2000年6月




 女性の皆さん、ディズニーランドに行ったときは、カメラに気をつけましょう。


「わたしの可愛いペットをみんなに見てもらいたい!」という情熱はよくわかるのだが、はたして世界で何人くらい共感してくれるのかな。


 モールス信号が出てくる映画のリスト

 この手の映画リストはけっこうある(バグパイプが出てくる映画図書館員が出てくる映画、などなど)が、このサイトは群を抜く労作。作者のモールス信号への愛がひしひしと感じられる(<皮肉に非ず)。これぞマニアの鑑である。

 さらなる情報提供を呼びかけている映画もあるので、何かご存じの方はぜひ教えてあげてほしい。


 アクチュアル・リアリティ


 THE GUMSHOE SITEで知ったのだが、ローレンス・ブロックが〈American Heritage〉という雑誌に「最も過大評価/過小評価されているハードボイルド探偵」というおもしろい記事を書いている。

 ブロックの選択は、


●過大評価=マット・スカダー

●過小評価=コンチネンタル・オプ、名無しのオプ

「実際に私立探偵を雇うとしたら、スカダーは絶対雇わない」と書いているのが笑う。

 他にもいろいろな過大評価/過小評価が取り上げられていて、楽しめた。日本でもこういう特集やればいいのに。


 本格ミステリでいうと、最も過大評価されている名探偵はシャーロック・ホームズだと思う。

プライオリ・スクール」という短編で、ホームズはぬかるみに残った自転車のタイヤの跡を発見し、後輪の跡が前輪の跡を横切っているのを観察して、自転車がどちらの方向に走っていったかを推理する。

 ジョン・スラデックが『見えないグリーン』で指摘しているとおり、これは誤った推理である。前輪の跡と後輪の跡の上下関係だけでは、自転車の走っていった方向は推理できない。


 ところで、おもしろいのは、スラデックの反論も純理論的なものだ、ということ。「自転車のタイヤの跡だけで走った方向がわかる」というのが空理空論だとしたら、「自転車のタイヤの跡だけでは走った方向はわからない」というスラデックの反論も空理空論なのである。

 1991年、ジョン・H・コンウェイたちがミネアポリス大学でおこなった講義「幾何学と想像力」では、冒頭でこの「自転車のわだちの問題」が取り上げられている。ここで講師が推奨するプログラムは次のとおり(大意)。


(1) この問題について議論してみよう。ホームズはどうやって方向を知ったか?

(2) タイヤの跡だけで自転車の走っていった方向を知る方法を考えてみよう。その方法はあらゆる場合に使えるか? 自転車が生乾きのセメントの上を走った場合は? 砂浜では? 草むらの上では? タイヤに泥がついた自転車が長さ30フィートの包装紙の上を走った場合はどうか?

(3) 2本の線で描いた理論的な自転車のタイヤの跡で方向がわかるか試してみよう。

(4) 自分でも理論的な自転車のタイヤ跡を紙に書いてみよう。前輪と後輪の位置関係をよく考えること。

(5) 外に出て、本物の自転車のタイヤ跡を観察してみよう。自転車の走った方向がわかるかな? じっくり観察して、できるだけすばやく正確に方向がわかるように努力すること。

(6) 友達にこの問題を話してみよう。すぐに答えを教えないで、問題だけ。友達には自分で考えさせること。少しは手助けしてあげてもいいけど、自分の頭でじっくり考えることが大切。

 つまり、いろいろな場合を想定し、実際のタイヤ跡を観察してみて、自分の頭で考えることが大切、ということ。わたしが思うに、正解は「自転車のタイヤの跡だけで走った方向がわかる場合もあるし、わからない場合もある」ですね。

 どういう場合に走った方向がわかるかは、警視庁鑑識課が詳しく知っているのではないか。

 ドイルもスラデックも、「紙の上に描いた理論的な自転車のタイヤ跡」だけでしか考えていない点では変わりない。これはスラデック本格ミステリ志向であることを意味していると思う。


「こンにちわ。ぼくわママと家族とトレイらーで住ンでます。ボクの家族や友ダチを紹介するね」

 ……という心あたたまる内容のページアリゾナ州ホワイトロックのグレッグくんがつくったとのことだが、わたしはこれは手の込んだジョークなんじゃないかと疑っている。それとも、アメリカには本当にこういう一家がいるのかなあ。こわいなあ。


 数学者トレーディングカード。マジで欲しい。


 Visible
Human Project
——ディジタル化されたインタラクティヴな人体解剖図。ボランティアの死刑囚の遺体を実際に輪切りにしてスキャンしたらしい。

 Applicationをクリックすると、いろいろな人体解剖ブラウザを試すことができる。


 SF作家物故者リストスラデックが入っていないのが、ちょっと悲しい。


「未来からの教室」(NHK教育)というテレビ番組で、SETI@HOMEプロジェクトなるものを知った。

 これはカリフォルニア大学バークレー校が主宰するSETI(地球外知的生命体探査)プロジェクトで、電波天文台が収集した膨大なデータを分析し、地球外知的生命体からの電波信号を探し出すために、インターネットを利用しようというもの。

 SETI@HOMEのホームページからSETI@HOMEソフトをダウンロードし、自分のパソコンの空き時間に分析をおこなう。結果はインターネットを通じて、SETI@HOMEセンターに戻される。

 つまり、世界中のパソコンで分散処理をおこなうことで、膨大なデータを有意な時間内に処理しようと目論んでいるわけ。うまいアイディアを思いついたものだなあ、と感心した。

 ところが、その一方で、「SETI@HOMEはフリーソフトではないのでボイコットすべし」とアジってる人たちもいるらしい。(この場合のフリーソフトとは、無償という意味ではなく、ソースコードを公開しているということ)

 でもって、SETI@HOMEのほうでは「最近うちのソフトを勝手に改造して配布している人がいるらしいが、そういうのは使わないでください」と告知していたりする。

 世の中、いろいろな意見の人がいるから、難しいですなあ。


 ノルウェー王国大使館の広報部は、つまんない質問をしても、懇切丁寧に対応してくれます。


 日本のピザお好み焼きではなく、宅配ピザのことです。アメリカ人にとっては、身近な食べ物である分、日本で売られているピザはきわめて異様に見えるらしい。確かに、わたしもイカスミピザはどうかと思いますが

「地球の裏側にピザがあった!」みたいなページもあって、日本の宅配ピザを5段階で評価している。日本に来てまで宅配ピザを注文し、ついついキムチベーコンピザを食べてしまうというのも、ピザマニアの業の深さが成せる技でありましょう。


 アルフレッド・ベスターのファンサイトThe Iddividualでは、『虎よ、虎よ!』映画化の際のイメージキャストを募集している。

 結果のうち、点数が高いものをピックアップしてみると、



ガリー・フォイル………………メル・ギブスン

プレスタイン……………………マルコム・マクダウエル

ロビン・ウェンズバリ…………ホイットニー・ヒューストン

オリヴィア・プレスタイン……ドリュー・バリモア

ソール・ダーゲンハム…………トミー・リー・ジョーンズ

ヤン・ヨーヴィル………………ジョージ・タケイ

ジズベラ・マックィーン………ジーナ・デイヴィス

 ということは、メル・ギブスンがホイットニー・ヒューストンをレイプする場面があるんだな。それならヒットするかもしれない。

 わたしも考えてみた。



ガリー・フォイル………………宍戸錠

プレスタイン……………………金子信雄

ロビン・ウェンズバリ…………松原智恵子

オリヴィア・プレスタイン……浅丘ルリ子

ソール・ダーゲンハム…………西村晃

ヤン・ヨーヴィル………………川地民夫

ジズベラ・マックィーン………白木マリ

 監督は鈴木清順でどうか。

 アメリカ人には理解できないだろうから、応募はやめました。


『虎よ、虎よ!』が本当に映画化されるかどうかはわからないが、仮に映画化されたとして、確かなことがひとつだけある。

 この映画の邦題は「虎よ、虎よ!」でも「わが赴くは星の群」でもなく、「スターズ・マイ・デステネーション」になるでしょう。


 ジーン・ウルフケルベロス第五の首』の読者は、Robert BorskiさんのCAVE CANEMがものすごく役に立ちます。Borskiさんは世界でいちばん『ケルベロス第五の首』に詳しい人だと思う。何かの間違いで翻訳されたあかつきには、このサイトにある用語集やエッセイを解説につけることをお薦めします。

 ところで、Gene(遺伝子)Wolfe(狼)という自分の名前のもじりから一冊の本(しかも傑作)をつくり出してしまうなんて、ジーン・ウルフは食えない作家だなあ、と思いました。

 この作品は、

「忘れもしない1966年6月の夜、すべての萌芽を与えてくれたデーモン・ナイトに」

 捧げられている。賭けてもいいが、この「萌芽」とは、

「わしの名前はDamon(神霊)Knight(騎士)だが、きみの名前は遺伝子・狼で、おんなじくらい変な名前だねえ。あっはっは」

 という話だったに違いない。