2020.01.03 🎉

 
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喪中では、お節料理は、目出度いことを意味する鯛や海老、紅白のかまぼこなどは避ければ、
普段の料理として食べても問題はありません。

お雑煮も、お供え物の餅を避けて、普段の食べ物として質素に食べるのであればよい。

一方、年越しそばについては、「長寿を願う」や「1年の厄を落とす」という意味で食べられているものであり、
祝い事とは関係ありません。そのため、喪中でも食べることができます。




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【庵野監督・特別寄稿】『エヴァ』の名を悪用したガイナックスと報道に強く憤る理由 | 庵野秀明監督・特別寄稿 | ダイヤモンド・オンライン



エヴァ』の名を悪用したガイナックスと報道に強く憤る理由

アニメ制作会社「ガイナックス」の社長が準強制わいせつ容疑で逮捕された。この事件では、『エヴァンゲリオン』の名を付した報道が数多くあり、これについて庵野秀明監督は強い憤りを感じているという。そこで今回改めて、庵野監督の特別寄稿を連載していく。第1回は、これまでのガイナックスとの関係や袂(たもと)を分かつまでの経緯などについて語る。

ガイナックス」の事件報道について

逮捕された人物は『エヴァ』とは全く関係ない

 まったく面識のない経歴もよく知らない人物が、僕が以前在籍していたアニメ制作会社「ガイナックス」の社長になっていました。そして、刑事事件の被疑者になった、というニュースが入ってきたのです。

 この事件については、まず何よりも先に、被害に遭われた方に心よりお見舞いを申し上げます。

 そして、その上で僕自身が設立に参加し長らく制作の現場とし、一時は取締役も務めたガイナックスという会社がこのような形で報道されるに至ったことは非常に残念だと思っています。

 もともとガイナックスは、アニメ映画『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(1987)を制作することを目的として1984年に作られた会社です。

今回の報道のあり方には制作者を代表して強く抗議したい

 僕はそのころ、作品至上主義を掲げていて、経営と創作活動は二律背反すると考えていました。なので、社員として在籍しながらも経営には関わらない形で、自分たちの作品を作ることに集中していたのです。

 当時のガイナックスは、作品のクオリティーを重視する、僕たち作り手にとってある意味理想的なスタジオでした。もっとも、今考えるとコスト管理能力が足りなかったとも思います。クリエイティブ重視、現場重視の体制は設立当初からありました。

 基本的には綱渡りの採算で制作を続けていた中、1995年に僕らがガイナックスで制作したテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』がヒットしました。

 それまでにない大金が入るようになり、会社はかつてない利益を出します。そして、そのころからガイナックスはバランスを崩して変な方向に進みはじめ、二十余年後に「代表取締役が刑事事件の被疑者となる会社」になってしまったように思えてなりません。

 今回の事件では、『エヴァンゲリオン』の名を付した報道が数多くありました。あえて有名な作品と関連づけることで注目を集めたいというメディア心理でしょう。しかし、逮捕された人物はほんの数年前にガイナックスに入ってきた人物で、『エヴァンゲリオン』には全く関わったことがありません。

 しかも、現在のガイナックスには、『エヴァンゲリオン』の制作に係わった人間は1人も残っていません。

今回の報道のあり方には
制作者を代表して強く抗議したい
 現在『エヴァンゲリオン』を製作しているのは、僕が代表取締役を務める「株式会社カラー」です。

エヴァ制作会社社長、逮捕」などという見出しだけだと、逮捕されたのは僕、という解釈すらできてしまいます。

 これらの報道は、あたかもこの事件が『エヴァンゲリオン』と関係があるかのような誤解を多くの人に与えました。

「かつてガイナックスエヴァを作っていたのは事実であるのだからうそではない」というようなミスリードを狙う、そうした報道のあり方には、制作者を代表して強く抗議したいと思います。

 実際、すでに決まっていた『エヴァンゲリオン』関連の企画が撤回されてしまうなど、報道被害が出ているという報告が現場から上がっています。

 これまでは事実と異なったことを主張する人がいても、僕はなるべく沈黙を守ってきました。

 ですが、これまで曖昧な情報を放置していたために、20年以上前に制作した作品を未だに今のガイナックスと関連付けた報道をされ、このような事態に至ってしまいました。

 僕にはカラーの代表として、『エヴァンゲリオン』の原作者・監督として、作品とスタッフを守る責任があります。

 そしてこれ以上「ガイナックス」や『エヴァンゲリオン』の名前を利用する人間が出てこないように、巻き込まれる人たちや組織、行政が出てこないように願ってもいます。

 前置きが長くなりましたがこれを期に、僕がガイナックスを離れた経緯や立ち上げた会社、カラーとの過去から現在にいたる関係を、きちんと記しておきたいと思います。

「古巣に対して筋だけは通しておきたい」との思い

ガイナックス」を制作場所にしたのは
「古巣に対して筋だけは通しておきたい」との思いから
新世紀エヴァンゲリオン』を、僕はもともと「ガイナックス」ではなく他の制作会社で作るつもりでいました。メインスポンサーになって、製作委員会を立ち上げてくれたキングレコードの方もそう望んでいました。しかし、「古巣に対して筋だけは通しておきたい」との思いもありました。

 当時の社長だった澤村武伺さんに話をしたところ「うちで作りたい」との回答があり、僕はガイナックスを『エヴァンゲリオン』の制作場所としました。

 ただ、当時のガイナックスの制作能力では1社でテレビシリーズをつくるのはとても無理なので、別のアニメ会社にも協力を仰いでいます。

 その結果、幸いにも『新世紀エヴァンゲリオン』はヒットし、一時は会社をたたむ、たたまない、というところにまで来ていたガイナックスに、お金が入ってくるようになりました。

「お金が入る」と言っても、ガイナックスは経営陣の判断から製作への出資をしていなかったので、当初は映像作品からのリターンは僕の脚本印税と監督印税のみでした。それもキングレコードの善意によるものです。最初の収入は会社に相談して、低いギャラで無理して作業してくれていたメインスタッフらに分配し還元していました。

 一方でガイナックス自体は、『エヴァンゲリオン』関連のCD-ROMやパソコンゲームソフトで大きな利益を出していたそうです。「だそうです」と伝聞になるのは、先ほども述べたようにその当時僕は経営に関わっておらず、そのことをほとんど把握していなかったからです。

エヴァ』という作品によって会社に予期していなかった大金が入り続けました。

行き当たりばったりの「浪費」が常態化
高額の脱税事件も発生
 ガイナックスという会社全体で、事業計画もなくコストも無視した行き当たりばったりの「浪費」が常態化してしまったのは、この辺りからだと思います。1997年には『エヴァ』製作委員会の好意で、ガイナックスに商品化の窓口を移し、収益の配分も受けられるようになって、『エヴァ』によるガイナックスの収入は増えていました。

 しかし、多くのお金や社員をつぎ込んだにもかかわらず成果を上げずに迷走し、損失だけが残った企画や事業が数多くありました。経営陣や担当責任者は、何度失敗しても反省することはありませんでした。お金があるので気にならなかったのです。

 そのような状態でも作品制作時に一番苦労したスタッフへ還元されることはほとんどありませんでした。

 もちろん他部署が『エヴァ』の名前を使って自分たちでお金を儲け、そのお金を自分たちで使うのは構いません。しかしその頃から、収益を上回る浪費が激しく、『エヴァ』のおかげで収益が上がっている客観的な事実を横に置いて『エヴァ』を利用しつづけるような経営に会社がシフトされていったと記憶しています。

エヴァ』放送後のゲームや関連商品で利益が急激に大きくなったガイナックスで、1999年に澤村社長(当時)が高額の脱税事件を起こしてしまいました。

新たな製作現場に「ガイナックス」を選択しなかった理由

 僕も社員で監督だったためか、『エヴァ』を放送していたテレビ東京に呼び出されて謝罪したりしています。しかし、僕は当時まったく経営には関わっていなかったので、この事件については後から聞いたことしか知りませんでした。

 その脱税事件で澤村社長が退任した後、もう1人の代表取締役だった山賀(博之)が社長を引き継ぎます。その山賀社長(当時)から直接「とにかく庵野の名前が取締役に入らないと、どこも信用してくれない。だから名前だけでもいいから役員をやってくれ」と言われ、「経営に興味ないしやる気もないけど、名前だけなら別にいいよ」と、取締役に入ることにしました。

 とはいえ『エヴァ』の神通力も永遠に続くわけではありません。それでも放漫経営は続きました。そのうち経営が傾いて「来月にはショートする」と毎月のように言われるようになりました。2003年から2004年頃だったと思います。そうなってはじめて僕も取締役らしいことをしようと社内状況を書類や数字で確認したのですが、その内容には大変驚きました。

 例えば、給与に大きな偏りがあり、ほとんど仕事をしていないような人物に給料が払い続けられていました。実績を上げているわけでもない一部の社員に、『エヴァ』に尽力したスタッフよりずっと高い給料が支払われていることに、愕然(がくぜん)とした覚えがあります。

 僕は在籍中も退職した後も一貫して、給与体系や社内システムの改善を経営陣に進言していたのですが、ほとんど聞き入れられることはありませんでした。

新たな『エヴァンゲリオン』の劇場版の製作現場として

ガイナックス」を選択しなかった理由

 何度目かの危機にあったガイナックスの経営は、取引先の大手企業2社からの増資と『エヴァ』のパチンコ化による収入で2004年に持ち直します。持ち直すとまた浪費癖が出てきます。経営陣は、将来性が見えない事業を始めたり、無理して継続させているような事業を凍結もせずに押し進めたりしていました。

 僕の意見は社内会議で取り上げられず、取締役を続ける意味を感じなくなっていたころ、自身の次作品として独自に進めていたオリジナル企画を凍結して、もう一度『エヴァンゲリオン』を作ることを決めました。自分でオリジナル企画を考えても『エヴァ』の亜流にしかならない。ならばもう一度『エヴァンゲリオン』を劇場版として作ったほうがストレートで、停滞しているアニメーション業界のためにも、自分自身のためにもいいのではないかと考えたからです。

 新たな『エヴァンゲリオン』の劇場版の製作現場として、僕は「ガイナックス」を選択しませんでした。

 過去作と同じスタジオでは新しい空気が入りづらいこと、当時ガイナックスでは別のテレビシリーズの企画が動いていたこと、僕がスタジオに居続けることで次世代のスタッフが遠慮し続けてしまいそうなことなど、いくつかの理由がありましたが、一番の理由は製作費を管理し、スタッフ、社員への福利厚生や、作品が当たった時の功労者への還元などをきちんと実行したかったからです。そのために自分自身の考えを直接反映し責任を持てる新たな会社として「株式会社カラー」を立ち上げました。

 といっても、設立当初は僕と助手、2人だけの小さな事務所でした。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズは、他のアニメスタジオに間借りして制作するつもりでした。しかし、周囲の手助けもあり、流れのままに制作スタジオを有した映像製作会社をつくることになります。

 それが2006年のことでした。

大急ぎで1億円を用立てた

カラー設立前に取締役は辞任
2007年には一般社員としても退職

 ガイナックスを離れるにあたっては、筋を通すためにカラー設立の前に取締役を辞任しました。山賀社長(当時)から「縁は残したいから社員としては残ってほしい」と言われ、その時は一般社員として名前だけ残しましたが、2007年には残っている意味もなくなり一般社員としても退職しています。

 僕がガイナックス以外で『エヴァンゲリオン』を作ることは、「エヴァ庵野のものだから」と、即座に認められました。『エヴァンゲリオン』の原作者が僕であることも明確にし、商品化ロイヤリティーの収益配分を受けられることも話し合いで決めています。

エヴァ』の版権管理と商品化窓口はそのままガイナックスに残しました。

 当時のカラーでは人手不足でしたし、当時のガイナックスの版権担当者は作品のことを良くわかってくれていました。ガイナックスにも相応なロイヤリティー配分と手数料が入るので、お互いウィンウィンで良いだろうと考えてのことです。

 その後、カラーは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズを自社出資で製作・配給していきます。2作目を制作中の2008年頃から会社間の関係も変化してきました。ガイナックス社内の方針転換などもあり、ガイナックスへの『エヴァ』からの収益配分の割合は減っていきました。それでも『エヴァ』によるお金は窓口であるガイナックスに入り続けていました。

 ところが、2012年からカラーへのロイヤリティー支払いが滞りはじめ、分割払いの相談がありました。ガイナックスの経営がまたしても悪化していたのです。山賀社長(当時)と武田(康廣)取締役が直接来社し、その提案を受け入れました。

 ちなみに、カラーへのロイヤリティーの支払いは、僕が中心となって制作した『エヴァ』に関するものだけです。監督をした『トップをねらえ!』や『ふしぎの海のナディア』では印税も配分も認められておらず、ガイナックス以外の制作会社で監督した『ラブ&ポップ』のロイヤリティーは、今でもガイナックスに入っています。

 そして2014年になると、さらに融資を頼まれました。

「もうつぶれるしかない」とまで言われ
大急ぎで1億円を用立てた
 まだ大きな金額が返済されていない状態なのに、武田さんから「あと3日のうちに1億円貸してくれ」といきなり懇願されたのです。そのお金がないと「もうつぶれるしかない」とまで言われたので、大急ぎで1億円を用立てました。

 そんな経営状態の会社に『エヴァ』の権利をいつまでも預けておくことに危険を感じて、ガイナックスにあずけていた『エヴァンゲリオン』の商品化窓口やロイヤリティーの分配の業務の移譲を1年前倒しにすることを条件としました。

 もともと段階的にカラーに戻すことになっていたのですが、ガイナックス側の希望で先送りにしていた案件です。その条件以外は、計画通り返済されれば無利子・無担保での融資としました。

ガイナックスからの支払いと返済が突然に滞った


 そんな条件で会社のお金を貸すわけですから、自分でも「経営者としてはどうなんだ」とあきれるような判断です。しかし学生時代からの友人ですし、アニメーション業界の一員として苦しい会社を支援したいという気持ちからの融資でした。長い間お世話になった会社への恩返しの意味もありました。

 少しでも経営が楽になればと、2014年にカラーの主要スタッフに関わりの大きい『トップをねらえ!』『トップをねらえ2!』『フリクリ』の原作権の買い取りも山賀社長(当時)と武田取締役に申し出ていました。その状況下のガイナックスでは新作の制作は困難でしょうし、作品の将来も考えてのことです。

 当初は山賀社長も喜んでその話を進め、買取条件も固まりかけていたのですが、ある日突然、当初の6倍になる高額の買取価格を提示されました。

 納得のいく値上げの理由説明もなく、こちらが困惑しているうちにその話はうやむやになり、2015年に3作品とも僕らの知らぬ間に他の会社に権利が売却されていました。その年の5月にガイナックスに銀行が介入し、大規模な人員整理を行ったという話も聞いていましたから、彼らは何よりお金が必要で、より高い額で買う会社へ売り込んだのでしょう。作品の展開や制作スタッフの気持ちよりも金額を優先してしまったのだと思います。

 僕が関わっていない作品も2014年に原作権が別会社に売却されていました。

 作品の権利の散逸が始まっていることから経営状態の把握が必要だと感じ、ガイナックスに経営状況の説明と返済計画の提示を幾度か求めました。状況によっては、さらなる支払い猶予や経営支援も視野に入れてのことです。

 しかし、先方からは「経営状況に問題はなく、予定通りに返済する」という回答があっただけでした。

ガイナックスからの
支払いと返済が突然に滞った
 そんな状況下の2015年11月に「株式会社福島ガイナックス(現・株式会社ガイナ)」が、僕らの知らないうちに設立されます。同社は当初ガイナックスの完全子会社でしたが、いつの間にか浅尾(芳宣)社長に全ての株が譲渡され、資本関係が解消された別会社となっていました。

エヴァ』と全く関係のない、ガイナックスという名を冠した別会社ということでした。しかし、福島ガイナックスはことあるごとに、周囲の人には『エヴァ』と関係があるかのようにみえる振る舞いをしていました。

 後にガイナックスが問題を起こしたときに福島ガイナックス(当時)は、「ガイナックスとは資本関係はなく、完全に独立運営している」とコメントしていたようです。それならば子会社から独立した時に、ガイナックスの看板を外しておいた方が良かったのではないかと思います。

 現に、今はさらに無関係な企業の傘下に入り「株式会社ガイナ」という微妙な社名に変更されています。

 そして2016年4月、ガイナックスからの支払いと返済が突然に滞りました。説明を求めても先方が応じることがなく、山賀社長(当時)に僕から直接メールしても電話をしても一切連絡がありませんでした。そしてそんな中で、日本の各所にガイナックスの名前を冠する会社が増えていきます。

 福島ガイナックス設立の少し前、2014年5月には、「米子ガイナックス」が鳥取県に設立されていました。2016年4月には「株式会社GAINAX WEST」が兵庫県、同年7月には「株式会社ガイナックス新潟」が新潟県に、僕らには何も知らされないまま設立されていきます。

心血を注いで作ってきた作品資料の保全が心配だった

 ちなみに、報道と関係者の話でしか知りませんが、GAINAX WESTに取締役として入っていた人物が、2017年に自身がプロデュースした神戸市のアニメ関連施設で問題を起こし、取引先や行政に多大な迷惑をかけた揚げ句、入居していたそのアニメ関連施設自体が閉鎖となったそうです。ガイナックスの名を使って活動し、このような事態を起こす人物を引き寄せていたのは当時のガイナックス関係者ですが、問題発覚と同時に無関係を主張していました。

僕たちが心血を注いで作ってきた
作品資料の保全が心配だった
 当時ガイナックスの経営陣だった人たちが「ガイナックス」の名前を冠する会社を次々設立していく中、当の「ガイナックス」が外国企業に身売りするという話が聞こえてきました。

新世紀エヴァンゲリオン
©カラー/Project Eva.
 真相を探っているとそのガイナックス買い取りを考えているという外国企業からわれわれのほうに「ガイナックスを買収したら庵野監督が映画を作ってくれるのか?」という問い合わせがありました。

 これらの状況から、ガイナックスからの返済をただ待ち続けていると、ガイナックスに残っている作品の権利や制作資料がわれわれの知らない誰かに売却され散逸する危惧が高まってきました。

 貸したお金が戻らないのは仕方がないとしても、自主制作時代から僕たちが心血を注いで作ってきた作品資料の保全が心配でした。

 その貴重な資料の散逸を防ぐことを最大の目的とした、会社の債権の仮差し押さえの申し立てを2016年8月1日に行い、8月26日に執行されます。当時のガイナックス経営陣から何ら具体的な説明も、山賀社長(当時)からの連絡もない状況が続き、やむを得ずの判断でした。

 その後、仮差し押さえの執行後も当社債権にかかわる返済計画などが示されることはなく、ガイナックスに預けていた貴重な制作資料や権利がこれ以上散逸するのを防ぐために、やむを得ず、2016年9月9日に、貸金返還請求訴訟を起こしました。

 この訴訟も、債権回収のための手段として選んだわけではなく、本件が表ざたにならないようガイナックスに配慮してのことでした。先方の経営陣が連絡をよこし示談に応じれば内々の話し合いで済んでいたことです。しかし、ガイナックスは裁判で争う姿勢を示したことでニュースとなり、全国に知られることとなりました。

 この裁判自体は、2017年6月23日に当社カラーの全面勝訴で判決が確定しています。

 そんな中で、自分たちが深く関わっていた複数の過去作品の重要な資料が大量に、福島ガイナックス(現株式会社ガイナ)に売却されていたことが判明します。これも作品の関係各社や制作に携わったスタッフたちの知らない間に行われていたことでした。

 ちなみに、それらの資料は、人と手間と時間とお金をかけてカラーが入手し、作品関係各社の了承を得て、今は「ATAC」(特定非営利活動法人アニメ特撮アーカイブ機構)の管理下で保管しています。

刑事事件の被疑者となった人物を
社長に就任させたのは当時の経営陣
 2016年9月30日に、ガイナックスのアニメーション制作部門のスタッフは全員解雇され、その直後に設立された「福島ガイナックス東京スタジオ」(現スタジオガイナ)に移籍させられています。これまでわれわれがガイナックスを支援してきた意味が失われる事態でした。その年11月には「ガイナックス京都」が京都府に設立されます。

昔のような関係にはもう戻れないことが最も残念に思う

 ガイナックスがカラーへの返済を滞らせてから既に3年半以上がたちます。いまだに当時の社長や経営陣からは連絡も説明も謝罪もないままです。

 そして2019年10月に、まったく面識のない経歴もよく知らない人物が「ガイナックス」の最大株主として社長になり、この12月に刑事事件の被疑者となりました。

 そのような人物をガイナックスに引き入れ、株まで譲渡して社長に就任させたのは、当時の経営陣にほかなりません。

 会社の経営だけでなくこのような事態になっても当時の経営者たちは、自身にも社員にもスタッフにも作品にも社会にも相応の責任を取ろうとはしていません。

 そのことが、債権会社の経営者としてではなく、学生時代からの友人として、残念です。

 そして、彼らとは昔のような関係にはもう戻れないであろうことを、最も残念に思います。

(監督・プロデューサー 庵野秀明

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