結婚できない男

30男なぜ結婚できないのか
 なるほど、これでは少子化が進むはずだ。昨年末に発表された最新のデータ(05年版国勢調査)で驚くべき現実が浮き彫りになった。30代前半男性の2人に1人(47.1%)が独身で、同じく女性も3人に1人(32.0%)は独り身だったのだ。確かに周囲を見渡すと、30代の独身男女がゴロゴロいる。彼らの親世代が所帯を持った30年前、40年前にはこんなことは考えられなかった。結婚がすべてとは言わないけれど、一体なぜ30代は結婚できないのか?

●家庭より自由な付き合い

「結婚? ダメっすよ。家庭を持ったら自由に遊べないでしょ。たとえば、今夜友達にスキーに誘われたって即答できないし、合コンだってパス。遊びが制限されるくらいなら、ひとりのままの方が気が楽です」(33歳の営業マン)

 現在の“友達付き合い”から外れるのが怖いのだ。「一度断ると、連絡が来なくなる」とも言う。人付き合いの輪など、年齢や会社でのポジション、住む地域によって次々に変わるもの。生涯の伴侶より大事だとは思えない。たかが携帯とメールでつながるグループではないか。

●妻よりモノ

「30代の男たちはオタク的趣味の世界に金を使いますよね。流行のブランド時計を買い、人気のブランド服を揃える。友達と同じものを着て安心し、周囲と同一化することによって存在確認をする傾向が強い。人からどう見られるかが最大の関心事で、人間関係を突き詰めたり、人生そのものを考えることは容易にしない。人格的に子供で、夫婦関係を築くどころの話じゃありません」(日大教授・松野弘氏)

 人間関係が面倒くさいのでセックスはフーゾクで済ませる。ヘルス全盛期に学生時代を過ごし、カネでセックスすることに抵抗がないのがこの世代の特徴だ。

●家庭や親子に不安

 彼らはバブル期前後をまたぐように多感な思春期を過ごしている。

「あの宮崎勤の事件が起きたのは1989年で、シックリしない親子関係や実体のない家庭が問題視されました。また、家庭のほころびや親子の絆に自信が持てなくなるような事件も多発し、この世代が子供心に衝撃を受け『家庭や子育ては難しい』と思うようになった可能性もあります」(聖学院大客員教授・作田明氏)

 とはいえ、勢いで同世代同士で結婚したところで長続きはしない。渋谷のバラバラ殺人の夫婦のようになってはオシマイだ。

●生活できない

 収入が低い人が多いのも未婚の一因だ。実際、30代前半の契約社員などは年収300万円前後の人が少なくない。

「彼らが大学を卒業した10〜12年前はバブル崩壊後の就職氷河期。当時、就職にあぶれた学生は、結局、バイトや契約社員で食いつないだ。その後就職できても、まだ社歴が浅くて経済的に恵まれていない。人生のキャリアデザインが描けていないのですから、結婚は遠い夢です」(松野弘氏=前出)

【2007年1月25日掲載】