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オタクは遍在する …… NRIが示す「5人のオタクたち」


オタク分析のパイオニアNRIが新定義を打ち出した。
オタクにはアニメやコミックマニアだけでなく自動車好きや旅行好きも含まれるとし、
「5人のオタクたち」という典型像を示した。


 野村総合研究所NRI)オタク市場予測チームは、オタクの特性を分析して再定義し、10月6日に発表した。
オタクはいわゆる「アキバ系」だけではないとし、行動や消費の特性を抽出。
アニメやコミックに加えて旅行、自動車マニアなどもオタクに含め、主要12分野のオタク人口を172万人、市場規模を4110億円と推計した。


 NRIは昨年8月、国内のオタクの層の市場規模を約2900億円とする調査結果を発表し、大きな反響を呼んだ。
以来同社に問い合わせが殺到し「取材希望の1割がオタク関連で占められた」と同社の広報担当者は言う。


 昨年はオタク主要5分野として「アニメ」「アイドル」「コミック」「ゲーム」「自作PC」をピックアップ。
それぞれのユーザー像や市場規模を推計した。


今回の調査では「アイドル」を「芸能人」に変えたほか、新たに「AV機器」「携帯型IT機器」「クルマ」「旅行」「ファッション」「カメラ」「鉄道」を加えた12分野に調査に拡大。
アンケート調査や企業ヒアリングの結果などから、オタク人口は172万人、市場規模は4110億円と推計した。

分野 オタク人口 市場規模
コミック 35万人 830億円
アニメーション 11万人 200億円
芸能人 28万人 610億円
ゲーム 16万人 210億円
組立PC 19万人 360億円
AV機器 6万人 120億円
携帯型IT機器 7万人 80億円
自動車 14万人 540億円
旅行 25万人 810億円
ファッション 4万人 130億円
カメラ 5万人 180億円
鉄道 2万人 40億円
合計 172万人 4110億円

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オタクはアキバ系だけじゃない


 「オタクの定義は時代とともに変化してきた」――同社の情報・通信コンサルティング二部の北林謙副主任コンサルタントはこう指摘する。
1980年代はアニメやコミック、SF好きにオタクが限定されていたが、1990年代になってPCやゲームなどファン層が重なる分野にも拡大。外見やコミュニケーションの独特さなどがオタクの定義の基準だった。


 2000年代になると「健康オタク」「アウトドアオタク」など、ある分野に強いこだわりをもつ人全般をオタクと呼ぶようになり、外見やコミュニケーション形態だけではオタクをくくれなくなった。


 最近は「電車男」や萌えブームなどの影響で、オタク像の「原点回帰」が見られるとはいえ、オタクはすべての趣味分野に存在するというのが同社の考え。
今回定義した12分野以外にもあらゆる分野にあてはまるとしており、オタク像の再定義が必要としている。


オタクの再定義


 新たなオタクの切り口として同社は、
(1)こだわりの対象に対して、所得や余暇時間のほとんどを費やす「消費性オタク」と、
(2)「自分の趣味を周りに広めたい」「創造活動をしたい」と考える「心理性オタク」を打ち出し、
この2種類の特性を兼ね持つ人をオタクと定義した。


調査では、消費性オタクは全体の11%、心理性オタクは同36%おり、両方を兼ね持つ真のオタクは同3.6%いたとしている。


消費性オタクは芸能人やクルマ、旅行分野などに多く、心理性オタクはコミック、アニメ、ゲーム分野などに多い


オタクと分類された人々に、「あなたのこだわりは何ですか?」と聞いた自由記述の答えをキーワード分析し、関連を調べた結果。芸能人とアニメ、コミックとゲーム、AV機器とPC、旅行と鉄道などは関連性が高い


 同社の仮説によるとオタクは、あるジャンルに強い興味を持って“はまる”と、理想に近づくために消費行動を繰り返す。
消費するごとに愛着は増し、消費スピードは高まっていく。
やがて自分なりのこだわりを持ち始め、他人に広めようとしたり、創造活動を行ったりして外に向かって主張を始める――このようなオタクの特性を北林副主任コンサルタントは「巨大重力場周辺の星のようなもののようなもの」と例える。


巨大重力場周辺の星は、重力場に引きつけられ、近づくほどにスピードを増すが、永遠にたどり着くことはできない

5人のオタクたち

オタクは遍在する――NRIが示す「5人のオタクたち」 (2/2)


5人のオタクたち
 アンケート調査の結果から、オタク層に共通する行動特性を抽出したところ、
(1)他人に良さを理解してほしいと思う「共感欲求」、
(2)何でもそろえたいと感じる「収集欲求」、
(3)自分の意見を広めたいという「顕示欲求」、
(4)自分なりの考えを持ちたいという「自律欲求」、
(5)オリジナル作品を作ったり、改造したりする「創作欲求」、
(6)気の合った仲間にだけ分かってもらえばいいと考える「帰属欲求」
――という6つの欲求があることが分かった。


 この6つの欲求の濃淡などから同社は、オタク層を5種類に分類した。
いわく「家庭持ち仮面オタク」(全オタク中25%)、
「我が道を行くレガシーオタク」(同23%)、
「情報高感度マルチオタク」(同22%)、
「社交派強がりオタク」(18%)、
同人女子系オタク」(12%)――だ。


 家庭持ち仮面オタクは、組立PCやAV機器などを中心に幅広く分布し、小遣いをやりくりしながら家庭内でこっそりと趣味に没頭。
オタク趣味をカミングアウトしない傾向にある。
旅行分野にも多く、趣味を兼ねて子どもをあちことに連れ回すお父さんが典型例としている。


 我が道を行くレガシーオタクは、独自の価値観を持ち、情報収集と批評を展開。20〜30代の男性に多く、PCやAV機器、ITガジェット、クルマ、カメラなどメカ系と、芸能人分野を中心に分布しているという。


 情報高感度マルチオタクは自分のこだわりに対して屈託がなく、カミングアウト率も高い。
流行に流されやすく、他人を気にする傾向にあるという。
女性が多く、複数の分野にまたがっているのが特徴。
コミュニティーサイトやネットオークションが大好きで、2ちゃんねるのライトユーザーという人物像があてはまる。


 社交派強がりオタクは、独自の価値観を強く持ち、それをみんなに知ってもらいたいと考えて他人を巻き込もうとするタイプ。
ガンダムドラクエの世界観を引きずり、それに気づかずに30代になってしまった大人が典型例という。


 同人女子系オタクは、コミックやアニメに登場するキャラクターへの愛着が強く、同人誌など創作活動への参加率が高い層。
友達に隠れてひそかに持っていた趣味を大人になっても続けている同人誌フリークの女性が典型例としている。
男性でも「アキバ系」「萌え系」がこの層に含まれるという。




オタク分類別、6種の欲求の強さグラフ