2000年12月




 約1年ぶりに知人と会い、食事をした。

「ベストセラー作家になって、うんと儲かったら、SF翻訳専門の小出版社を設立しなさい」

 と勧められた(もちろん冗談ですよ)ので、ふと、美人女流翻訳家を3人集めて、スピーカーから指令を出すというのはどうか、と思った。

「グッド・モーニング、エンジェル。今回のターゲットはラファティの『第四の館』だよ」

 とか。

 そのときは知人にボズレー役を頼もう。


 洋書の古本を探している人は、まずAddALL Used and Out of Print BooksBookFinder.comをチェックするといいらしい。


 ロバート・オルドリッチ監督特攻大作戦」(1967)を観たら、あまりにすごい映画だったので腰が抜けた。


 日本プロ野球選手会公式サイト

「スポーツマンがストライキをするなどけしからん!」という意見もあるだろうが、プロ野球選手は個人事業主であり、球団側の横暴(なんの意味もない労働強化)に対抗するために、ストライキをおこなうことは当然の権利である。また、年俸交渉に代理人を同席させることも、当然の権利である。

「スポーツマンが金のことばかり言うな!」と言う人もいるかもしれないが、金のことばかり考えているのは、なんの意味もなく試合数を増やした球団経営陣のほうではないか。

 がんばれ、古田! プロ野球の未来のために! 長嶋茂雄は味方してくれないようだが、わたしは応援するぞ。


 FNS歌謡祭(フジテレビ系)を見ていて、ふと、ポルノグラフィティのおかげでみんな耳にしたことがある「サウダージ」という言葉の正確な意味を知りたくなった。

 愛用しているオンライン辞書リソース「A Web of On-line Dictionaries」から葡英辞書サイト「Dicionario
da Lingua Portuguesa da Porto Editora
」に飛び、ポルトガル語表記のメニューに往生しながら、検索する。


saudade【女性名詞】=longing, yearning, homesickness

 と書いてあるから、「思慕、憧れ、郷愁」という意味だろう。

 ブラジル音楽用語としての「サウダージ」は、アントニオ・カルロス・ジョビンやカエターノ・ヴェローソの音楽を聴いたとき、胸の奥でふと感じるせつない気持ちを指す。黒人音楽における「ファンキー」同様、一種の翻訳不能な単語である。

 ところで、ポルノグラフィティは、ロックバンドでもミュージシャンでもアーティストでもなく、正しい芸能人だと思う。CDを買う気はないが、テレビで見ている分には好ましいです。


 全然関係ないけど、ふと思い出したので書いておくが、昔、ビリー・ジョエルがこんなようなことを言っていた。


 ラップは音楽とはいえない。詩は頭に入るし、リズムは腰に来るけど、真ん中が抜けている。それはハートだよ。

 頭と腰の真ん中には心臓(ハート)があるというわけで、うまいことを言うな、と思った。

 でも、ジョエルの言う「ハート」とは、要するに和音のことですね。


 またまた、ふと思い出したので忘れないうちに書きとめておくが、シークェンサーの発達は歌手にも多大な影響を与えているのではないかと思う。

 というのは、たぶんサラ・ヴォーンは打ち込みのバックトラックでは歌えないと思うからだ。

 彼女は生身の演奏者とともにグルーヴを生み出す技術に長けている。歌手が少しリズムを崩すと、演奏者はそれに合わせたり、あるいは逆にもっとずらしたりする。そうしたインタラクションの結果、全体としてある種のグルーヴがつくり出される。

 ところが、打ち込みのバックトラックではこうはいかない。歌手がリズムを崩しても、バックトラックは正確なビートを刻みつづけるだけである。ずれたらずれっぱなしで、まったく合わせてくれないわけだ。

 しかしながら、音楽に生身の歌手を使う理由は、機械では生み出せないグルーヴをつけ足すことにある。では、どうしたらいいか。

 わたしは歌手ではないので、ここからは推測でしかないが、おそらくこうやっているんだろう、と思う。リズムを少し崩して、自分なりのグルーヴをつくる。その後、打ち込みの正確なビートに戻って、自分でつじつまを合わせるのである。これが打ち込み全盛時代の歌手に要求される技術ではないだろうか。

 これを進歩と見るか、退歩と見るかは人それぞれだろうが、わたしはべつにどちらとも思っていない。


 9日、テレビでジョン・ウー監督「フェイス・オフ」を観ながら、ふと思ったこと。

 ジョン・ウー監督の現場では、助監督がハトの世話をしてるのかな? 撮影の合間にはハトにエサをやってて、監督から「よーし、ハト飛ばすぞ!」の声がかかると、籠を持っていくとか。

 昔、工藤栄一監督の現場には路面に水をまく係の助監督がいるという話を聞いたことがあるけど。


 カーティス・ハンソン監督「L.A.コンフィデンシャル」(1997)を観た。ちなみにジェイムズ・エルロイの小説は1冊も読んだことありません。ただ、タイトルつけるのうまいのがうらやましいです。

 複雑な話をうまくまとめ上げる手際の良さに感心。まさに“よくできた普通の映画”で、こういう映画がもっと増えると、先鋭的な映画がさらに際立つんじゃないかな。

 伏線のシーンをオーバーラップして紹介する手法は、ダサイといえばダサイが、観客にわかりやすくしようという意図からでしょう。わたしはわかりやすいほうがいいと思う。


 ところで、筒井康隆氏に「新宿コンフィデンシャル」という短編がある。ということは「L.A.コンフィデンシャル」と共通のタイトルの元ネタが存在するはずなのだが、それは何か?

 わたしは知らなかったので、ネットで調べてみた。その結果、全洋画ONLINEで「紐育秘密結社」(New
York Confidential, 1955)という映画があることを知った。のちにテレビドラマにもなったそうです。


 BASEBALL JUNKYで始まった田中寅彦九段のコラムがおもしろい。田中九段は“草野球の闘士”だそうで、将棋も野球も実戦派なんですね。(わたしはどちらも観戦派)

 玉木正之二宮清純の両巨頭が日本プロ野球選手会支持の熱い論陣を張っている最中なので、田中九段の(いい意味で)たわいのないコラムは、心がなごむ。


 以前にも書いたと思うが、わたしは二宮清純という人があまり好きではない。理由は単純明快で、キザだからだ。

 競艇中継のゲストに招かれた二宮氏を見たことがある。

「では、二宮さんの予想をお願いします」

 とふられると、二宮氏は例の口調で(<わかる人にはわかる)、

「船券を買うときには、ある種の“断念”が必要なんですよ」

 わたしはテレビの前でひっくり返った。競艇の予想までキザに語るか。二宮清純、恐るべし。

 しかし、代理人問題・試合数増加問題に関しては、きわめて正論、しかも立場明確な文章を書いておられるので、ちょっと見直した。以後、少々ナルシスト入ってても許す。人間誰しも欠点はあるもんだし。


「バーバレラ」(ロジェ・ヴァディム監督、1968)を観る。ものすごくテンポが悪いところも含めて、正しいカルト・ムービー。まあ、一見の価値はあります。

 ドリュー・バリモアの次回作はこのリメイクらしいが、いかにも、という感じ。ロジェ・ヴァディムのような才能あるエロ親父を監督にできるかどうかが勝負でしょう。あと、少しダイエットしたほうがいいかも。

 その次はけっこう仮面を映画化するといいんじゃないでしょうか。


“ニコニコエスプリ大会”と題して、「トラフィック」(ジャック・タチ監督、1971)と「地下鉄のザジ」(ルイ・マル監督、1960)を観る。

トラフィック」は、画面に出てくるのがほとんど道路上という、真の意味でのロード・ムービー。いい意味でだらだらした映画で、わたしは好きです。アルトラ社のキャンピング・カー、欲しいなあ。車検通らないだろうけど。

地下鉄のザジ」は3回目だが、やっぱりおもしろい。ルイ・マル監督作品ではいちばん好き。信じられないかもしれませんが、原作の非常に忠実な映画化です。


 Delawareのホームページが移転したらしい。一応、新しいurlを書いときます。


 福井で発見された恐竜の学名が「フクイラプトル キタダニエンシス」に決まったらしい。

 なかなかすごい名前だが、基本的に学名というのは何をやってもよく、命名者の主義主張や趣味がもろに出るものなのだ。「おもしろい学名」ページを読むとよくわかる。

 わたしが知っていたものでいうと、Dicrotendipes thanatogratusがある。この「thanatogratus」とはGrateful Deadラテン語訳。命名者がグレイトフル・デッドの熱狂的ファンだったらしい。

 ホラーファンがつけると、Draculoides bramstokeri、クラシックファンがつけるとMozartella beethoveniなどという学名になる。なんでもありなんですな。

 ところで、Fukuiraptolというつづりを見ると、英米人は「フーキーラプトル」と発音してしまうらしいです。


 BOOK OFFで『ニール・サイモン戯曲集』(早川書房)を100円で買い、暇なときに読んでいる。

 老芸人(日本でいえば漫才師)が主人公の「サンシャイン・ボーイズ」という有名な戯曲があるのだが、主人公ウィリー・クラークの暮らしぶりについて、甥がこんなことを言う。


「伯父さんがこんな風に暮らしてるのを見ていて、おれが笑えるかい? 一日じゅう冷凍室みたいなアパートで、パジャマのまま座りこみ、三十五ドルの安テレビで昼メロを見ているじゃないか」(酒井洋子氏訳)

 うーむ。これって、現在のわたしの生活だ。さすがに昼メロは見てませんが。


 近所の大型スーパーで買ったKettle Foods社のポテトチップスを食べたら、あまりにうまいので驚いた。いままで食べていたポテトチップスってのは、ありゃ偽物だね。

 もちろん、塩分・油脂分に気を使う方にはお勧めできませんが、うまいものってのは、どこかしら健康に悪いものですよ。(たとえば、わたしはバターしか使わない。だって、マーガリンよりおいしいんだもん)


 Kettle Foods社のLittle Giant印ポテトチップスを全種類試食した結果、ニューヨークチェダー(New York Cheddar with Herbs、チーズ味濃厚)とヨーグルト&グリーンオニオン(Yogurt & Green Onion、葱が利いてる)が気に入ったので、今後もときどき買おうと思っている。