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 幼女戦記

⚔️ ああ

 

01. 02. 03. 04. 05. 06.
00 01 02 20 21 40 41 60 61 80 81 1₀₀  □

⚔️ 第七六話           カルロ・ゼン 2012/04/12 01:07


戦場において心理というのは極めて重要な要素を占める。

古典的問題として、軍隊の質ということを議論してみよう。
一般的に言えば、実戦経験の欠如した軍隊はいくら装備が精強でも酷く脆い。
逆に言えば、兵站状況が劣悪で装備も未充足だろうとベテランを侮るべきではない。

理解できるかね?
もう少し補足説明しよう。

典型的な事例は、ゲリラ戦に求められるだろう。
少数の精鋭に対して、圧倒的な部隊でありながら討伐に苦労するという事例は珍しくない。
地形、彼我の戦力差、兵員の心理。

こういったものを熟知した野戦指揮官が1人いるだけで、羊の群れが獅子を殺しかねない。
羊とて、戦う事は可能だという事実を忘れるべきではないだろう。
それを失念し、戦場において痛恨の打撃を受けた事例はあまりに多い。

つまり、統率に際して心理を良く学んでおく必要性は自明だ。

なお、経験則からひとつ付け加えよう。
ネームド魔導師は、単独で戦場を支配するがそれは副次的な脅威だ。
真の脅威は、奴らが戦場に与える心理効果だと留意せよ。

心理効果を軽視すべきでない理由は前線に立てば理解できる。
例えば、大戦後半以降に合州国軍兵士が『聖女』のプロパガンダに慰められたという事実は忘れるべきではない。

或いは、逆に風評被害が生じた事例に言及してみよう。

戦場伝説だが、『ラインの悪魔』という風評によってあのパルトン閣下の部隊すら動揺したのだ。
実在しないネームドだろうと、これほどのインパクトを部隊に与えたという事を重々士官は理解しておくように。


では、解散。


某参謀教育過程における一講義。戦場における統制と戦場心理。


穏やかな風が吹く海岸線。
なだらかな砂浜は、海岸を散策する大半の人間の眼を和ませる美しい青さを保っている。
打ち寄せるさざ波は、白く透きとおり心を和らがせる。

そんな海辺を足早に歩く軍服の一団。
優しげな浜辺を忌々し気に見やる視線。
サラサラと流れるように白い砂の硬さを確かめるべく無造作に振り下ろされる軍靴。
彼らだけがその風景になじまない異物だった。

「・・・広すぎる。これでは、海岸線全域に部隊を張り付けるのは自殺行為だ。」

柔らかすぎる地質、広すぎる防御正面、そして遠浅の海。
おおよそ、防御陣地を構築して迎撃するには不適切極まりない条件。
攻めるに容易く、守り難い地点でありながら交通の要衝に面する海岸線。

「トーチカに鉄条網、パイクに地雷。一帯を防御するだけでどれだけ資材が必要なことか。」

美しい自然の産物を、人工物で埋め尽くさねば気が済まないとばかりに軍人らは吐き捨てる。
観光客にとっては理想的な地理条件も、彼らにしてみれば忌々しい制約要素でしかない。
ビーチで泳ぎたいならば、理想的な条件も戦争をやっている時は鬱陶しくてたまらないのだ。

特に、これからここで何が起こるかわかっている人間にとっては殊更に。

「機雷を敷設?いや、遠浅の海だ。杭の方が有効か?」

接近阻止、水際迎撃は相手の火力を考えると困難に過ぎた。
上陸してきたところに機動戦で叩くという発想は、旧陸軍が試み失敗している。
やはり、ペリリュー島の戦訓が示しているように組織的防衛戦を戦うしか戦える方法ない。

そこまで思案し、ターニャはいくばくか敷衍した思考を集約する。

歴史上、屈指の激戦として有名なオハマビーチ。
それを再現するべきかどうかという悩みの原因は、優先目標の順序にある。
条件講和に希望を見出すならば、絶対に上陸を阻止する必要があった。
逆に、コミーの大波を覚悟するならば上陸阻止は損得が微妙になる。
速やかに西側、最低でも合州国連合王国に国土を確保してもらう方が長期的には有利となるのだ。

まあ、どちらにしても自身の安全確保という点はゆるぎない最優先事項ではあるのだが。

問題は、どちらの方策を選択しようにも潜在的リスクがあまりにも高いことにある。

条件講和を勝ち取るために、抵抗して成功すれば一番理想的だろう。
だが、失敗すればどうなるか。
言うまでもなく、歴史に忠実に戦闘を行い歴史通りに負ければ帝国は分断されることになる。
別段、そのことはターニャという一個の個人にとって問題ではないがコミーの拡大そのものは脅威に違いない。
加えて、ノルマルディア方面軍で激戦に身を投じるという事は身の安全に深刻な問題を惹き起こすことだろう。

コミー対策を最優先した場合、率直に言って何が起こるかターニャも見極めることができていなかった。
歴史よりも合州国連合王国の戦力が温存されているために早期終戦の可能性は期待できる。
だが、或いは損耗を抑制しようと相手が考えれば補給が途絶えた東部の対コミー防壁が崩壊しかねなかった。
なにより、それはターニャにとって予測のつけようもない問題を惹き起こす潜在的な可能性がある。

このため、実に身勝手な戦略上のジレンマに悩みながらターニャは海岸線の視察を行っていた。
だが、即断する必要があることを経験上ターニャは十分理解している。
躊躇し、貴重な時間を浪費すべきでないという事くらいはターニャも学んでいるのだ。

「中佐殿、ロメール閣下がお見えです。」

だが、上官の招集にターニャは思考を打ち切った。
どちらにしても、仕事の時間である以上集中する義務があるのだ。
手抜き仕事しかできない悪徳業者とは違い、ターニャは仕事に誇りを有している。
言い換えれば、仕事は丁寧にやるものだった。

「すぐに向かう。」

視察を続けるように工兵隊の技官らに言い残し駆け足。
待ち切れなかったのだろう。

すでに、将校用外套を羽織った一団がこちらに近づいてきていた。
先頭に立って周囲に鋭い視線を飛ばしている将校は、良く知った顔だ。

或いは、現場を自分の眼で見たがる性格なのかもしれない。

「どうみる、中佐?」

「遺憾ながら、手持ちの全戦力を張り付けても防衛しきれません。」

視察現場に現れた上官に対して、ターニャは素直に勤勉さを認めていた。
恣意を挟むことなく、少なくとも客観的事実を報告し結論を述べる。

この場において、上司が視察を行っている以上は自己の力量を疑われない方が重要だった。
なにより、上の本音が聞ける機会というのを思えば防衛構想を聞き出したかった。

「要塞化が間にあわないと見るのかね?」

「いえ、人数の問題です。」

それ故に、ターニャは観察した結果を淡々と報告する。

いくつかある問題点。
資材や時間の問題は軽視できない要素であることに違いはない。
だが、より深刻なのは兵士の数だった。
コンクリートや希少資源はイルドアを含めて占領地から徴発し得るだろう。
しかしながら、肝心の人的資源は本国の枯渇しつつあるプールに依存しなければならないのだ。

「そうだろうな。とてもではないが、広すぎる。」

「敵損耗の最大化を図りつつ、遅延戦闘に努めるのが最上かと。」

軍事的側面だけ見れば、少なくとも敵を拘束する必要があった。
結局、ターニャは自己保身と予期困難なリスクを評価できないと判断。
であるならば、純軍事的観点から防衛計画を立案する方が総合的にはリスクが乏しいと仮定した。

無論、この判断は流動的なものであり決して確定事項ではない。

「やはり、それしかないか。」

「残念ながら。せめて、私の大隊があればいくばくかの衝撃力は確保できたのですが。」

だが、ロメール将軍ですら消極的な防衛しか為し得ないと考えているならばやはり最善を尽くしつつ保身が正解だろう。

ある程度の会話。

そこから、状況の大まかな概要を掴んだターニャの結論は芳しくない現状を改めて確認するに留まる。

「無い物ねだりは無意味だ。できることをするしかあるまい。」

「はっ。」

ビジネスと同じだ。
できることを、できる手持ちの材料で為す。
結局のところ、人為を為してしかる後に天命を待つしかないのだ。
それは、究極的には神の見えざる手だ。

「地雷を敷設するとすれば、どう見る?」

「…、んん?っ、失礼しました。広域に散布する必要があるでしょう」

一瞬、自らの思考に違和感。
しかしながら、乱れる思考を咄嗟に破棄。
上官の眼前で醜態を晒すことだけは何とか回避。

こんなところで、評価を落して使い捨てされるのは御免だった。
気を取りなおし、ターニャは自分の仕事に専念する。

「説明を。」

「はっ、小官ならば上陸に先立ち複数のコマンドを空挺投入します。それを足止めするためにも地雷は必須です。」

航空機の性能向上が急激に進んでいる以上、迎撃は困難だと判断している。
なにより、散々敵後方への浸透強襲を帝国が行っている以上有効性は誰もが知っていた。
コンバットプルーフされた戦術だけに、相手方が活用してくると考えないわけにはいかない。

「どちらにしても、可能な限りの手腕を整える必要があるかと。」

守るつもりで、防御を固めるならば。
偏執的なまでに念に念を入れる必要がある。
どちらにしても、やる以上は仕事で手を抜く訳にはいかなかった。







南方大陸戦線の平定なる。

頑強な抵抗を続けていた帝国軍南方大陸派遣部隊だが、遂に満身創痍となり継戦を断念。
帝国軍司令部が投降を決断し、パルトン中将はそれを受け入れた。
現在のところ、合州国連合王国を主力とする同盟軍は再編に追われている。

共和国領土の奪還に際しては、自由共和国軍の参加を強くド・ルーゴ将軍が希望。
一方で、第二戦線の形成と早期の大陸侵攻に備える必要性から戦訓の取り入れが望まれている。

このような状況下にあって、パルトン司令部に出頭したドレーク少佐は司令部に即座に通された。
形式上、連合王国軍魔導師部隊の奮戦に対して参謀長が謝辞を述べ昇進の推薦を行ったことを通告。
それに対して、ドレーク少佐は型通りに応答し一通りの形式を完了する。

だが、わざわざそんなこと程度で呼び出すほど暇な司令官ではない。
何かがあるのだろうと、ドレーク少佐も覚悟はしている。
そして、やりとりが終わった瞬間にパルトン中将が口を開き本題を切りだした。

「ドレーク少佐、昇進だ。そして、貴官には新設する合同部隊を任せたい。」

「新編の合同部隊、でありますか。」

ドレークの声に、明らかに忌避する感情が滲む。
辛うじて、イルドアでの損害から部隊を再編し使い物になると判断した矢先の話だ。
加えて合同部隊という響きは、詳しく知らされていな時点で十二分に嫌な予感をもたらす。

パルトン中将とて、ドレーク少佐の心情は理解できる。
誰だって、手塩にかけて鍛え上げた部隊を取り上げられて新編のお荷物を与えられれば憤るだろう。
だが能力がある以上使い尽くすことに躊躇はなかった。

「そうだ。合州国連合王国という同盟国の合同部隊だ。」

実のところ、パルトンにとってもこの件は面倒な話である。
フィラデルフィアのお偉方とロンディニウムの気取った連中が考えついたのだろう。
政治を戦場に持ち込もうとする連中の考えることは、理解しがたかった。

「同盟国が轡を並べて戦うというのだ、実にすばらしいと誰かが考えついたらしい。」

鼻で笑い飛ばしながらも、苦々しい表情でパルトンは続ける。

プロパガンダだ。」

本国からの要望。
世論対策と、厭戦感情への対策。
気に入らない要素が付きているのは、パルトンとて否定しない。

まあ、利用できるとも考えているのだが。

「政治ですか。」

「半分は政治だが、もう半分は必要性あってのことだ。」

「必要性ですか。」

警戒心も露わにドレークは尋ねた。
そもそも、おかしな話だった。
パルトン中将と言えば、政治絡みの要素を持ち込まれることを殊更嫌うタイプの将軍だ。
いわば、古いタイプの軍人である。

そんな人間が、政治からの要請を飲むほどの必要性となると、嫌な予感しかしない。

「今更だが、合州国軍の練度底上げは必須だ。」

「御尤もなことかと思われます。」

・・・勘がどれだけ悪くても、ここまで言われれば誰にでも理解できた。

というか、パルトン中将が切実に悩まされている問題を知っていれば予期すらできる。
辛うじて勝利したとはいえ、物量に物を言わせた力押しは損害が多すぎるのだ。
なんとか技量を向上させたいとパルトン中将が願っているのは周知の事実である。

確かに、軍の指揮系統上混合部隊は厄介だろう。
加えて面子の問題が介在する以上、簡単には乗り越えられない障壁も多い。
だが、逆に言えばその厄介事を政治家が珍しく引き受けてくれるとすれば?

パルトン中将の様に手段を選ばない将軍ならば、自軍の教育のためにドレークたちをこき使う事を辞さないだろう。

「訓練は過酷なものになるかと思いますが。」

「一向に構わん。手段を選ばず、何としても使えるよう仕上げてみせろ。」

観念したドレークに対するパルトン中将が浮かべる満面の笑み。
忌々しいが、厄介事をなんとか遣り遂げねばならないという事をドレークは諦観と共に受け入れる。
一方で、本意でなくとも任務である以上気分を切り替えて実現のために最善を模索し始める。

「それで、どの程度の戦場が想定されているのでしょうか?時間の猶予は?」

訓練に際して、重要なのは2点だ。
どの程度の練度が要求されているのか。
要求される練度に至るまでに、どの程度の時間的猶予が与えられるのか、である。

だが、ドレークにとって不幸なことに彼に求められる要件は過酷極まるものだった。

「強襲上陸戦の先鋒だ。上は、火急的かつ速やかな投入を求めている。」

本来、最精鋭が充てられるべき困難な任務。
ドレーク自身、自分が今の今まで手に塩かけていた部隊で辛うじて適合するかと悩むほどだ。
それを担えるレベルにまで火急的かつ速やかに錬成?

最終的な目的は正しかろうとも、考えた人間は素人に違いないだろう。
これは、明らかに無謀な計画に違いない。

「・・・生半可なことでは叶いません。訓練用弾薬や費用は御考慮願います。」

「一切考慮する必要はない。こちらで手配しよう。」

だが、同時にパルトン中将にしてみれば無謀だろうと何だろうと戦力になるなら歓迎すべき計画らしい。
よほど自軍の不甲斐なさに激昂していた中将からしてみれば、戦力として使えるという事以外に勘案する要素はないのだろう。
つまるところ、どれほど抗弁したところでひっくり返ることはないのだ。

「・・・微力を尽くさせていただきます。」





神々というのは、実のところ人間の善き営みを好まれる。
超常の世界において、その物差しを満たす者は神々に愛されえた。
善き人の隣人愛を保ち、ひた向きで敬虔な努力を尽くせば、最後に神の勝利が約束されるのだ。

デグレチャフという罰当たりな個体を再教育し、信仰を世界に復元せんという試みも本来はそのような観点から始まっている。

全ては、愛から始まっている。
だが、難しいことに愛というのは伝え方が問題だった。
いくら善導するべく導こうとも、事態は意図せぬ方へ流れていくのだ。
これまでの経験則が全く通用しない新たなイレギュラー。

担当する存在達にとってみれば、意図せぬ結果の連続というのは看過し得ないイレギュラーだ。
対応の必要性を認めた彼ら。
だが、奇跡をもってしても難題が山積していた。

『どうすれば、改心させることができるだろうか?』

存在らが集い、協議する中で直面したのは各種アプローチが悉く有効に機能しないという現実だった。
従来通りの対応では、イレギュラーに対応できていないというのを誰もが認めている。
教育係を派遣すべきかという点から、人々の信心を司る人間に語りかけ言葉にさせたがデグレチャフは聞き流したらしい。
本格的に、何人かを派遣し延々信心を回復するように調伏させてまでいるが効果は微弱だという。

ここまで語りかけさせれば、少しばかり戸惑えども先人たちの様に声に聞き入るはずであるのだがそういかないのだ。
状況が物語るのは、あのデグレチャフはこちらの声を聞けないのではないかという疑念である。
神々の声を聞くことを忘れた人という種が、そうなるのではないかという危惧すら湧きあがらざるを得ないほど深刻な問題である。

此処に至り、新たな問題としてそれは無視できなかった。

『人は、神々の声を今もなお聞けるのだろうか?』

この疑問を確かめるべく、幾度か遣わされた存在らによる結果。
それは、疑問がある程度蓋然性をもった脅威として存在することを示唆していた。
人々は、これまで想定された以上に神々の声を聞く力を低下させ極端になるとデグレチャフ並みに低迷させてしまっている。

一体、何故このような事態になってしまったのかという問題の理解と解決策が求められるのは言うまでもない。
いかにして、人に再び神の声を行き渡らせるべきかという難題はどの存在にとっても容易に解決し得るものではない。
なにしろ、これまでは人々に語りかけるということを前提として全てが行われていたのだ。

『前提の崩壊』

これは、重大な危機ですらあった。
そのために、これに対していくつかのアプローチを試みる必要性は認知されている。
しかし、有効な効果を如何にして見出すかという点で彼らは戸惑うしかないのも事実だった。

だが、一つの大陸に眼を移した時、存在らは歓喜した。
そこの人々は、純粋に神々の声に耳を傾けていた時代の純粋さを保っているのだ。
そればかりか、今なお戦火を憂い祈るという敬虔さを持ち合わせている。
手を携え、難題に取り組まんという敬虔な勤勉さは称賛に値した。
信仰を保ち、敬虔に、勤勉に働く戦士達。

そんな時、1人の少女が存在らの眼を惹いた。

彼女の名前は『メアリー・スー』。

まさに、神々が待望して久しい存在だった。
彼女は愛くるしく、素晴らしい才能の塊だ。
だが、それ以上に劇的に存在らに歓迎されたのは敬虔さである。

非人間的なまでに信仰に身を捧げた、と人間ならば評する信仰心。
だが、存在らにとってはそれが歓迎すべき誠実さに思えてならなかった。
常人がまどろむ中での、卓越した存在。

それに気が付いた存在は歓喜する。
これが、新たな福音をもたらすだろうと信じて。
彼女ならば、迷える子羊を導けるだろうと悟って。
なにより、彼女ならばあのイレギュラーを改心させることもできるだろうと期待して。

問題を解決する光を手に入れたと、歓喜した存在ら。
その光は、闇を祓う事が期待されてやまない。

かくして、『聖女』と讃えられるメアリー・スーは歴史に名を記すこととなる。
神々に愛された彼女の物語は、彼女が軍に志願する日から始まることになる。
史書にはその理由は、一切記されていない。

だが、それはすべて存在らの促しによる。
存在らは、彼女を祝福し同時に導くことを喜びと共に行った。

歯車はこうしてようやくそろい始める。

志願し、合州国軍魔導部隊に配属されたメアリー・スー
彼女は、決して弱音を吐かなかった。
彼女は、決して努力を惜しまなかった。

そのひた向きさから、彼女は訓練部隊の誰もから愛されていた。
そして、そのひた向きな努力と敬虔な心は敬意すら払われた。
この逸材に対する軍上層部の反応は、極めて好意的とならざるを得ない。

そして、最適な配置を考えていた時に、ふとパルトン将軍隷下で進展しているプロジェクトに誰かが思い当る。
合州国軍と連合王国軍の合同部隊創立計画は、極めて政治的な要素が強い計画だ。
だが、プロパガンダ部隊であると同時に実利を求める観点からも決して能力を軽視しているわけでもなかった。

それ故に、看板に悩むことになっていたのだが。
だが、メアリーは完璧だった。
軍人としての技量は要求水準を満たし、人格者という点も好要素として働く。
なにより、彼女を知る人間は全て彼女にある種の『カリスマ』が存在することを疑いもしない。

それが、如何なるものかという事を史書は語ることはないだろう。
しかしながら、当事者たちは口をそろえてメアリー・スーを賛美する。
彼女こそが、あるべき信仰の体現者であり『聖女』である、と。
合州国の善き意図を体現するものである、と。

故に、彼女は短期錬成用の訓練課程を修了すると同時に南方大陸方面へ配属されることになる。
配属先は、新設される合同任務部隊、第118戦術魔導任務群。
彼女は、そこにおいてさらに鍛錬を重ね前線の兵からも承認されていく。

後にノルマルディア上陸作戦において、最先鋒を担い激戦を経験する部隊。
その新編に際して、メアリー・スー魔導少尉は1人の小隊長として赴任し後には敬意を集めることになる。




あとがき
(́◉◞౪◟◉)ハハハハハァ!
ちょっと、きついけど何とかなりました。

デグさんに天敵投入でのたうち回ってもらいたいです。
メアリー・スーに御加護を。


後書きはもう少し、書き足すかもしれませんが取り急ぎ。
書き足しました。


ZAPの嵐が吹き荒れています。
メアリー・スーは神々に愛されているようです。
ターニャ・デグレチャフは神々を悩ませているそうです。
ハーバーグラム閣下の机が昇天されました。
グランツ中尉とヴァイス少佐は平常運航の様です。
ドレークさんが昇進されました。

神々の黄昏中…

次回、『初めての戦場』

メアリーの初陣にご期待ください。
ZAP