幼女戦記
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ああ
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第三十三話 カルロ・ゼン 2012.04.12 02:18
闇よりもなお暗き存在 其は、汝にまとわりつかん
血の流れより紅き存在 故に、その誉れを讃えん
混沌の海にたゆたいし たまゆらの安寧
色なき平安 約束された再生と創造
笑え。
朝のナパームの香りは、何物にも代えがたい。
さあ、検疫の時間だバイ菌ども。
そうは思われませんか、中佐殿?
Xday-1y2m11d
第17研究室
帝国軍陸軍大学における合同戦略研究会議
「以上により、戦線が進むにつれて市街戦に至る可能性が極めて高い。」
机の上に広げられている戦況図は、帝国が少しずつではあるが共和国領に押し込んでいることを示している。
未だ、両軍共にわずかな不毛の地を争っている状況ではあるが。
しかし、微々たる歩みでも進歩は進歩。
なにより、押し込まれていた状況から反攻を企画できるまでに持ち直したのは大きい。
そして、そのために共和国領内での各種戦闘が現実のものとなり始めた時点で帝国は困惑することになっていた。
『市街戦』だ。
重要拠点は、防衛の要衝かつ交通の起点として共和国軍が放棄するとは考えにくい。
そして、悪いことに市街地には一般市民も多数居住している。
一部は避難や疎開させられるのだろうが、都市機能を維持する事が可能な程度の市民は残留していると考えざるを得ないだろう。
「そこで、参謀本部より提示された命題が市街戦への対応だ。」
戦時国際法は非戦闘要員を巻き込む形での市街戦に極めて批判的だ。
本気かどうか知らないが、トリガー条項として非戦闘要員を意図的に巻き込む形で攻撃を行った国家に対する無条件の経済制裁の権利すら認めている。
実行するかどうかは自由だ。
国際司法裁判所で議論し、認定されればという条件付きとはいえ列強間に囲まれている帝国にしてみれば厄介な条文である。
だからできるだけ大義名分を他の列強に与えない形で制圧する事が要請されるのは時間の問題となる。
もちろん、時間稼ぎに過ぎないだろう。
なにしろ地政学上介入するには十分すぎる核心的利益がそこには介在しているのだ。
・・・だからこそ、すこしでも介入引き延ばしが図られるべきでもあるが。
「率直に申し上げて、非戦闘要員を巻き込まないとなれば攻囲して兵糧攻め程度しか選択肢がありません。」
居並ぶ将校らからなる面々にしても、要請自体が如何に現実離れしているかはよく理解している。
だが、無理難題だろうとも戦略上やむを得ない要素として糞ったれと罵れる程度に現状を理解できてもいる。
だからこそ、オブラートと修辞学に包まれた表現で無理を言うなと表現する。
攻囲して兵糧攻めと言うが、悠長に都市が陥落するまで包囲し続けるなど困難極まりない。
敵の3倍近い兵力を張り付けておくだけで兵站線への負荷は想像を絶する。
いや、戦略的にみれば大部隊を拘束されるに等しいという問題付きでだ。
共和国領内で都市にぶつかるたびに帝国軍は大きく戦力を張り付けざるか、攻囲を断念するかを決断しなくてはならなくなってしまう。
「いっそ、前線を動かさず敵が耐えきれなくなるまで防衛に徹する方がこの種の問題からは解放されるかと。」
純粋に戦力集中原則のみを考慮すれば、侵攻よりも防衛の方がマシ。
軍内部では、一つの仮定にすぎないにしてもこう考える士官も少なくなかった。
彼らとて、勝利を望まないわけではないが手足を縛られて戦争をやれると考えるほどには頭が沸騰してもいない。
「協商連合でやれたではないか。」
「国力差をお考えください。それに、そんなことをしているから北方方面に戦力の多くが拘束されている。」
なにしろ、他に選択肢がないがために北方で戦力の大半が拘束されている。
兵站線の負担は、開戦前の想定を大幅に超過するに至ったほど。
国力・人口で圧倒している小国相手でこれだ。
列強間の大戦では、もはや現実的な方策とは言い得ない。
「・・・失礼ながら、この種の議論に意味はあるのでしょうか。」
そんなときだ。
かわいらしい声が、可愛げのない平坦な口調で、物騒なことを呟く。
通常ならば、叱責されてしかるべき内容の発言。
しかしながら、発言者であるターニャは別段問題がないと信じていた。
「はっ、包囲して兵糧攻めというのは中世や良くて前近代の悠長な攻城戦であります。」
ウィーン包囲とか、ナポレオンによるイタリア遠征とか。
そんな時代の戦法で近代戦を戦う軍隊とはありえないだろう。
そんな軍隊で戦争をするぐらいならば、戦争をしない方がよっぽどましだ。
「で、あるならばです。」
もちろん、現実的に選択肢が乏しいのはわかる。
だが、そんなことは全員百も承知している問題なのだ。
そんなわかりきったことを議論するために集まっているのではない。
ブレインストーミングもできないのであれば、法律の穴を掻い潜るほうでも探す方がよほどましだ。
実際に実行するかどうかは別の問題としても、議論に際してありとあらゆる可能性を検討しないのは手落ちもよいところ。
曲がりなりにも知的教育を受けた一個人として、不誠実の誹りは免れ得ない失態だ。
ならば、議論のための議論でもいいから別方向からのアプローチを考えてしかるべきだとターニャはシンプルに確信していた。
「いかにして市街戦を合法化するかを考えるべきではないでしょうか。」
市街戦が国際法で制限されている?
だから、市街戦以外で攻略する方法を模索するというのは相手のルールで勝負するようなもの。
極言してしまえば大切な商取引を相手の本拠地で交渉するようなものだ。
それでは大抵勝てない。
むしろ、局面をひっくり返して自分の本拠地に持ち込んで交渉を行うべきなのだ。
つまり、いかにして市街戦を合法化するかという視点の転換も議論としてはありではないか。
いや、もちろん実戦で行うのはイラクやアフガンをみれば御免蒙ること甚だしいが。
「・・・デグレチャフ学生。陸大では戦時国際法の教育課程がないのかね?」
「いえ、履修いたしました。大変興味深い内容だと認識しております。」
法律は学生時代に法学(憲法論含む)と民法A・Bを履修して以来だった。
一応、国際関係論や国際行政学で国際法も齧っていたが。
そういう意味では、久々に法律という文明の統治者を学ぶ機会が与えられたことは純粋に楽しかった。
「・・・では、その上での発言かね?」
「はい。」
そして、当然ながら如何なる法律にも解釈の余地というものは多分に残されているのだ。
だからこそ、米国の様な訴訟社会で弁護士が多数活躍して訴訟合戦が盛大に繰り広げられる。
法律というものは、要するに解釈と運用によってできることとできないことがいくらでも変わるのだ。
それこそ、どこぞの島国平和国家なんて軍隊の保持をしていないと言いながら立派な兵器を多数備える不思議国家になれるほどに。
まあ軍隊放棄するのに比べれば若干マシな判断とは言え法律解釈はかくまでも幅広く行えるのだ。
「解釈の問題であります。国際法が明示的に禁止した行為以外は、解釈によって制限されているにすぎません。」
「具体的には?」
「一例にすぎませんが、“軍隊は非戦闘要員の存在する区画に対して無差別の攻撃を禁じる”という条項があります。」
これだけみれば、非戦闘要員が多数居住する市街地での戦争などできないだろう。
だが、逆に考えるのだ。敵も同様に制約されるのだと。
「これは一見すると攻撃側を制約する条項でありますが、当然防御側も制限を受けるものです。」
「・・・なるほど。それで?」
続けることが許されるので、続ける。
まあ、法律論争なんて半分はこじつけと言いがかりだ。
裁判所が最終的にその真偽を決定するとしても、国際法は国家間の解釈によって大幅に左右される。
「戦時国際法には、非戦闘要員の保護義務があります。そして、そのために万全の手段を尽くすことが求められます。」
言い換えれば、非戦闘要員が居住する区画に少数部隊を潜入させて攻撃を受ければどうなるか。
流れ弾が一発でもあれば、それだけで大義名分を創造することも可能だ。
まあ、これは極端なやり方。もう少し、正当性が強いやり方がある。
「あるいは、敵に非戦闘要員が不在と発言させれば制約は一挙に解決するかと。」
「何?」
「最後の市民一人に至るまで抵抗する等の発言であります。これで、市民一人まで民兵と解釈すれば捕虜としての権利も認めずに済みますが。」
・・・北朝鮮が全国民を兵士にしたと言ったから、兵士なら吹っ飛ばしても戦争犯罪じゃないというくらい無理やりな解釈。
とはいえ、極論だが法律解釈を突き詰めていけばある程度条理を捻じ曲げることも可能なのだ。
もちろん、正義や公平という概念が捻じ曲げられているのだが。
しかしだ。
そもそも神とか悪魔とか存在Xとかそういう存在がのさばっている世界だ。
正義とは何か、ということを突き詰めて考えればむしろ戦争がある世界を規定する奴の方が邪悪ではないだろうか。
つまり、私は善き一人の個人として義務を果たすに過ぎない。
QED
Xday
一介の少佐を軍団長直々に呼び出すという事は、めったにない。
だが、滅多にないという事を持って喜ぶのは難しいだろう。
少なくとも、今後も自分がこの化け物を呼び出す機会があるかもしれないという事なのだ。
可能性の話に過ぎないと言われたところで、気分がはずむはずもない。
「はっ。」
目の前で姿勢を正す化け物を極力直視しないようにしつつ、仕事と割り切って相対する。
魔導師という存在は、ただ人からすれば異質な存在だ。
人間が独力で空を飛び、魔導の力で持って現世に干渉する。
理屈はともかく感情が付いていけない。
だが、目の前の少佐は理屈すら理解できないのだ。
発想が、枠組みが、あり方が全て歪んでいる。
「貴様に方面軍司令部から特命だ。」
齢が一ケタで任官。
聞いた時少年兵というやつかと笑ったが、出会った時の第一印象は戦闘機械だ。
即座に認識を訂正したが、未だに理解しきれたとは思えないのだ。
銀翼突撃章保持者にして戦闘のために生み出された妖精という前評判は字句通りの意味に違いない。
「1422を持って特命が発令される。」
簡単な野戦教導を命じたところ、信じられないことに夜間に敵前進壕への肉迫奇襲を教導した。
迎撃戦に際しては、真っ先に突出した戦果をあげる。
損耗率は、この戦場で他のどの部隊よりも低い。
まったく、これだけ聞けば完璧な軍人だろう。
完璧すぎる。
非難しようがないほどの正論と実績。
それ故に、こいつを止められない。
レルゲンという中佐が排除を試みて失敗したという話も納得だ。
いや、それ以前に法務士官らが手放したのも、外務省が諦めたのもそこに原因がある。
「速やかに、後方のアレーヌへ浸透した敵魔導師部隊を排除せよ。その後友軍と合流しアレーヌ制圧に当たれ、以上だ。」
後方でアレーヌ市へ共和国軍魔導師が降下。
完全に警戒の裏をかかれた形だ。
おまけに、パルチザンが暴動に発展。
アレーヌ市を制圧できねば鉄道が使えず、鉄道が使えねば兵站が途絶える。
それは、つまり飢えるということだ。
そうなれば、戦争の行く末は子供でも明瞭になる。
それだけに、上層部は生半可な覚悟ではない。
いや、すでに覚悟を決めたようだ。
必要とあれば、アレーヌ市を灰燼とすることも辞すつもりはないらしい。
アレーヌ市に避難命令と夜間外出禁止令が即座に発令されている。
渡された計画書通りであれば、素直に叛徒が投降しない場合アレーヌごと『適切に処理』するつもりらしい。
そして、それの一助に使われる程度に彼女は政治的に信頼されている。
なにより、恐ろしいまでに有能だ。
「何か疑問は?」
「敵戦力を。」
「最低でも大隊規模。」
その尖兵となるのが、203という魔導大隊だ。
魔導師という都市制圧戦の障害を排除するために投入される。
もっとも、上としてもアレーヌを焼くという事には躊躇があるようだ。
砲兵隊や航空部隊の出撃は用意が命令されたばかりで、即時実行には至っていない。
だから、というべきか。
一応のアリバイとして、というべきか。
203によって敵魔導師部隊排除後、降伏勧告が行われるという。
問題は、アレーヌ市民がこれで戦意喪失しなければこちらも後が無くなるという事。
「構成は?」
「少数の共和国軍魔導師以外は民兵だ。多数のアレーヌ市民が犠牲になっている。」
そして、恐るべき事実はもっと身近にある。
目前の魔導少佐は国際法に卓越した見解を陸大時代に発表していた。
この場合の卓越とは、少々通常とは意味合いが異なる。
極論してしまえば、今日の様な事態を予期して解決するために悪魔的な頭脳を持ち合わせていたということだ。
なにしろ、アレーヌ市民の犠牲という軍事行動の大義名分は、彼女が発案したと私は知っている。
戦務のゼートゥーア准将から一切合財を説明された上で、彼女を預かったことをこれほど後悔するとは。
あの野郎、先輩の胃をもう少し大切にするべきだ。
「何とも痛ましい。ところで他愛のない囀りですが、パルチザンがいると耳にいたしましたが?」
「耳がよすぎるのも困りものだ。何かの音を聞き間違えるのだからな。」
「では、我々の敵は、共和国軍なのですな。」
あくまでも、あくまでも自分達の敵は共和国軍かと確認してくる士官などいるだろうか?
普通の士官ならば、そのことに疑問すら抱かないだろう。
ライン戦線において、敵と言えば共和国そのものを意味するほどなのだ。
「当たり前ではないか。陸戦条約を順守していない連中だぞ。直ちに非戦闘要員を保護せねば。」
だが、だからこそ敵という言葉を再確認してくるということは。
何を意味しているかを明瞭に理解していなければできることではない。
「大舞台ですな。晴れがましく、衆寡敵せずに時間を稼げとでも?」
「おやおや、少佐。勝利かヴァルハラかを選べるのだ。好きなものを選びたまえ。」
「殲滅して勝てという御命令でしょうか。」
まあ、確かにそう解釈されるのも無理はない。
広域殲滅戦を理論上法的に制約されることなく実行する以外に、勝利し得るか。
つまり、大量殺戮者になる様に命じているようなもの。
戦闘ですらないな。
陸大が法学解釈を何処まで間違っていないか次第だとしても、明らかに虐殺を前提として立案したとしか思えない計画。
いや、彼女自身が関わった計画という噂も聞く。
この表情、この余裕。
あながち、噂というやつは間違っていないかもしれない。
そう思わざるを得ないほど、非人間的なのだ。
「ああ、それと、昨日1100を持ってアレーヌ市に避難勧告が出されている。だがすでに、同市は完全に制圧されたと見てよい。」
「それはつまり?」
「全て、排除せよと上は言っている。法的には共和国軍部隊だけがそこにいる。」
率直に言ってしまおう。
隠す意味もほとんどない。
なにより、この戦闘機械じみた軍人に必要なのは単に許可と命令なのだろう。
ルールは遵守するが、逆に言えばルール以上のことは絶対に行わないのだ。
「最悪ですな。我々は、行くも地獄、引くも地獄ではありませんか。」
口でこそ、こう嘯く。
が、ならば何故笑う?
・・・その、歓喜の笑みは何だ!?
口元から覗く牙は一体何だ?
どうして、そうも、嬉しそうに笑う?
「・・・都市制圧戦だ。時間との戦いだな。」
一瞬、たじろいだのを誰にも気がつかれていないとよいのだが。
そう思いつつ、軍団長は明確な恐怖を彼女に感じていることを自覚する。
「何、同市は完全に制圧されたのでありましょう?ならば、都市区画ごと蹂躙すればよいではありませんか。」
「少佐?」
「民間人がいれば、制約となりましょう。ですが、完全に制圧された以上、心おきなく。」
心おきなく何ができるというのか。
心底、そう問いかけたい気持ちを抑え込む。
「しかし、残念なことだ。」
これで、賽は投げられたのだろう。
おおよそ、投げ手にとってこれほど胸糞悪い賽もないのだろうが。
「ええ、本当に、本当に残念で仕方がありません。ですが、我らは軍人。命令とあらば、麗しのアレーヌとて、焼かねばなりません。」
悪魔め。
ゼートゥーアの奴め。
奴ら、戦争に勝つためには何でもするつもりらしい。
文字どおりの意味で、ありとあらゆることを為すということ。
本気で、本気で狂って戦争に勝つつもりだ。
いくら軍人とはいえ、壊れている。
「・・・軍人になど、なるものではないな。」
「ええ、全くもってその通りであります。ですが、誰も彼も思うように生きられるわけでもありますまい。」
その通りだ、デグレチャフ魔導少佐。
しかし、貴官ほど軍人が天職であるのもいないだろうよ。
あるいは、地獄のライン戦線が貴様にとって安住の地なのやもしれん。
呼び出されて、出頭してみれば出撃命令。
対魔導師戦闘の命令で呼び出されるとは何事かと思えば、後方の重要拠点に浸透した敵魔導師の排除命令。
あと、敵魔導師のほかに大隊規模の民兵が合流しているらしい。
まあ、これを叩き潰すというのが今回の命令だ。
そんな命令でわざわざ方面軍が呼び出すのだから、思わず何度も念押ししてしまった。
本当にそれだけだと思った時は、思わず笑いたくなるのをこらえた程だ。
別段、さほども難しくない。
いや、むしろ前線付近を離れる最高の好機。
そう判断して、即座に行動を開始するべく大隊司令部へ駆け込んだのがつい先ほど。
・・・渡された命令書にどうにも気になるところがあるとようやく気がつく。
法的には真っ白なのだろうが、無差別戦略爆撃の可能性が示唆されているのはどういうことだろう?
敵魔導師排除後、残存部隊が投降しない場合の手順がすごく怖い。
まず、榴弾や爆裂式で石造りの建造物をできるだけ破損させる。
そうすることで、建造物内部の可燃物を露呈させるのだ。
後から、焼夷弾を中心とした空爆だろうか。
こんな規模で行えば、アレーヌとドレスデンの共通点ができ上ってしまう。
・・・・・・下手をしなくても、虐殺だ。
そうなれば、私も戦犯にノミネートされかねない。
そんな危険は御免蒙る。しかし、それは帝国が負けた時の話。
仮に敗北しなければ、ここで命令を拒否したところで軍令無視と敵前逃亡えとせとら付きで銃殺だ。
なにしろ、命令は命令。
そして、現時点では全く問題のない命令だ。
拒否できる根拠はないし、危惧する理由もない。
上申しても相手にされるかどうか。
極東軍事裁判は法の遡及適用すら為されている以上、人道的に行動しなくてはならないだろう。
いや、それ以上に多数の人から後ろ指を全く指されないように行動する必要すらある。
となれば、極力法律を順守する必要があるというどころの話ではない。
なんということだ。
いや、人道的でなければ命が危ないというべきか。
手を抜きたいが、手を抜く理由もなく戦果が不足しても面倒。
・・・。いや待て。理由ならある。
足手まといの補充兵が多数いるはずだ。
彼らが足を引っ張る以上、敵魔導師の排除が終わるころには他部隊が到着するだろう。
そうなれば、後は損害が出ていることと消耗を理由に引き継ぎが可能。
そうなれば、そうなれば手を汚すこともない。
いやはや、こんなことがあるとわかっていればもう少し補充兵に寛容になっているべきだったか。
うん?いや、しかし命令者には使用者責任が伴う。仮に、補充兵が誤射したらどうなるのか。
いうまでもなく、引率責任者である私が軍事裁判かつるしあげ裁判にかけられることになるのだろう。
帝国が勝った場合の軍事裁判はまだましだ。
運が良ければ無罪放免も期待できる。
しかし、負けた時は復讐の贄にされる事だろう。
それは困る。名案だと思ったのだが、どうにもいけない。
いっそのこと、目撃者を排除してしまうか?
いや、さすがに虐殺とて生き残りの証言というのは必ず出てきた。
それに極東軍事裁判をみれば、証人なんていくらでも創造できる。
「・・・気乗りしないな。」
そう呟くしかないのが実態だ。
なにしろ、出撃までほとんど時間的な余裕がない。
そして優秀な我が部下達は戦争が大好き連中で集まっただけあって出撃命令と聞くと同時に、集結している。
すぐに、出撃態勢に移行できるだろう。
こんなことならば、第二種戦闘配置を出しておくべきではなかった。
どうする?
なまじ勲章をもらっているだけに、がちがちの帝国主義者と見なされかねない。
いや、絶対にそうだ。そうなれば、後は不愉快な人生が待っていることだろう。
ドイツを見ろ。戦時中、熱心なナチだった連中は碌な眼にあっていない。
親衛隊なんぞ、未だにごたごただ。まともなのは、空軍のエースパイロット程度。
それでも、多数が共産主義者に抑留されている。どこぞに、抜け穴はないのか?
ハルトマンのように抑留されるわけにもいかない。
・・・いやまて。
一人いた。
ルーデルとかいう軍人がいた。
筋金入りどころか、鉄筋コンクリート並みの反共主義者にしてナチ寄りの軍人。
しかし、戦後は割と人生をエンジョイできていた。
彼だ。
彼に倣えばよいのだ!
あとがき
更新。
あと、微妙に長引いている変なテンション。
うん、頑張って更新ペースを上げていきたいと思います。
コメントでご指摘いただいたように、他との絡みも出すつもりです。
こんな作品を一気読みしていただいた方もいたようで、感謝感激の極み。
タイトルがあれですが(-_-;)
いや、きっとタイトルからにじみ出る本質を御理解いただけたのだと信じております。
教皇特使のアルノー・アモーリ氏の御言葉
『Tuez-les tous, Dieu reconnaîtra les siens』というものを御検索いただければ、きっとあなたも本作がタイトル通りの展開を迎えていることを御理解いただけるかと。
追伸
フィクションです。
誤字修正しました。
さらにZAPしました。
ZAP
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