幼女戦記
⚔️ ああ
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⚔️ 第三十八話 カルロ・ゼン 2012/04/12 02:11
※おはようございます。夜討朝駆けとはよく申したもの。
たまにはこんな時間に更新するのも良くないかなぁと思う次第。
もちろん、まずければ自重しますが・・・。
それにならって、あとがきも朝駆けさせてみる始末。
先がき(Acfa風味)
ミッションの概要を説明します。
ミッション・ターゲットは
帝国軍防衛線前方に展開する共和国軍ライン方面軍部隊です。
帝国軍参謀本部は、本ミッションに複数の部隊を動員しております。
これと連携し、共和国軍部隊を全て撃破するというミッション・プランです。
共和国軍ライン方面軍部隊は、連戦で大きくその戦力を喪失しています。
現状であれば、貴隊と帝国軍で十分に壊滅が可能でしょう。
ミッションの概要は以上です。
帝国軍参謀本部は貴女を高く評価しています。
よい戦果を期待していますね。
まあ、外伝先にやりますけど。(・_・;)
突発☆外伝 ジョンおじさんの憂鬱。
共和国ライン戦線司令部隣接施設 連合王国人道支援団体“ピース・ワールド”病院
「・・・っ、知らない天井だ。」
思うにままならない意識を無理やり起こしつつ、共和国軍東方方面司令部所属カギール・ケーン大尉は自分の状況を確認していた。
うんうん、とそれを眺めながらジョンおじさんはさり気なくナースコールを押す。
おそらく彼の全身は倦怠感に包まれていることに違いない。
おそらくは、なにか強力な薬物だろう。それも、かなり持続性の強い鎮静剤か何かだ。
まあ、全身大やけどに一酸化炭素中毒によって死にかけていた軍人であるからのたうちまわらせるよりも優しいのだろう。
ともあれ、口が利けるようならば問題はない。
さっそく、聞きたいことを聞かなければ。
そう判断したジョンおじさん。
・・・正直に言えば、死の淵から生き返った人間はもう少しだけ心の平穏を味わう権利があるとも感じていたが。
彼の視力は良好だろう。天井を識別できるという事は、色覚も問題ないということだ。
しかし、体がほとんど動かせないため視野が制限される。
とはいえ、耳と口は正常なのだ。いい加減、気がついてほしいものでもあるが。
だが、ともかく生きている。
なら、そろそろここはどこだろうかと考える程度に情報部の人間は訓練されているのだ。
そんなカギール大尉の疑問に対して、答えて上げねばとジョンおじさんは考える。
“厄介極まりない性質を持つ情報部員にこちらが敵と勘違いされては面倒だからね、”と心中で呟いて。
「意識が戻ったかね。」
「・・・どなたです?官姓名の申告を」
聞き覚えのある声でゆっくりと呼びかける。
まあ、彼がよほど無能でない限り覚えているだろう。
いきなり官姓名の申告を求められる
「結構。貴官は、カギール・ケーン大尉。かくいう私は連合王国出身のジョンおじさんだ。」
ああ、“ジョンおじさん”かと相手が納得する振り。
まあ、胡散臭いことこの上ないとは自分でも思うのだが。
しかし、上官から一切合財詮索するなと命令されれば何も聞かないのが軍人だ。
取りあえず、顔はわかる相手である。
少なくとも、事前情報では敵ではなかったはず。
協力して情報交換を行う程度には友好関係があった。
だから“ジョンおじさん”だよ、で話が通じる。
「ああ、ジョンおじさん。それで、自分は何故拘束されているのでしょうか?」
だからこそ、彼は混乱しているのだろうが。
何故自分がベッドに縛り付けられているのだろうか?と。
「いや、別段拘束はしていないよ。薬物も痛み止めが中心だ。」
「は?ほぼ、全身の感覚が無くなるような代物が、痛み止めでありますか?」
さっきのナースコールで飛びこんできた連中から渡されるカルテを見る限り全身麻酔ではないらしいのだが。
一部は神経が壊れているのだろう。
・・・この年で、哀れなものだ。主の憐れみがあらんことを。...Amen.
「のたうちまわるというM趣味が共和国流というなら、文化の差異に基づく誤解だろうがね。」
やれやれだ。
この調子では、やはりどこかに潜り込んでいる帝国のモグラを引っ張り出すことはできそうにもないか。
そして、そう悲観的に考えたのは間違いではなかったらしい。
一酸化炭素中毒による記憶障害。
厄介なことに、カギール大尉は本件に関する有益な情報は何ら提供し得ない状況にあった。
『お大事に』
そう告げると、ジョンおじさんは心中で盛大に溜息をつきつつ病院の電話を手に取る。
少なくとも共和国軍に連絡して辛うじて救命に成功した一士官のことを連絡しなければならない。
彼はやられる直前になにがあったかわからなかったという事だけが、わかった。
容体が急激に悪化して痛くもない腹を探られるよりは、さっさと引き渡すに限るだろう。
・・・まあ、あちらさんが長く持たない以上『危険地帯』に『慈善団体』を置いておけなくなるという事情もあるのだが。
なにより、ハーバーグラム少将閣下の激怒を思えば責任の一端は共和国と分かち合うべきだ。
それにしても。
帰りの航空便が手際よく手配されることのなんと恨めしいことか。
きっと怒っているのだろうなぁ。
飄々としたジョンブル魂の持ち主であるジョンおじさん。
もちろん、いかなる時も冷静沈着であることを誇りに思う。
だが、その彼をしても歎きたい事というのは少しばかりはある。
例えば、海峡の先で怒り狂っているであろう上司の存在だ。
このことを思うだけで気分が憂鬱になるものだった。
『祖国の食事には耐えられるとしても、あのハーバーグラムのどなり声だけは勘弁。』
そう嘆く情報部員は決して少なくない。
しぶしぶ。
本当に文字通りそのままジョンおじさんは連合王国に降り立つ。
ティー以外に、心を休めてくれるのはなにもない。
ああ、頑張れジョンおじさん。
休暇が取り消されて急遽共和国まで出張というのも家族のための稼ぎだと思えばよい。
『やれやれだ。』
そう心中で呟きつつ、彼は報告を行うべく渦中へ飛び込む。
すでに行きかう人員の表情から事態は把握しているが、それでも行かねばならないのだ。
きっとドラゴンのように、怒り狂っているに違いない人間を観察するのも給料のうちかどうかは知らないが。
そう愚痴りながら、表情には出さずに入室。
待ちかまえていたハーバーグラム少将に要点を押さえた報告を口頭で行う。
間違っても書類に残すのは、全てが終わってからになる。
幸いというべきか、慣れていたからというべきか。
ともかく報告を言い終えた後、ジョンおじさんは耳をふさぐだけの時間的猶予を持っていた。
当然、躊躇うことなく行使する。
「・・・・・・・・・・・・・・・ッァアアアザァケルナァアアア!!!!!!!」
海男の声は大きい。
そして、怒りにまかせて怒声を上げる将官の声は特に大きかった。
対外戦略局のハーバーグラム少将。
その振りおろされた拳は、血まみれになりながらも耐久性で有名なオーク材のデスクを叩き割っていた。
まったく見事な技である。
力技とは言え、其れなりに見るべきところがある。
いやはや、今からでもバリツの師範として食べていけるのではないだろうか。
「いやはや。とは申してもですな。唯一の生存者も何も知らないうちに焼かれていたそうで。」
叫ばれるとわかっていたからこそ、耳をふさいでいたのだ。
そう言わんばかりに耳をふさいでいた“ジョンおじさん”は盛大に溜息をつくふりをする。
長い付き合いだ。
そうすれば、少しは相手が冷静さを回復する事も分かっている。
ちょっとだけしか沈静効果がないとも理解しているが。
「なにより、一切合財焼かれたために全てが消えておりまして。」
調査結果は全く望ましくないものだった。
集められた機密資料は全焼。
辛うじて、何かをつかんだかもしれないベテランの局員の損失も大きい。
派遣された人員らの上官は悉く“訓練中の事故”について手紙を書く羽目になっている。
人的な損害も馬鹿にならないだろう。
生き残った面々からの聴取もほとんど進んでいない。
「・・・何故だね?何故、貴様ですら知らないような機密部署に帝国軍魔導師がわざわざ突入してくる!!」
いやはや。
自分まで其れなりに疑われているとは。
いや、ここまで深刻なモグラだ。
多分に誰もが疑われざるを得ないのだろう。
連合王国情報部の敗北は、あまりにも“偶然”が多すぎる。
協商連合派遣部門が観測所ごと砲撃で圧殺されたのは、悲劇かもしれん。
偶々、協商連合艦艇に帝国軍魔導師が不意遭遇した揚句に流れ弾が一か所に集中する事も可能性はある。
そこに不運にも連合王国情報部がなんとしても守ろうとしていた人々がいたというだけもありえなくはない。
次の機会に、たまたま潜水艦が発見されてしまうのも船というやつの性質上皆無ではない。
洋上で魔導師と船が遭遇するのは稀にある話で、しかたなく機密保持が実行されるのは実に不幸な結果だったかもしれない。
そして、今回の件だ。
偶然以外の可能性、つまり漏えいを疑う声が上がっていたために調査を行うのは当然だろう。
その調査を行うためには、当然ながら秘密を守ることが重要になる。
そのために、連合王国情報部が共和国情報部と極秘裏に協力。
当然ながら共同で作業を行っていた機密施設の機密は極めて厳格に守られていた。
そこが偶々司令部を襲撃にきた帝国軍魔導師によって、偶然襲撃される事も広い世の中にはありえるかもしれないだろう。
まあ、偶然というやつは恐ろしい。
偶然帝国軍のモグラが連合王国に潜っていても不思議ではない程度に。
・・・そこでジョンおじさんは考えるのを停止した。
はっきり言ってこれ以上思考で遊ぶよりも現実的な対応が必要だからだ。
よしんばありえない話だが、偶然ならば偶然と証明しなければ疑心暗鬼に苛まれるだろう。
偶然でないならば、よほどでかいモグラが這いずりまわっているに違いなのだ。
そうであれば光を当てて、引きずり出さねばならない。
「さて。調べて見るしかないと思いますが。」
「・・・既に何度かやったが。」
ふむ。
存外、モグラとやら深く潜れるのかもしれん。
土を掘り繰り返してでも、探すべきか。
モグラについての情報をジョンおじさんは直ちに上方修正。
「一応私の方でも調べてみましょう。」
面倒だが、内務省の方も洗ってみるべきかもしれないか。
心中で予定を修正する。
モグラ対策を施しているといっても、他の部局から漏れていることも想定する必要があった。
しかも悪いことに、時間的な余裕はあまりない。
ライン戦線の崩壊は時間の問題だろう。これは、軍事専門家の統一した見解だ。
ちなみに、“ジョンおじさん”としてもその判断に疑問は無い。
悠長にモグラ探しをしている時間があるかどうか。
ジョンおじさんは優秀な人間であるが、自らの限界も知っているほどに優秀な部類である。
つまり、無理なことを無理かなぁと悟れるのであった。
みなさんごきげんよう。
皆さまにおかれましては、いかがお過ごしでしょうか?
思えば、戦火に身を浸す我々軍人というものは時として常識を失いがちなものです。
やはり一個の近代市民としての理性と常識を大切にしていきたいと思う次第。
皆さまにおかれましても、どうか善き隣人としての帝国軍人を御海容くださればと思うところです。
お久しぶりです。武運に恵まれ、また相まみえること叶い光栄に存じます。
帝国軍魔導少佐、ターニャ・デグレチャフであります。
皆々様におかれましては、一瞥以来ますますのご活躍とお伺いしております。
我々帝国軍人とて、皆様に笑われぬように全力を尽くす所存。
38度線を突破された?
落ち着くんだジョージ、逆に考えよう。
敵を包囲撃滅できる地点に誘導したんだと。
ほら、仁川逆上陸で袋のねずみさ。
はっはっはっ、今日も相変わらずライン戦線は地獄だぜヒャッハー。
とばかりに、各将兵らが奮起しております。
もう少し。もう少しです。
あとわずかな一撃で共和国軍を人として生まれた肥料としてやりましょう。
どうぞ、ご期待ください。
「攻勢計画第177号が発令されました。各隊、所定の手続きに従い戦闘行動を開始してください。」
気がつけば、HQからの作戦開始命令。
いつものライン戦線。いつものごとく繰り広げられる戦火。
そして、飛び交うのは人類が英知を集めて産み出したありとあらゆる『火』である。
ただ、今日は少し場所を変えてある上に条件が異なっていた。
「フェアリー01、コンタクト良好。第177号発令了解。行動を開始する。」
「ゲール01、コンタクト良好。作戦フェイズ2へ備え出撃待機中。」
「シュバルツ01、コンタクト正常。魔導ジャミングは想定内。第177号発令了解。所定の行動を開始する。」
前衛を担う魔導師大隊が後方の待機壕より進発。
同時に奇襲効果を狙って其れまで潜んでいた砲列が砲火を開く。
255ミリを筆頭に、各種砲弾の出し惜しみなき投入。
地図の書き換えが必要になるほどの鉄量がいともたやすく投じられる。
対する共和国軍の対応は散漫だ。
完全に混乱しきっており、のこのこと平地を進軍してきた挙句に身動きが取れなくなっている。
撤退するなり、防御陣地を構築するなりやればよいのだが。
司令部をおそった小隊は勲章モノである。
頭を吹っ飛ばされた共和国軍の混乱は見るに堪えない程哀れなものだ。
すでに後方を制圧済み。
現在進行形で海兵隊からなる逆上陸部隊が進撃中。
後方の補給線は完全に寸断済み。
いくら自前の物資があるとはいえ、ライン戦線に入りついていた共和国軍部隊が必要とする物資はいかほどだろうか。
歩兵の運搬可能量からして3日が限度に違いない。
そして、今日が運命の5日目。
まあ、温食を断たれた上に今はまだ冬である。
さぞかし寒さと飢えで震えていることだろう。
「・・・しかし、順調だな。」
本来、ターニャらは海兵魔導師らと合流する予定だったがここにいる。
当初の計画では、補給線打通のために反撃してくる魔導師への備えだった。
しかし、後方に浸透されたにもかかわらず共和国の抵抗があまりにも微弱なために送り返される始末。
稼ぎ時だ。
弱り切った共和国軍をぼこぼこにして昇進の機会を獲得するには絶好の好機。
摩耗しきった我が大隊だが、研修中の将兵らを数に数えれば一応数は揃う。
臨時編成の戦闘団としてみるならば、規模相応の戦力にはなるだろう。
「フェアリーよりCP。迎撃なし。繰り返す。迎撃なし。我前線壕突破。」
なにより、敵の抵抗はほとんど末期的状況。
通常ならば、雨霰と飛んでくる対空砲火がちょろちょろと上げられる程度。
散発的と形容するのも哀れなほど、弾薬欠乏は深刻らしい。
あっさりと。
本当に信じられないくらいたやすく、敵前線壕を突破し後方へ浸透できる。
ずいぶんと歓迎が手薄。
これがつい少し前まで戦っていた共和国軍かと問いかけたいほどだ。
本来ならば、魔導師なり戦闘機なりがでてくるはずの迎撃すらない。
おかげで、対地攻撃効率が演習場並み。
静止目標に対して上空から干渉式の術式を叩きこむだけの簡単な襲撃任務。
アフターファイブにいたころよりも容易な任務だ。
・・・あの頃は楽で良かった。
過ぎ去った過去のことに拘泥して効率を落とすのは趣味ではない。
だが、過去から学ばなければ行けないという視点で振り返るのは有意義だろう。
「ヴァイパーよりCP。若干の対空砲火のみ。損害軽微。突破に支障なし。」
「CPより各隊。エリア42に複数の魔導師反応。長距離観測狙撃式に警戒せよ。」
やはり、戦争は考えて頭を使った方が楽だ。
たまたま自分の隊だけが運に恵まれているのではなく、戦域全体で帝国軍が優勢を確立している。
隣の空域を担当するヴァイパー大隊が健在という事実。
CPが建前通りに、広域戦区を把握したうえで索敵・情報分析を見事に行う。
おかげで、危ない時には隣から救援が来る上に砲兵隊がきちんと支援射撃を撃ち込んでくれる。
こんな当たり前のこと。それが当たり前に行われるだけで、随分と戦争というものはやりやすい。
「フェアリー01より、砲兵隊へ至急。目標、エリア42。対魔導師制圧射撃を要請。」
いつもならば、いろいろと理由を付けられて受諾されないか渋られる援護射撃。
ところが、今日はわざわざ敵を誘引しただけあり砲兵隊の配置は完了済み。
それどころか大まかなエリア分けによって要請があると同時に砲兵隊からの支援が受けられるという理想的な状況にある。
「砲兵隊了解。現在観測射撃中、確認されたし。」
「前線管制官より各砲列、弾着確認。有効射と認む。」
まったく、ほれぼれするような熟練度。
観測されていたエリアに対して、魔導師が防ぎにくい大口径団による飽和砲撃が降り注ぐ。
重防御陣地や要塞ならばまだ耐えうるそれも、個人個人が構築した程度の簡易防御陣には荷が重い。
120㎜から255㎜の集中飽和攻撃。
それも、観測要員を抱えた砲兵隊による統制射撃だ。
「エリア42の沈黙確認!」
動けないところを叩かれては、魔導師といえども砲撃で押しつぶせる。
だからこそ、だからこそ嫌々ながらも私は空で戦うのだ。
まだしもそちらの方が砲弾に当たらずに済む。
いやはや、効率的とは素晴らしい。
こんな感じで、一方的に問題を処理できるのならば戦争というのも悪くはないと思えてしまう。
もちろん、資源の浪費であるので速やかな終戦こそが望ましいのはいうまでもないのだが。
まったく、共和国も意地を張らずに降伏すれば国家の人的資本を無為に損なう事もないというのに。
経済合理的観念を持ち合わせずに、全滅させるとは実にもったいない。
いっそ、相手が経済的な損得勘定ができると仮定して降伏勧告でも行うべきだろうか?
勝てない相手に全滅するまで抵抗しなければならない義務は軍人の義務を越えている。
ここまで追い詰められた将兵らに死ねというのは、国家が個人の人権を抑制できるとしても限度があるだろう。
というか、国家が権利を持つ個人に期待できる義務を大幅に超えている。
戦う事や国防についてはともかく、全滅する事まで義務ではないのだ。
『各第1梯団、作戦行動を開始せよ。』
しかし、何事でもゆっくりと落ち着いて考えられる状況でもない。
耳に飛び込んでくる友軍の無線からは、すでに作戦が次の段階に移行したことを告げている。
のんびりと飛んでいられる時間もあまりないらしい。
慌てるわけではないが、ややペースを上げて防御火点に対する攻撃を敢行。
わずかばかりの防御拠点を爆裂式で粉砕するだけだが、最後の組織的抵抗を挫くには十分すぎるだろう。
眼下を見下ろせば、右往左往する共和国軍と統制を保って進軍する帝国軍の姿が。
すでに、蹂躙戦とばかりにいくつかの帝国軍猟兵が突撃隊形を構築し始めている。
通常、防御陣地への突撃は犠牲が大きいがこちらが優越していれば話は違うのだ。
唯一の懸念材料とも言える機関銃を我々魔導師が潰している以上、本当にワンサイドゲームとなる。
共和国軍が降伏しないのは条件闘争のつもりかもしれないが、状況を理解しているのだろうか?
わずかばかりの損害を帝国に与える代償として全滅を選ぶのはあまり合理的とは思えない。
となれば、狂信的なまでに反帝国思想に駆られているか戦争狂か。
あるいは、まったく状況を理解できていない哀れな子羊か。
後者ならば、まだ説得のやりようもあるのだが前者なら最悪だ。
きっと、末期戦とか絶望的に蹂躙されるのが大好きな某親衛隊少佐のような奴が率いているに違いない。
そんな狂人の様な連中とお近づきにはなりたくないものである。
「空域警報!戦闘機複数のスクランブルを確認!」「敵魔導師反応確認できず。各隊、引き続き伏撃に警戒せよ。」
・・・どうやら、さすがに全く手をなにもうたないというわけでもないらしい。
まあ、いまさら戦闘機がでてきたところで遅いとは思うのだが。
しかし、危険かもしれない連中を相手にするよりは対空戦闘の方がよほど確率的には安全だ。
大隊に対地攻撃中止を指示。
ボックスを形成し、戦闘高度へ上昇するべく管制と交信。
どうやら、突っ込んでくる戦闘機は20機程度。
すぐに帝国軍の航空艦隊が迎撃するものの邪魔されたくないので少し遊んでやれとのことだ。
実に結構。本当にじゃれあい程度の戦闘に違いない。
なにしろ、魔導師と戦闘機は基本的にお互いが苦手だ。
小回りが利く一方で、速度・高度で苦しい魔導師。
一撃離脱に徹するしかないものの、打撃力を欠く戦闘機。
まあ、コストでは圧倒的に奴らが優勢らしい。
我々が落とされるよりも、連中が落とされる確率の方が高いので費用対効果は互角なので良いのだが。
「敵砲列、発砲!」
「被弾確認。各壕、損害を報告せよ。」
「戦域レポート。損害軽微。」
「対砲兵射撃!いっきに潰すぞ!」
下界で繰り広げられている戦闘という名の一方的な攻撃。
まったく、一発撃ち返されただけで敵陣地ごと粉砕できるほど余力があれば対地攻撃に加わった方が楽だったやもしれない。
とはいえリスク回避は合理的思考として当然必要。
今は、航空優勢なり制空権なりの実現に努めよう。
・・・それにしても。
この調子ならば、この戦争、勝てるかもしれない。
⚔️ あとがき
orz ゴメンナサイ
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