GaN  …… 格子定数 の 呪い

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深紫外窒化物系発光デバイス


流量変調成長法を用い生成した
   AlGaN 多重量子井戸構造 光励起式
    波長 241.5 nm 深紫色レーザー発振


内部量子効率の向上のためには,
  活性層への電子の注入効率を高め,
    かつ注入電子の輻射性再結合過程を増やし,
非輻射性再結合過程を減らすことが必要である.


キャリヤーの注入効率の向上のため,
  一般に DUV-LED の活性層はキャリヤーブロック層付きのダブルヘテロ構造を有する多重量子井戸構造の形をとる.
キャリヤーブロック層を導入することで,
  電子がクラッド層にオーバーフローして,設計外の波長で発光することを抑制している.


サファイヤ(0001)面上に成長させた窒化物結晶には,
  自発分極とピエゾ分極による内部電解の発生のために,
    量子閉じ込めシュタルク効果(quantum-confinement Starkeffect:QCSE)により輻射性再結合時間が長くなり,結果として内部量子効率が低下する.


QCSEは量子井戸の幅が広いほど大きくなるため,数ナノメートル程度に薄くする必要がある.
AlGaN 系の量子井戸においては,自発分極のほうが優勢的であるため,井戸層とバリヤー層間のAlの組成差が大きくなるにつれて分極効果が大きくなり,内部量子効率は一般的に低下する.井戸幅と組成差の両者を考慮した量子井戸設計が必要である.AlGaN 薄膜中の非輻射再結合の要因となる結晶欠陥の低減のために,Khanらは,流量変調法により高品質 AlNバッファー層をサファイヤ基板上に成長させ,きわめて平坦な量子井戸を形成することでデバイスを実現している.また,川西らも流量変調法を用いて,AlGaN 多重量子井戸構造を製作し,光励起により波長 241nmでレーザー発振を確認している.


バッファー層として GaN を用いる独自の手法により,AlGaN 薄膜の高品質化を行っている.
  一般に,AlGaN 系深紫外発光デバイスに数ミクロンと厚いGaN バッファー層を用いた場合,
    バッファー層による光吸収や,その上に形成した AlGaN 層にクラックが発生するという問題が生じる.
GaN バッファー層において 10cm台の貫通転位密度が実現される成長プロセスを精査した結果,
  転位低減効果は,「低温 GaN バッファー層+アニール+100nm厚程度の高温成長 GaN 層」といったサファイヤ基板とのインターフェース直上のごく薄い部位で最も効果的に機能していることをつきとめ,
AlGaN 層の下地層としてこうした“薄膜 GaN 層”を用いた.
その結果,Al組成 35% 以下のAlGaN 層に対しては GaN 層が薄いことも相まって
  クラックフリー,かつ効果的に貫通転位の低減を可能とする新たなバッファー層となることを見いだした.
この組成のAlGaN 層は,325nm帯の発光デバイスに利用可能である.
“薄膜 GaN 層”は,後述するレーザーリフトオフ法による縦型 LED 構造作製の際には,
  剥離層としての機能も果たし,サファイヤ基板とともに除去され,
    GaN 層を下地層として使ったことによる深紫外光の吸収の問題も回避できる.


しかしながら,Al組成 30% 以上の AlGaN 層に対しては,上記“薄膜 GaN 層”ではクラックが発生してしまう
ため,325nm帯より短波長の発光デバイスに対しては,数ミクロン以下の膜厚の AlN 層をサファイヤ基板上に形
成する手法をとる.筆者らは,AlN 成長に対しても結晶成長モードを詳細に考察し,有機金属気相(metalorganic
chemical vapor deposition;MOCVD)流量変調法のシー
ケンスの最適化による二次元核形成・ステップフロー交互
積層法で高品質 AlN 層を得ており,その上に図 4に示す
ような原子ステップの見える高品質の Al웅웟웁Ga웅웟욿N を得る
ことに成功した.また,Siドープした n型の Al웅웟웁Ga웅웟욿N
薄膜において,60cm워/Vsの高い電子移動度と 0.034Ωcm
と低い比抵抗の値が得られている.


1.4 取り出し効率の向上
LED の活性層で発生する光子の一部は,活性層自身や,
金属電極やバッファー層,基板等の LED チップ内で吸収