せて。


英才教育だ! いいなあ! 今流行ってなくても、本当に面白いもの観て育ったほうが、大人になってからはいいと思う。


英才教育、いいのかなぁ...(遠い目)。



英才教育、よかったのかなぁ...(遠い目)。娘は小学生の頃は苦労があったみたいです。「うちの親はちょっと違う」と思ってたみたいで。今高校生だけど、オタクのカミングアウトはしてないみたい。

世間的には普通の女の子として生きている。


そうそう、普通の女の子としての付き合いがあるから化粧品の話とかしてるみたい(笑)。



親の蔵書にも手を出したり?

いやもう、夫に積まれてますよ。「読まなきゃいけない本」って。



課題図書ですね(笑)。


連載中、読者ハガキには「カントクくん可愛い!」って書き込みがすごく多かったです。以前の監督は決してこう言われるタイプではなかったと思うのですが。

パブリック・イメージはむしろ怖い人だったかも。


カントクを昔から個人的に知ってらした方は、お茶目な部分もご存じだったんですよね。



そうですね、みんなに慕われてて。うちのダンナは安野先生が描いたこの顔がすごいソックリだって言ってましたね。「眠いときカントクこういう顔してる!」ってとても感心してました。


ホント!? 嬉しい! そうそう、カントク今CMでてるんですよ。日産のティーダっていう車のCM。前まではカッコイイ外人が「上質のラグジュアリー」みたいな感じで出てたやつなんだけど。



うそぉ、カントクがー!? それ聞いてない!

撮る側じゃなくて出る側ですか?
※日産のティーダ
とても上質なコンパクトカー。本革シートなど内装がシックで素敵。カントク出演のCM、なかなかの紳士ぶりでしたよね! でも紳士になってもドライブのおともはアニソン&特撮主題歌でいてほしいです!


そう。台本見せてもらったら「金持ちそうな紳士が犬の散歩中にティーダを見かけて」っていうCMで、カントクの衣装が紺ブレに白パンツで犬はアイリッシュセッターかなんか連れてるんだけど、これがまた似合わないのよ(笑)。



金持ちそうな紳士...。それ、エメラルド・グリーンのトレーナー着てた時代のカントクには、絶対こなかった話ですね...。


安野さんに変身させてもらったおかげだ(笑)。そうそう、ダンナに「カントクの昔の面白い話ない?」って聞いたんですけど、昔カントクが仕事ですごく忙しくてフラフラだった時に、みんなが見かねて「とりあえずご飯食べてこい」って外に出したら、カントクもっとフラフラになって帰ってきて、ビックリして「どうしたの!?」って聞いたら「献血してきた...」って(笑)。


あははは! それ聞いたことある! お腹すいたから定食屋行ったら、まさにドラマのように目の前で交通事故があって、で「血が足りない!誰かA型の人いませんか!?」って救急隊員に言われて、「とりあえずオレA型だわ」って思って手をあげたら即連れていかれたって(笑)。


カントクってホントに人がいい。


すごい心のキレイな人ですよね。


子供みたいかも。逆に何も考えてないの。


そうね、好きなことしか考えてないかも。


私はしがらみとかで動いてるから、そうできたらいいよなって。だから乙女とジイやみたいになっちゃうんですよ(笑)!


安野先生はまさしく、しがらみの中で生きてきた人。


だから「ここでこういうこと言っちゃうと失礼だから後でこういうふうにしよう」とかすぐ考えちゃう。それで素直さに欠けるところがあるんだけど...。カントクは全然考えてない。


仕事には極限まで無理してると思うけど、普段は無理してない感じですよね。



長生きするよ、あの人は...。だって本当にずうずうしいのよ、要求が。なじみじゃないお店でも「これイヤだからこうしてくれないか」とか言ってすごいワガママ。

正直なのね(笑)。


おべんちゃらとかも絶対言わないタイプですね。



絶対言わない。

仕事ではすごく気をつかってるけど、自分のことにはねえ。



仕事の完成度に対しての執念はすごいのに。

それが最優先だから。ものすごい繊細なとこと、ずぶといとことあって面白い。でもそのへんが天才なのかもしれない。私が日常のいろんなことカントクに「しっかりして!」って言って、それでカントクができるようになったとしても、それはそれでカントクの天才性みたいなものを損なっちゃうみたいでイヤだよなあ、って思うんだよね。



愛だわー(しみじみ)。


結構男友達とかで「職場が忙しくて人と会えない」とか「周りが男ばかりで」とかで、別にヘンな人じゃないのに一人の人っていませんか? 女の人でもそう。普通にいい子なんだけど、出会うきっかけがなくて、っていう。

わかります。仕事の出会いは結局「今日はありがとうございました!」で終わっちゃうし。


学校みたいに毎日毎日会ってないと人柄がわからないものね。



あと、自分はオタクなのに普通の相手を捜してると余計に縁遠く...。

私もそれは思う。間違いのもとだ。



でも私、『監督不行届』このコマの普通男子の服の裾ひっぱりたい気持ち、それもちょっとわかるんですよ〜!

そうだよねー。「待って! 私も普通の世界に連れてってー!」ってね(笑)。でも私も普通の人とも付き合ってきて、それはそれで楽しかったけど、でも漫画を全く読まない人と、『モーニング』とかをちょっとでも読む人とだと、読んでいる人のほうが断然付き合いやすかった。サラリーマン的に、読んだら網棚に置いて帰っちゃっうってレベルでもいいから。



巻頭の大ヒット作が好き、とかでいいんですよね。


そう、読んでいることが大事。全く読まない人だと、普段の会話の中でちょっと漫画やアニメの台詞が言いたいときに言えない、っていうストレスがあった。例えば親戚のおじさんの面白い話とかって、友達には言えないじゃない? それと同じで「言ったとて相手にとってはどうでもいいよな」ってなっちゃうとね。


オタク相手だと共通点がみつかるのよね。


カントクのまわりにも独身いっぱいで。でも私の女友達を紹介して会わせても会話が成立しないのよ。お互いとっかかりがない。


カントクのまわり、なんかいい人なのに縁がない人いっぱいいますね。


みんな自分はちょっとオタクなのに、オタクじゃない人を求めるから。


女子は普通の背広のサラリーマン、で男子も普通のエプロンが似合う奥さんを探してますよね。


そうそう、そこにすれ違いが。幸せの青い鳥は身近にいるのに(笑)!


それにしても安野先生がカントクとつきあい始めたときは本当にビックリしました。


業界を震撼させましたよね。まさかダブル・アンノになるとは。運命だったんですかねえ。


私オタク業界で付き合ったのって本当にカントクが初めてなんだけど、こんなに楽だとは思わなかったよ...。今まですごく無理してたんだなあって。


安野先生、人一倍普通の女子目指してました。



同業者は必要以上に避けてたね。カントクと付き合い始めて私がすごい楽だなって思ったのは、『女帝』を読みたいって思ってた時にカントクが全巻買ってきてくれて、しかも「1冊読んでは相手に渡す」っていうのを二人で繰り返して1日過ごした時! それでもいいんだって思った。 ※『女帝』
退学に追い込まれた元高校生の主人公・彩香が、父との再会と同級生たちへの復讐を果たすため銀座のクラブホステスになり、美貌と才智によってのし上がっていく、というサクセス・ストーリー。面白いです! 作/倉科遼、画/和気一作。全24巻。芳文社刊。

普通の男子とは『女帝』で丸1日過ごせません(笑)。


カントクはわかってくれて、しかも買ってきてくれてる。そして『女帝』がふたり共通の楽しい思い出になって(笑)。



その後夜ご飯食べに行って二人で「『女帝』にカンパーイ!」って(笑)。普通の男子と付き合っていたときは、なんとなく相手に「1日中マンガ読んでた」って言えなくて、「エクササイズしてた」とか軽くウソついたりしてたんだけど(笑)。漫画浸りな自分に自分でダメ出ししてたんだと思う。カントクはそのへん気負いがなくて、そういうことを全く隠そうとしない。そういう意味で自分は不純であったなあと。 

カントクは両手ブラリ戦法だったんですね。
※両手ブラリ戦法
もしくは「ノーガード戦法」。原作/高森朝雄梶原一騎)、画/ちばてつやのボクシング漫画『あしたのジョー』(講談社)に登場。パンチをガードせず、相手の打たれ疲れを狙う戦法。ボクサー時代の故・たこ八郎(斉藤清作)の戦法でもある。


ほんとにそう。


まとめに入りますが、どうですか、オタクとの結婚というのは?

オタクとの結婚。楽しいですよ。「相手がオタクなことを楽しめるかどうか」ですね。自分は「知識はあってもそこまで思ったことはなかった」っていうことに対して、相手がこんなにまでこだわりを持っているなんて楽しいなあって思ったりする。勉強にもなるしね。全く自分にオタク的要素がなかったら、楽しめなかったかもしれないけど。


やっぱりオタクにはオタクが合う、と。



うん、素養はあったほうがいいと思う。

自分の視野を広げてもらっていると思えれば楽しめますよね。



そうそう。自分はそこまでマニアックには調べないし、探したり買いに行ったりヤフオクで落としたりとかはしない。でもあれば嬉しいし、見て勉強にもなるという物や情報を与えてくれる。相手のマニアックさを「そこまでやるんだ」って楽しめれば楽しいと思う。だって自分はそこまでやんないもの。

自慢するのも「自分はそれが好きだー!」っていう愛の現れだから許せる、みたいなね。



「すごいね、ホントぉ〜に好きなんだね...」って、ちょっと引きながらも感心しますよね。


そうそう、ホントにそういう感じ。


「オレの愛の深さをみてくれ!」っていうのに対して「あーよかったね」って一緒に喜んであげられればね。


あとオタクは「ひとつのものを好きになると、ずっと好き」っていう点では、あまり浮気の心配もないように思うのですが。
そうかも! だって服だって着替えるの面倒くさいくらいだからね(笑)。


一度これでいいって思ったら...。


ずっとそれでいいんだよね。他の女にエネルギー遣うくらいなら自分のやりたいことや趣味に費やしたほうが全然いいよ、っていう感じだよね。浮気したいんだけど我慢っていうんじゃなくて。


浮気の必要性を感じてないような。あとオタクは自分の趣味があるから、ひとりで放っておいても平気ですよね。ずっと一緒にいたいとか言わない。忙しい人にすすめたい(笑)。


そうそう、手間かからないですよね。


一緒に同僚とのキャンプにつきあえとか言わない。楽、楽。


それにしても『監督不行届』の巻末のカントクのラブラブのメッセージには涙がでました。今カントクにとって、安野さんが趣味のひとつになってるのかも。 ※巻末の監督のラブラブのメッセージ
単行本の巻末に収録された「監督、カントクくんを語る」のこと。「(奥さんは)自分よりも才能あると思うし、物書きとしても尊敬できるから一緒にいられる」「全力で守りたい」という安野先生への愛あふれるメッセージは必見!! 女子ならば一度は言われてみたい〜!


神村さんいいこと言いますね! ホントにそうだ! 「安野モヨコ」っていうのが今のカントクの最大の興味の対象なんだ! 特撮、アニメ、そしてそこにサード・インパクトで安野先生が...!



オタクとして、もっと知りたいもっと理解したいっていう。

カントク、ウルトラマンとかもずーっと好きだからなぁ...。私聞いたことあるんだけど、一度好きになると嫌いになったり飽きたりすることはないんだって。




カントクの愛の深さは世界一だから。『監督不行届』は是非一般の人に読んでもらって...。



世のオタク救済ね(笑)!
収録日:2005年2月某日 都内某所にて収録